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パーパスよりもビジョンです。オンラインセミナー【事例編1】ヴィンテージ ブランディング 70年代 Coca-Cola 関係者向けパンフ“Meet the 70's”を読み解く(後編)

日本全国に拠点を置く、クリエイティブ&デザインエージェンシー アンティー・グループの中にある研究チーム、ビジョンデザインラボがお送りする、Youtubeオンラインセミナーの要約記事です。

歴史的なブランディング事例を紐解くセミナーの第1回。
1960年代後半から70年代にかけた、米コカ・コーラ社の事例を、1冊の貴重なパンフレットを題材に解説します。

グレーアウトしている部分は前編です。


後編スタート 03:14

前編までは、当時の米コカ・コーラ社が抱える現状の課題というパートでした。ここまでで、未来と指針を描きつつ、今自分たちが抱えている現状のブランドアイデンティティにおける課題を踏まえて、いよいよ新しいブランドデザインのコンセプトについて伝えているのが、次の見開きからです。

❸ 新たなブランドデザインコンセプト 03:14

まずこのボトルの形。あらゆる世代の消費者にとって馴染み深いこのボトルの形が特徴的で、見た目のビジュアルとしてもユニークですね。これは1つのデバイスだと書かれていますが、一説によると、暗がりで掴んだ時でもすぐにこれはコカ・コーラだと認識できるような特徴的で唯一無二形状のボトルというコンセプトで作られた言われています。


そして、現代の私達はもう見慣れていますが、この白いカーブですね。ダイナミックリボンと呼ばれるこのモチーフが初めて登場したのが、この70年代に向けたブランドリニューアルのタイミングです。

日本語訳概要:
70年代の「コカ・コーラ」のための新しいデザインシステムは、ボトルのユニークな輪郭を反映した、大胆でドラマチックなカーブに基づいている。

写真でも上手く表現されていますが、ボトルのユニークな輪郭とともに、人がコカ・コーラを飲む時のボトルを持って傾ける、この手の動きも合わせて表現されているわけです。


そしてこのダイナミックリボンによって、Cokeという商標とCoca-Colaという、スクリプト書体のロゴの両方に同じように、ダイナミックリボンを用いることによって、包括して2つのロゴを関連付けて、同一のアイデンティティシステム内で結びつけることができるというわけです。

それによって、この新しいビジュアルアイデンティティシステムは、コカ・コーラ社の歴史上初めて全ての視覚要素を統合させるシステムになっていく、ということです。


❹ 新たなブランドデザイン展開例 06:05

この新しいブランドデザインコンセプトを、実際に様々な印刷物やサイネージなどで展開をしていくとどうなるのか?を伝えているのが次ページからです。


まずパッケージ。今ではあまり見なくなりましたが、持ち運び用の紙のボトルホルダーですね。統一されたこのブランドアイデンティティと、特徴的で標準的な赤。コカ・コーラレッドという標準色を用いることでブランドの識別に効果をもたらすと書かれています。

今では、この赤を見れば誰もがコカ・コーラを彷彿とするくらい定着していますが、そういう戦略がこの時代から始まっていきました。


次に自動販売機。この70年代っぽいビジュアルがまたかっこいいですよね!私大好きな写真です!しかも自転車も赤というのが憎いですね。

この、自転車に乗ってボトルを飲むっていう、このスタイルが最初の方のページに書かれていた70年代の移動しやすいライフスタイルを表していますよね。コカ・コーラのボトルはモバイルデバイスだと書かれているのですが、当時はもちろん携帯電話なんて無いですから、モバイルデバイスと言っても現代のようなデジタルデバイスの意味では使われていないわけですが、でも今の携帯電話のような革新性で、歩いたり移動しながらコカ・コーラを飲む新しい生活のスタイルを、この1枚のビジュアルで実にクールに表現しているページです。


ユニフォームもマーケティングの成功において非常に不可欠な要素となっていく時代。70年代の新しく洗練されたスタイルをクールにプレゼンテーションするのは、ユニフォームだと書かれています。


そして、商品を運ぶ車両。これも新しいデザインシステムで、しっかりと彩られて効果的にブランドをプレゼンテーションする移動式看板です。

ユニフォームもそうですが、働いてる人たちや、走ってる車も洗練されて、ブランドの世界観をどんどん伝えていくということです。


そしてこのページが私大好きなページなんですが、かっこいいですねぇ。。。見てください!この椅子。ハーマンミラーの名作チェアですが、それに横たわった女性が見ているこの雑誌広告。この広告でもすでに新しいロゴマークが掲載されています。清潔感があってユニークなデザインで雑誌の中でも際立っていく、と書かれています。よく見ると、このページの上部に太い書体で、Its the real thing. Coke.と書かれています。このタイミングから大きく展開されていく広告キャンペーン、Its the real thing.キャンペーンをすでに想定したビジュアルです。


そして街中のいろんな看板。
街並みというのも、トレンドを反映して時代とともに見た目の印象が変わっていくので、その新しい70年代の街中でコカ・コーラを継続的に販売するために、ブランドの一貫したイメージを伝えることを担保している、というわけですね。


これは店頭の売り場のビジュアルですが、先ほどのダイナミックリボンが、商品を連続的に陳列した際に、こんなふうに繋がっていく視覚効果を生み出すという、70年代は店頭で商品が大量ディスプレイされていくだろうということを意識し、面で自分たちの商品を売っていくことを想定しているわけです。


角度や高さに関わらず効果をもたらしていく柔軟性のあるビジュアルシステム。どういう角度や高さで見ても、非常に視認性が高いデザインなわけですね。


ロゴ制作において、デザインを見極める際に私たちもすごく神経を払うのが、縮小時にどれだけ視認性が担保されるかということです。
現代ではこのレターヘッドというのはあまり使われなくなりましたが、昔はCIの中でとても重要な要素の1つでした。

現代では、スマホ向けWebサイトのロゴがかなり小さいサイズになるので、スマホ上での視認性を担保するために、レスポンシブデザインで拡縮するロゴなんかも開発されるようになりました。


日本語訳概要:
すべてのアウトプットにおいて、70年代向けの新しいデザインシステムは、産業のイノベーター、リーダーとして「Coca-Cola」を一貫して宣言する。その潜在的な効果は無限だ。

ここまでのページで、様々なコンタクトポイントで消費者に対して視覚的に訴えかけていく展開例が紹介されてきましたが、このグリッドデザインの見開きページでそれが集約されています。


日本語訳概要:
しかしその成功は、あらゆるレベルのコカ・コーラボトラーが実施する熱意と活力にかかっている。スイングしていこう!70年代はコカ・コーラブランドにとって最高の10年になるだろう!

これが最後の見開きのページです。ボトルホルダーをスイングさせるような連続性のある写真で表現されており、ここでも来る70年代の身軽でアクティブなライフスタイルをイメージさせます。最後の締めとして、いわゆるボトラーと呼ばれる関係者に向けたメッセージで締めくくられています。ボトラーというのは、コカ・コーラ社からシロップや材料を購入し、コカ・コーラを製造して地域のマーケットに供給する重要な役割を果たす、まさにパートナーという存在ですが、この改革はボトラーのみなさんが一緒になって協力して行わないと成功できない、一緒に実行していこう!というメッセージが最後に強調して書かれ、締め括られています。


3. ここがビジョン・キャストだ!! 15:13

ここからは、このパンフレットのどこがビジョン・キャストなのか?ということを、私たちの視点で解説をしていきます。基本原則編のセミナーで詳しくお伝えしていますが、私たち un-T Vision Design Lab. が提唱するビジョン・キャストという考え方は、以下2点を重要視して考え出されたものです。

【 組織の持続的な成長において重要な2つの事柄 】
1.作りたい社会の未来像を描く
その組織や企業が成長したらどういう姿になるのか?自分たちの成長した理想像ではなく、自分たちが成長して発展することで、どういう未来社会を作りたいのか?という、理想の未来社会像です。これを鮮明にイメージすることが重要。

2.理想を視覚化する
そのイメージした未来社会像と、自分たちの企業や組織が成長した理想像の両方を、イメージするだけに留まらず、しっかりとコミュニケーションするために、視覚化するということです。

上記2つのポイントを押さえて、Meet the 70'sというパンフレットのどこがビジョン・キャストなのか?を解説します。

まず、この前半ですね。最初のページで Time is "more"と題されていましたが、人口増加や人口密度増加、収入や余暇の増加、ホワイトカラーの増加、アクティブなライフスタイルへの変化など、この辺りは実際の未来予測データに基づいて、70年代という近未来を鮮明に想像しているところが非常にビジョン・キャストだなと思います。

想像や妄想というよりは、確固たる学識的な見解があって書かれているわけですが、単純に文字だけで表現されていたら、読み手はここまでイメージが膨らまないと思います。

コカ・コーラ社という企業が、未来予測のデータに基づいて、次の時代はこんな時代だろう、という光景を想像力豊かに描き出して、この紙面の中で70年代のスタイルというものを把握し、自分たちなりに受け止めてしっかり咀嚼して、それをビジュアルとして描き出している、という点がすごくビジョン・キャストなわけです。

さらに未来社会像だけに留まらず、自分たちがそんな70年代にどういうスタイルを消費者に提供していくのか?コカ・コーラがある理想の未来、その未来のライフスタイルを描いているという点が素晴らしいと思います。

この2枚、私大好きな写真なんですが、70年代っぽくてかっこいいですよね!すごくスタイリッシュで、こんなファッショナブルでクールな時代を、コカ・コーラは作っていくんだぜ!!っていうのが、もう一目で伝わってくる、素敵なビジュアルだなぁ。。と思います。

そして新しいコカ・コーラがある新しい生活様式を叶えるために、どうやってビジュアルコミュニケーションをしていけばいいのか?ということがどんどん戦略に落とし込まれていくのがこのページあたりからです。

ブランドカラーの赤、ダイナミックリボン。それらを用いたパッケージやユニフォーム、売り場での連続効果、柔軟なサイネージの展開事例。 完璧なビジュアルコミュニケーション戦略だと思います。

この2枚の見開きは、冊子の中では少し離れたパートに分かれていましたが、同じフォーマットのグリッドデザインで写真が当てはめられていて、対比されています。左が60年代で右が70年代ですね。
60年代はバラバラだったデザイン、そしていかにも60’sという感じの、現代の私たちが見るとこれはこれでレトロでかっこいいんですが、これが右側の統一されて洗練された70年代の雰囲気と対比すると面白いですね。この見せ方が本当に上手い。これが文字で書かれていたら全然伝わらないはずです。グリッドデザインでコンタクトポイントにおける見え方をコラージュすることで、統一したビジュアル戦略の効果を伝えています。かっこいい。。。

そして、このMeet the 70'sというビジュアルパンフレットを作るということ自体が、非常にビジョン・キャストなコミュニケーション戦略だなと感嘆します。ロジカルさとビジュアル表現の美しさ、その両方が融合した素晴らしい教科書のような1冊だと思います。

そして、ここからはちょっとおまけで、このブランド戦略が70年代にかけて実際に広告キャンペーンとして展開されたビジュアルをご紹介します。

この4枚の広告ビジュアルは、写真が70年代っぽくて今見てもかっこいいですよね。写真アプリのフィルターにこういうフィルターありますよね!とても素敵な写真ですが、この4枚全て商品そのものの存在感を際立たせたクリエイティブです。一番右側なんて野球のマウンドにピッチャーか?!っていうぐらいの存在感があります。It's the real thing. これぞ本物なんだ!!っていうペプシをちょっと意識している気もしますが、このボールド書体はHelveticaなんですが素敵ですね。

一方で、商品ではなくシーンを切り取った広告もあります。
また私この1枚が大好きで、このヴィンテージ広告をオークションなどで探してるんですが全然見つからなくて、本当に欲しいなと思ってます。。
前編でペプシの若者向けキャンペーンの話をしましたが、ペプシが追い上げてきているこの時代に、まさに若者たちをターゲットとしたビジュアル。ペプシよりもコカ・コーラが今一番かっこいいんだよ!と若者に向けて言ってるようなこの場面、そしてこの空気感。商品ではなく、こういう空気感を際立たせたクリエイティブも秀逸です。
いや〜、ほんとこの写真素敵だなぁ。。アメリカンアパレルとか、この辺のクリエイティブからインスパイアされているんじゃないか?と思ってしまいます。書体も。。
よく見ると若者たちが白人の方も黒人の方もいらっしゃるという、多様性が打ち出されているというのも、前編で解説した当時の時代背景を感じさせます。多くの人が自由な時代の進化を求めていた、若者世代の空気感を絶妙に表現した1枚のビジュアルだと思います。

さらに当時、モータースポーツが流行っていた時代だったことを思わせる広告ビジュアルもあります。そしてまたこれもレアな広告の1枚ですが、新しいブランドロゴなどを、女の人のブレスレットやアクセサリーとして使用している写真。当時の人気女優ラクウェルウェルチのビジュアルです。この方が出演されていたテレビ番組とのタイアップ広告でしょうか。この広告ビジュアル、実はワタシ所有しています。。ここで注目するのは、新しいコカ・コーラのロゴをキーホルダーとかブレスレット、指輪の形状にしている点。単なる飲料品ではなくて、ファッションブランドみたいに見せていくというのが興味深い。非常に攻めた戦略だなと思います。

今回の講義を通して改めて見えてきたこととして、ビジョン・キャストという考え方を概念的に方程式として表すとしたら、

ビジョン・キャスト=(ブランディング+マーケティング)×ビジュアライズ

ということになるんじゃないかと思います。
自分たちがどうなっていきたいのか?そして自分たちは何者なのか?ということと、市場が何を求めていて、時代がどう移り変わっていくのか?、いくべきなのか?この2つを融合させて、それをビジュアルに仕立て上げてコミュニケーションして打ち出していく。

ということが、私たちが言いたいビジョン・キャストという概念なのかなと思います。

今回盛りだくさんでお送りしてきたわけですが、最後に1つ引用文章を読んで終わりにしたいと思います。
私たちが尊敬してやまない、PAOS 中西元男先生の著書、DECOMASからの引用です。

これは、変化が激しく、イノベーションが求められている現代にも通じる話だと思いますが、多くの各業界のトップ企業は、市場環境を自らが作り出しつつ、それによって起きるであろう変化に適応しながら、さらに前進していくのだと書かれています。世の中の変化を読み取って、現時点で存在しない新たな価値を生み出して市場開拓していく。そこに自らを適応させていくべく、自らを刷新し、ビジュアルでコミュニケーションし、新しいリーダーになっていく。まさにビジョン・キャストなことがここに書かれているわけですが、ウォークマンを打ち出したソニーや、Appleもそういうトップ企業ですよね。

リーディングカンパニーと呼ばれる企業は、いつの時代も次の時代を作り上げていると言っても過言ではないのかもしれません。さらにこの文章には続きがあり、単に膨大な広告宣伝費を費やしていくということではなく、ビジュアルシステムを開発することで、効果的効率的なコミュニケーションを実現することの重要性が書かれています。ブランド戦略のあるべき姿、真髄が語られている一文です。

今後また、ヴィンテージブランディング コカ・コーラの続編という形で、このMeet the 70'sで打ち出された戦略をもとに制作された、かの有名な歴史的TV-CM、ヒルトップキャンペーンというCMについてもセミナー動画を作っていきたいと思っていますので、そちらもぜひお楽しみに!

引用元・
Coca-Cola USA / A Division of The Coca-Cola Company Meet the 70's
中西元男著 DECOMAS


チャプターとタイムスタンプ

  • 00:00 - オープニング

  • 00:34 - アンティー・ビジョンデザインラボと講師の紹介
    ーーー

  • 01:18 - 前編も含めた今回の講義概要

  • 03:14 - 後編スタート 

  • 03:14 - ❸ 新たなブランドデザインコンセプト

  • 06:05 - ❹ 新たなブランドデザイン展開例
    ーーー

  • 33:00 - クロージング

Youtube

・Podcast
準備中

このセミナーでは、パーパス以上にビジョンを重視し、理想の未来社会像と組織の姿をビジュアライズすることで、企業や組織に持続可能な成長を促す革新的なアプローチについて、私たちが実際の業務で培ってきたノウハウやオリジナル資料も含め、たっぷりと発信していきたいと思います。これまでの企業理念やブランディング業務を通して得られた、数々の知見やメソッドの集大成として、かなり本気で取り組んでまいります!笑

自分たちらしい企業経営や組織づくりで、事業やプロジェクトをグロースさせたいけれど、その方法がわからないとお悩みのみなさまにとって、新たな価値創造をもたらすヒントになれば幸いです。

アンティー・ビジョンデザインラボ
日本全国に拠点を置く、クリエイティブ&デザインエージェンシー
アンティー・グループの中にある研究チーム
数々の企業理念策定、ブランディング業務を通して得られた知見やメソッドをもとに社内外の仲間と価値創造の模索を行う


このセミナーで紹介しているビジョン・キャスト メソッドは、アンティー・グループ内にあるブランド開発会社、アンティー・デザインのサービスとして提供しています。

企業や組織のブランディング、理念策定など、プロジェクトのご相談は、概要欄のメールアドレスまで、お気軽にお問い合わせください。

https://note.com/unt_design


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