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シリーズものは登場人物の成長が楽しみ

あさのあつこさんの作品、おいち不思議がたりシリーズ。

『火花散る』を読み終わりました。読書メーターにも軽く感想を書いていますが、読む前にnoteで紹介したので読了報告と感想を。

おいちは貧乏な長屋でその日暮らしの人たちを相手に、日々怪我の手当てや病の治療を行っています。おいちの父親は腕の良い医師。父親の手伝いをしながら、立派な医者となるための精進を怠りません。そして、おいちはこの世にない者の声を聞き、姿をみる不思議な力があります。今回も子を産んだ女性の死に関わり、否応なく謎解きに一役買うことになります。

シリーズものの面白いところは、登場人物が成長していくことです。医師として一生を送ると考えていたおいちですが、今回の巻では女性が安心して子を産めるような場所をつくりたいと願いが生まれます。

子を授かるだけでもすごいこと。赤子が無事に生まれてくるのは大変なことなのだと、お話の中で強調しています。

医療が進歩しても100%安全とはいえない現代のお産。江戸のころであれば、死亡率も高かったでしょう。さらに無事に生まれてもちょっとしたことで、ふっと命を落としてしまう。あまりに頼りなくはかない存在です。

情が厚く真面目で親身に患者と向き合うおいち。おいちには叔母のおうたがいますが、私自身がおうたの立場に立っておいちを見てしまっていました。

おいちを不憫だとは思いませんが、どこか悲しいというか切ない気持ちに襲われます。化粧っ気もなく、おしゃれを楽しむ暇はありません。担ぎ込まれる患者に対応し、彼らの体調が良くなり喜びの姿を見るのがおいちの楽しみ。だからといって、がさつだとか女を捨ててるということはありません。不意に見せるおいちの娘らしい仕草に、おうたが口やましく説教する気持ちがわかるような気がしてしまいました。

叔母のおうたとおいちの父親の軽妙なやり取りに、思わず笑ってしまいました。知らない人がこの二人のやり取りを見たら、危なっかしい言葉の応酬にハラハラしそうです。

『ない本ではなくある本を』が、推薦図書のコンテストに投稿した記事の中で、週で一番スキがもらえたとnoteから報告がありました。いつもありがとうございます!


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