【書評】サッカー戦術本「サッカーとは何か」の解説と所感 Vol.14
浦和レッズ分析担当コーチ・林舞輝さんのサッカーの本質を問う書籍「サッカーとは何か」
本書では「戦術的ピリオダイゼーション」「構造化トレーニング」という2つのトレーニング理論に視点をあてて、サッカーとは何かという漠然としていて、抽象的で、壮大な問いを追求していく
Vol.1-4では、戦術的ピリオダイゼーションの「戦術的」の部分を解説してきた
Vol.5では「ピリオダイゼーション」の部分の入り口である意味や方法を解説した
Vol.10からは「構造化トレーニング」を解説し、構造化の意味や理解に迫った
Vol.11では、トレーニングメニューを組む際の4つの条件に焦点をあてて解説した
Vol.12では、選手一人一人にスポットを当てたコンディショニング管理と、それに伴う負荷の掛け方を解説してきた
Vol.13では、3つのシーズン(プレシーズン、シーズン、移行期)の中で、それぞれどんな準備・トレーニングが大切なのかを探った
そしてVol.14では、短期目標で構造化トレーニングをどのように機能させていくのかを、5種類の構造化マイクロサイクルにスポットを当てて解説していく
準備期・構造化マイクロサイクル
準備期は、移行期つまりOFF期間の直後にトレーニング慣れする為の期間で使う
その為、一般負荷と直接負荷の練習を中心に行い、その中でも特有負荷レベルの要素を加えていく
基本的に、基礎負荷の練習は特別に用意する必要はないとされている
直接負荷転換期・構造化マイクロサイクル
準備期間から発展したもので、直接負荷と特有負荷の練習を核にしたサイクルである
主にプレシーズンで使われるが、リーグが始まり公式戦が続くスケジュールの中では足りない
特有負荷転換期・構造化マイクロサイクル
直接負荷転換期と非常に似ているが、直接負荷よりも特有負荷の方に重きを置いているサイクルである
リーグが始まり、試合に適応できる高アスリート状態まで引き上げる、もしくはそれを維持する為のサイクルになる
競争的・構造化マイクロサイクル
このサイクルの週では、特有レベルの負荷の練習が中心になる
主に1週間で2試合こなさなければならないような週で使われる
特有負荷レベルの練習を週に2日こなすサイクル
メンテナンス期・構造化マイクロサイクル
シーズン終盤で首位争いや降格争いなどが本格化し、心身ともに大きなストレス・緊張感が高まる時期に行われるサイクル
直接負荷、特有負荷、競争負荷を等しい割合で加えながらコンディショニングを維持させていく
上記が5種類の構造化マイクロサイクルである
そして、シーズン毎にどの種類が相応しいかを考えていく
プレシーズンでの運用
プレシーズンでは、通常は準備期・構造化マイクロサイクルが使われる
この期間はリーグやチームによって異なる
世界のビッグクラブになると試合数が多い為、OFF期間が短くなり準備期・構造化マイクロサイクルは1週間未満ということもある
一方でJFLのチームなどシーズン通して30試合しかない場合もあり、準備期・構造化マイクロサイクルは2〜3週間ほど必要になる
チーム立ち上げから2週間前後が過ぎると、直接負荷転換期と特有負荷転換期に突入する
この時点で、選手を高アスリート状態にもっていかなければならないので、基礎負荷・一般負荷のレベルでは足りないのだ
プレシーズンの前半で直接負荷の練習を中心にしながら徐々に特有負荷の割合を増やしていき、プレシーズンの後半では特有負荷の練習の割合が多くなっているようにする
ここで重要なのは、直接負荷と特有負荷の線引きをはっきりさせないことである
あくまで少しずつ直接負荷の割合を減らし、少しずつ特有負荷の割合を増やしていくのが理想である
このようにプレシーズンでは、3段階の構造化マイクロサイクルを作っていくことを推奨している
シーズン中での運用
競争的・構造化マイクロサイクルとメンテナンス期・構造化マイクロサイクルは、シーズン中に行われるサイクルである
前述したように、1週間で2試合ある場合は、特有負荷の練習を中心に行うことが好ましい
シーズン中でのメンタリティーに大きな負担がかかる、終盤の首位・残留争い中では、メンテナンス期が使用される
Vol.15では、FCバルセロナの実例をもとに構造化マイクロサイクルを解説していく