農園うしお(8月下旬特別号(倒れるな稲よ…!))
はじめに
台風10号が猛威を振るっています。皆さんの地域では、被害など発生されていませんでしょうか?
さて、米の兼業農家としては…この時期に台風が来ると、どうしても気になるのが田んぼの状況…
今回は通常の畑(野菜)のほうではなく、特別号として田んぼ(米)の方のネタでお送りしていきます。
牛尾家の稲刈り事情
我が家では、米に関しては品種を田んぼごとに植え付けの時期をずらし、ているので、田植え・稲刈りが年2回ずつあります。
先に作る(1回目)品種は農協への出荷分で、食用のお米(夢つくし)と、飼料米(夢あおば)の2品種です。この2品種は、同じタイミングで作っていますので、一緒の時期に田植え~稲刈りとなります。こちらの分の稲刈りは、8/23~25に、既に終了したのでいいのですが…
後に作る(2回目)の方、こちらは自分たちで食べる用のお米(元気つくし)になるのですが、こっちの方はまだ田んぼで絶賛生育中です。今は稲穂がだんだんと成熟(稲の場合、「登熟(とうじゅく)」という言い方をします)する、重要な時期になります。
こっちの稲刈り目安としては9月4週頃なので…そこまでなんとか、大事なく乗り切りたいというのが本音なのです。
幸い、今回の台風に関しては、ウチの稲はなんとか持ちこたえてくれました!昨日の晩、仕事帰りにドキドキしながら見廻りをしましたが…いやはや、よかった!!
さて、今回はセーフでしたが、時には倒れることもあります。倒れてしまうと何がマズいのか、今回はそれをメインに書いていきたいと思います。
稲が倒れると何がマズいのか?
そもそも稲というのは、基本的には風に強い作物です。出穂(しゅっすい、といいます)の前であれば、大風が吹いても、どうと言う事はありません。
ただこれが、出穂後になると話が変わります。背が高い割に穂先が重たくなってしまうので、段々と風に弱くなっていきます。要はトップヘビーになるわけです。
この時期に台風や、大粒の強烈な雨などにあたってしまうと…結構バタッと倒れてしまいます…
稲が倒れると、米農家にとっては非常に大きなマイナスとなります。
〇芽が出てしまう、腐れてしまう
稲の通常の状態では、稲穂は独立して風にあたりユラユラしています(風通しがよい)。
ですが、稲が倒れてしまうと、稲穂部分がべったりと、葉の藁部分や、最悪地面と接触しっぱなしになって、非常に通気が悪くなります。
こうなると、一度濡れてしまうと、乾かずに濡れっぱなしになります。
元来、米の部分というのは「種」の部分ですから、そこが濡れっぱなしになると…当然、芽が出てくるわけです。こうなってしまうと、もはや食用にはできなく(もちろん食べれないわけではないですが、保存が全くきかない、という意味で)なってしまいます…
また、こういう高湿度の環境になると、当然カビなども繁殖しやすいので、籾も藁も、どんどん腐れてくる可能性もあります。
〇稲刈りしにくい
最近のコンバインは一昔前のものに比べれば優秀なので、ある程度までなら、倒れた稲でも刈り取りは可能です。…が、とはいっても、当然倒れていないものに比べれば時間がかかることになります。
通常と同じペースで刈ろうとすると、稲や藁が濡れていて摩擦が多いため、コンバインの中での流れが非常に悪くなり、詰まりやすくなります。(※これ、一度詰まらせると、復旧までに結構な時間を要します…)
あるあるなのですが…兼業農家は、農作業ができる日数に限りがあるため、こういった事態の時も、なんとか無理して刈ろうとしてしまいがちです。ただ、そういう時ほど詰まらせてしまったり、コンバインへの負荷が祟り、思いもしないところが壊れたり…と、あまりいい結果にはなりません。
倒れた稲を起こすための、補助的な追加装備として「デバイダ」というものもあります。これが付いていると、かなり起こしてくれるので非常に便利なアイテムで、うちのコンバインにも付けています。
…ただ、それでも限界があります。またエンジンパワーがいくらかデバイダ側に取られてしまうので、エンジン音や回転数にはやや気を遣う必要が出てきます。
また、稲が倒れている周辺部分というのは、同時に土も乾いていないことが多いので、コンバインのクローラー(キャタピラー)が埋まり、身動きがとりにくくなる(最悪、腹を地面にうって、動けなくなることも…)ことがあります。
上の写真は極端な例ですが、ここまで行かずとも、多少地面が緩い状態で稲を刈ることはあるわけです。
こういう時は極力旋回を減らし、直線的に刈る、もしくは手刈りを行う…そういったひと手間が、後の作業効率を大きく分けます。動けなくなってからの復旧の方が、はるかに大変です💦
状態が悪いときの稲刈りは、基本的に「急がば回れ」の姿勢で臨むことが重要ですね(^^;)
〇収率が悪くなる
コンバインで稲刈りを行う際は、手刈り(とはいえ、フルでの手刈りは、もはやほとんどないでしょうが…)の時に比べて「乾いているか」というのが一つのポイントになってきます。
手刈りやバインダーでの稲刈りと、コンバインでの稲刈りには、脱穀のタイミングに大きな違いが有ります。
要は、手刈りやバインダーでは、多少濡れている時でも稲刈りができるんです(後で、はざがけ等で乾かすから)。それがコンバインでは、刈り取り機と脱穀機が一体になっているため(原則、)乾いている状態で稲刈りをする必要がある、ということです。
例えば、我が家では稲刈りをする時は、どんなに早く起床していても、籾の朝露を飛ばすために、原則的に9時以降にしか刈り取りは始めません。朝露のレベルでも、収率には多少影響してきます。(また、後述の「ヤケ」問題にも関係してきます)
さて、脱穀機の説明の前に、大まかにコンバインの構造について紹介しておきます。
コンバインの大まかな仕組みは上の動画&写真のようになっています。どれも重要ですが、収率を考える時には特に、脱穀用胴あたりのところがポイントになります。
コンバインで刈り取られた稲は、そのまま内部の脱穀機に回されます。この脱穀機の内部には、籾を選別するための「ふるい」の仕組みがあります。
籾が濡れていると、この「ふるい」の所で目詰まりが発生しやすくなります。ここで詰まるとコンバインの構造上、本来収穫されるはずだった健全な籾が、不健全な籾や藁と一緒に排出されてしまうのです。もったいない!(><)
最近のコンバインには「濡れ籾モード」が付いている機種もあります。そういうのがありはする、ありはするんですが…当然、濡れていない方が良いわけです。機械にいらない負荷をかけるべきではありません。
〇ヤケ米が増えやすい
最初に言いましたが、稲が倒れてしまうと芽が出やすくなってしまいます。実際の所、こうなるともう時間勝負になってきます。
このとき、田んぼ全体の状態が「もう収穫してもOKかな…」という状態まできていれば、芽が出る(腐れる)前に、なんとか無理やり稲刈りをしよう!となる場合があります。
本来は、ある程度乾燥している状態が望ましいのですが、以降の天候の回復が見込めない場合などでは、多少濡れたまま刈るということは…実際には、無くはないのです。
この場合、脱穀後の籾を長時間濡らしたままにすると、内部で発酵熱が溜まったり、カビの増殖が進み、「ヤケ」という変色現象が発生するので、これを阻止する必要があります。
そもそも、この「ヤケ」は、通常の乾いた状態の籾であっても発生します。よく言われるのが、通常の場合でも、刈り取ってから3時間以内には乾燥機に入れなさい…なんて言われています。そもそもシビアなんです。
乾いていても3時間だとか言われる感じなので…濡れていると余計にシビアになると思ってください。なるはやで乾燥機にぶち込みます。
一人が田んぼで刈り取りを進めつつ、もう一人がトラックで、田んぼ⇔乾燥機の間をピストン往復しながら、少しでも「ヤケ」の発生を抑えるようにします。
おわりに
毎度のこと、雑多にいろいろと書きましたが…
要は、この時期の米農家というのは、「稲、ほんと倒れてほしくない…」「台風あっちいけ…」「雨降るなってもぅ…マジ勘弁してくれ…」と、脳内はこんなマインドになっているという事です(笑)
うちのコンバインとは少し違いますが、倒れた稲の稲刈りの雰囲気がよく表れている動画をみつけましたので、よかったら見ていってください。だいたいこんな感じです(笑)
この後も、どうにか稲が倒れない事を祈るばかりです…
・・・おわり
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