アイスランドのロイガヴェーグルトレイルを歩いた感想とTips
今年(2024年)の夏にアイスランドのロイガヴェーグル(Laugavegur)というトレイルを歩きました。僕にとって海外でテント泊ハイキングをするのは初めての経験だったので大変なことも多かったのですが、なんとか無事に楽しみ切ることができました。トレイル自体はとても素晴らしかったので、興味がある人にはぜひ行ってもらいたいなと思っています。そこで、行こうと考えている人達に向けて、このトレイルを歩いた一個人の感想といくつかのささやかなTipsをしたためておきます。
ロイガヴェーグルについて多少知っている方向けに書きますので、トレイルの基本的な情報については公式サイト(英語)か、他の方の書いているブログ等を参照してください。
一番重要なのは天候対策
一般的にどんなハイキングでも天候は重要ですが、ロイガヴェーグルを歩く上では特に悪天候対策が重要だと思いました。と言うのも、アイスランドは日本と比べると晴れている日が少なくて曇りの日が多いからです。
曇っているだけならハイキングが特段難しくなるということはないですが、風景を満喫するためにはある程度の晴れ間が欲しいです(もちろん、曇りならではの風景の良さもありますが)。日本からはるばるロイガヴェーグルまで来ているんだから、いい状態の景色を見たいですよね。
そこで、直前の天気予報を見ながらできるだけいい日程を選んで歩くために、山小屋泊ではなく、テント泊で行くことをお勧めしたいです。ロイガヴェーグルの山小屋(hut)は人気が高く、一年近く前に予約が埋まってしまいます。直前の天気予報を見て、日程をずらしたいなと思っても、山小屋の予約を取り直すのは難しいでしょう。しかしテント泊の場合は予約が必要ないので、天気予報に合わせて柔軟に日程をずらすことができます。この場合は、もちろんアイスランドへの滞在期間自体にも余裕を持たせておく必要があります。僕は標準の日程4日+予備日2日で臨みました。
テント泊するとなると、その分荷物が増えるので体力的なハードルが上がるのですが、予約した日程に縛られて、結果的に悪天候の中でのハイキングを決行(もしくはキャンセル)する羽目になるよりは良いと思います。
トレイルの全行程の中でも、天候に関して特に配慮が必要な区間があります。ロイガヴェーグルは標準的には3泊4日で歩くことになっていて、Landmannalaugar(ランドマンナロイガル)からThórsmörk(ソゥルスモルク)の方向に歩くのが一般的です(高い側から低い側に歩く向きになるので歩きやすいため)。この向きで歩いた場合の1〜2日目の間に標高が高い区間があり、天気が悪い日にこの区間に入ると、霧の中の歩くことになります。
僕が歩いた時は2日目の天気が悪く、数十メートル先はまったく見えないくらいの霧が出ていて少し怖い思いをしました。ロイガヴェーグルは道があまり明確じゃない場所もかなりあります。そういうところでは道しるべとして立てられているポールを頼りに進むのですが、霧が濃いと次のポールがよく見えなくて道に迷いそうになります。なので、四日間のどれかの日の天候が悪くなることは避けられないという場合は、せめてこの区間を歩く最初の2日の天候はマシになるように日程を組むと楽かなと思います。
どうしても天候の落ち着いている日を確保するのが難しい場合は、1日に2日分歩いて日程を短縮するという方法もあります。実際に僕も3日目の夜から雨が降りそうだったので、3日目+4日目の行程をまとめて1日で歩き切る形にプランを変更しました。
強風対策は必須
アイスランドは寒い国なので、このトレイルでは夏の時期でも0℃ぐらいまで気温が下がることがあります。歩いていると体温が上がってくるので、いくつか重ね着すれば0℃近くまで下がっていてもそれほど問題はないのですが、大変なのは風の強さです。アイスランドは緯度が高いので、木がほとんど生えていません。なので天候によっては猛烈な風が吹きつけてきます。寒さと重なると、体感温度は0℃を下回っていると思います。
対策として防風・防水機能のある上下の衣服は必須です。加えて、手袋も防風・防水のものの方が良いです。僕は末端が冷えやすいので冬山用の三本指のアウターグローブ(こういうの)も付けていましたが、それでも指先に冷たさを感じました。また、バラクラバ(目出し帽のようなもの)も持って行ったのですが、これもあるのとないのでは大違いでした。顔に冷たい風が当たり続けていると、テンションが下がるし集中力もなくなってきます。
防風・防寒に関しては、装備を簡略化せずに万全にしておいた方がいいと思います。途中まではバラクラバやアウターグローブを付けずに乗り切ろうとしていたのですが、あまりの冷たさと痛さで、正直「早く終わらないかな」という気持ちがちらついてきて、何のためにアイスランドまでやってきたのかよく分からない状態になりかけていました。トレイルを集中して楽しむためにも、万全の装備で行った方がいいと思います。
トレッキングポールはあった方がいい
トレッキングポールを使うかどうかは好みが分かれるところですが、ロイガヴェーグルに関してはあった方がいいと思います。理由は、渡渉(川を渡ること)しないと通れないポイントがコース中に複数あるためです。
川を渡るポイントはいくつかあるのですが、そのうち、膝ぐらいの深さの場所を靴を脱いで渡るポイントが4回ほどあります。この時、トレッキングポールがあった方が、バランスが取れて転びにくくなるので安全です(それでもポール無しで渡っている人もいますが)。
靴を脱ぐほどではない深さの川を渡る箇所はもっとたくさんあって、そういうところは川の中の大きい石を踏んで渡っていくのですが、この時もポールがあると滑らなくて安心です。ポールが無い場合は、バランスを取るために足と石の接触面に力が入って滑りやいです。
道迷いに注意
ロイガヴェーグルは木や草の生えていないエリアを歩く区間が結構あり、日本の山道とは違い、踏み歩くルートがはっきりと示されていない場所が多いです。基本的にはルート沿いに立てられたポールを目印に進んでいくのですが、ポールが倒れていて見つけにくくなっていることもままあり、誤ってコースを外れそうになる場所がいくつかあります。特に迷いそうになったエリアを挙げておきます。
1日目:Landmannalaugar(ランドマンナロイガル)~Hrafntinnusker(フラプティンヌスケル)
特に無し。
2日目:Hrafntinnusker(フラプティンヌスケル)~Álftavatn(アルフタヴァトン)
この辺りは標高が高く、霧がかかって視界が悪くなっていることが多いようです。人の踏み跡もはっきりしないので、慎重にポールを探しながら歩く必要があります。
3日目:Álftavatn(アルフタヴァトン)~Emstrur(エムストル)
視界は良いのですが、途中で車道と交わるポイントがあるので道を間違えないように要注意です。車道(といっても舗装されているわけではない)の方が道がくっきりしていて目立つため、そっちを歩いてしまいそうになります。
4日目:Emstrur(エムストル)~Thórsmörk(ソゥルスモルク)
この日は中盤で岩の多い平野部を歩きます。広い平野を横断するのですが、視覚的にはっきりとした道があるわけではありません。遠くに山が見えるため方向を間違えることはないと思いますが、「しばらくポールを見ていないな」と思ったらコースを外れている可能性があるので気を付けた方がいいと思います。
ちなみに、YAMAPで「ランドマンナロイガル」という名前で検索すると地図がある(2024年7月現在)ので、コースを外れていないかのチェックにはある程度役に立ちます。
明るい時間が長い
これは日本の登山と比べた場合の良い点ですが、夏のアイスランドは日が長く、日が沈むのは10時〜11時頃です。なので17時〜18時頃でもまだ明るく、外を歩くことができます。朝も4時ぐらいに日が出始めます。
これを利用して、天候が良くなるまで(例えばお昼近くまで)ゆっくり待ってから歩き始めても時間に余裕がありますし、2日分の行程を1日で歩き切ろうとする場合でも時間にゆとりがあります。
その代わり、夜も完全に暗くはならないので、たとえ天気が良かったとしても綺麗な星空は期待できません。
天候がどうしようもなく悪くなった場合は小屋泊できるか聞いてみる
基本的に小屋(hut)に泊まるためには一年近く前からの予約が必要ですが、直前にキャンセルが出たりして、宿泊枠が空いていることがあります。天候が酷くてテント泊したくないなという時は、ダメ元で山小屋のスタッフに聞いてみるといいと思います。
実際、僕も日程の2日目で風がとても強かったのでスタッフに聞いてみたところ、空きがあり泊まることができました(ちょうど僕までで満員でした)。ただしこれは早い者勝ちになりますので、小屋泊を狙う場合は早めに到着できるように出発した方がいいかもしれません。
その他
ランドマンナロイガルまでバスで行く場合も、ソゥルスモルクからバスで帰る場合も、岩の転がる平原をバスで走ることになります。この区間(数十分ある)はかなり揺れるので、乗り物酔いしやすい人は対策した方がいいかもしれません。
おわりに
不安を感じるようなことも書きましたが、日本でテント泊登山や冬期登山を経験している方なら大体大丈夫かなと思います。ロイガヴェーグルはまだそれほど知名度が高くないですが、いずれ観光客の押し寄せる人気スポットになるのではないかと思います。そうなったらテント泊の場合でも予約必須になったり、入場者数制限がかかるかもしれません。興味がある方は、まだゆっくりと楽しめるうちに行ってみてください!