短歌連作『架空の恋愛について』

 雲の切間に伸びている光から天使が降りるの、見たことないけど

 自分とは向き合うことが億劫でノイズキャンセル消してこの世を

 暗闇でブルーライトを浴びた指で繋がっている気がするだけ

 見ていた動画を止めたとき寂しい無音が虚空がそばにいるの

 歪みから顔を出したの嫌いな子目が眩むのは貴方のせいね

 目眩って世界が回ると言うけれど回ってるのは私の中身

「愛とは」と語るあなたのしたり顔つねりたくなるそれも愛だと

 唇の逆剥け具合を確かめてそれすら可愛くしてくれる彼

 瞳に映る君の瞳に映る僕の瞳に映るあの子は死んだ

「電柱の灯りが点滅してる、見て」「愛してる?」「いや点滅早すぎ」

 雲のない淡色滲む夕焼けは何色ですか、鉄塔が指す

 眩しくもないし胸は張り裂けない声を枯らせど分からない、恋

「やめよっか」寂しい瞳に吸い込まれ散りゆく貴方をあつめる夢か

 泣き虫の君から流れる液体をすべて集めて僕になるんだ

 愛や恋とかわからないから言ってその目で口で身体でもいい

 よろこびも、かなしみもぜんぶ、わけあおう架空のせりふ恋人の声

 君が笑うことが嬉しくて泣いた卑屈な僕が華やかに散る

 ぎすぎすの髪の毛をまとめきつく結うそこからはみ出すのが私なの

 ラブアンドピースを掲げてどうするの必要な人らに届かないのに

 いっせーのせーで死のうよ私たちアニメの最終回になろう

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