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【ショートショート】JAZZは自由に聴くもの

 東京で出会ったビジネスパートナーの勝城さんはどっから見てもいかつく、少なくとも元チンピラにしか見えない。僕より十歳ほど年上で、信頼のおける人から紹介を受け知り合った。

 さすが元チンピラ(?)だけに、年下の僕にはとても優しかった。ご飯もいつもご馳走してくれたし、ビジネスもいろいろと助けてくれた。

 そんな勝城さんが僕の地元である神戸に用事があって来ると言うので、三ノ宮を案内することになった。

 美味しい但馬牛を食べ、その後JAZZの生演奏が聴ける店に案内した。そう、勝城さんとは音楽という趣味の共通点があり、勝城さんは特にJAZZが大好きだった。

「うわあ、懐かしいよ、三ノ宮でJAZZを聴くのは!」
 チンピラ(?)だけに、こう言う時は素直に喜んでくれる。

 ステージでは、サックス、ピアノ、ウッドベース、ドラムの構成でノリのいい曲を演奏していた。
 僕らも久しぶりの再会ってこともあり楽しく盛り上がっていた。

 ステージのバンドは、スローな音楽に変わり、ヘンリー・マンシーニの「Moon River」が演奏された。すると、勝城さんにはその曲にすごく思い出があるらしく、しかもそれが女に振られた話だったから、僕は大ウケし、大笑いを繰り返していたら、清楚な服装のおばさまが僕たちのテーブルにやってきて、

「静かにきいてもらえませんか? 他のお客さんもいるんですよ」
 と注意をされてしまった。

 とっさに謝ろうとした時、
「何言ってんだよ、こっちも客なんだよ。だいたいな、JAZZと言うもんはな、人それぞれ自由に聴いていいんだよ。あなたはJAZZをわかってない!」
 と元チンピラ(?)が一喝した。

 僕は謝るのをやめた。そしてテキーラを注文した。

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