夜更け、春日通りで
中学高校のころ、飲み屋街に憧れていた。白熱灯に照らし出された暖簾、壁に貼られた手書きのよくわからないメニュー、飛び交う賑やかな声、そして楽しそうにお酒を酌み交わす大人たち。お酒は飲めないけれど、飲めないなりに、あちらの雰囲気にあこがれていた。大人たちが飲みに行くとなれば、うれしくていつもついていった。学校帰りに制服で行って、周囲を困惑させたりもした。うれしそうな大人たちを眺めているとなんだか自分までうれしくなるようで、少しでも早くあの場に加わりたくて、必死に背伸びをしていた…