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相手の専門を突き詰めることは相手を尊重すること?|ご冗談でしょう、ファインマンさん|書籍紹介
1965年ノーベル賞受賞しているファインマンさん。でも時には、金庫破りをしてみたり、ブラジルでカーニバルを踊ってみたり、絵を描いて売ってみたり、バンドで演奏してみたり。日本に来た際には、旅館で女中の言うことを聞かずにさっさと風呂に入ろうとして先客に叱られたがその相手は湯川秀樹教授でホッとしたり!?
そういえば、英語の本としておもしろいよなんて言いつつ、内容を紹介していなかったので、紹介してみようかなと思う。そういえば、一応マガジンとしてはブックレビューなんてものも作っているのだけれども、本の紹介してないななんて。というか紹介したい本って結構前に読んでいたりして、読み返さないと文章なんて書けないのよ!みたいなところもあったりして。
この本との出会い
数年前友達からチラッときいた「ファインマン物理学」でも読んで、物理の勉強でもやり直そうかと思っていた。
本でも読めばタダとは言わないけれど本代程度で自分のペースでできるし、まぁいいかなくらいで。「ファインマン物理学」を探しに書店に立ち寄ったが思わぬ形で科学コーナーに行くことなく足止めを食らってしまった。
書店の入り口前の平積みコーナーにこの本があったからだ。初版は1985年の本がなぜ平積み台にあったのかは今となってはわからない。もしかしたら、書店員のオススメみたいな感じだったのかもしれない。
「ファインマン…」
ペラペラとめくって見ると、どうやら間違いなく私が探していたファインマンさんらしい。そして冒頭だけでもなんか面白い。
そのころすでに紙の本の自炊・断捨離をして本棚の電子書籍化を進めていたのだけれども、まだこの本の日本語版に電子書籍版ってなかったんだよね。
が、調べていたら英語版ならKindleであるではないか。
ということで手に取ったのがこの本だった。
工具とか生物学とか物理はかなり調べないと読めない。ただ、この記事を書くにあたって日本語版で読み返したけれど、翻訳があんまり良くない気がしていて、原文の方がテンポが良い気がする。その理由は最後まで読んだらわかったのだけれども、翻訳された方が日本人だけれどもファインマンさんのお子さんの幼稚園のママ友で、普段は日本語の英訳をされている方で、日本語訳デビュー作らしく。でも彼の性格ならそれもそれで彼らしいと思った。その理由は後ほど。
ああ、前置き長い。
ファインマンさん器用っすね。
この本の内容はファインマンさんの子供時代からの武勇伝で、ただ自伝スタイルではあるけれどもラルフ・レイトン(「ファインマン物理学」の編者ロバート・B・レイトンの息子)が聞き書きした逸話集らしい。(Wikipediaより)
過ぎた自慢話と鼻につく方もいらっしゃるだろうなと思いつつも、個人的にはマンガの主人公みたいで本当に楽しい人だと思う。ただそれに関しては、自伝風であっても、あくまでも書いたのは、遊び仲間(音楽仲間)のラルフが書いたからというのもあるかもしれない。
以前ちょろっと紹介した時にも書いたけれども、親子二代にわたるApple信者の家庭だけど、スティーブ・ジョブズの伝記なんかの数百倍おもしろいと認めざる得ない。そして、ちょろっと顔を出す友情出演のような端役が、アインシュタインだったりオッペンハイマーだったり、湯川秀樹だったりするというのも特徴だと思う。出てくるって言っても、本当にカメオ出演くらいの感じで出てくるのだけれども。
生物学、物理学、数学で難しい部分も少しだけどあるのだけれども、分からなければ3ページも飛ばせば、別のエピソードになるのでなんとなく読み飛ばして理解できるところだけ読めばいいと思う。正直に私も一応目は通してるけど知識が追いつかなければ読み飛ばしてる。
その逸話というのも話の大小でいえば、女の子を引っ掛けようとしている話からノーベル賞を取った話まで幅広い。
子供時代の話は天才だなぁーって感じだけれども。
そして、めちゃくちゃ凝り性だよねとは思う。金庫破りの話だったり、銀メッキの会社のなんかはほぉぉぉぉぉって感じで。逸話の箇条書きはWikipediaにいくつか載っているのでみてもらうのが早いと思うけれども。
ただ、この本の面白みは箇条書きなんかでは伝わらない臨場感のある内容であったり、些細なことに対する彼の金言だったりする。
特筆すべきところは、もしかしたら武勇伝だから「うまくいかなかったことは言っていない」なんて可能性もあるけれども、それにしてもやると決めたら年単位でいろんなことにチャレンジしているんだよね。そして、そのきっかけはいつも人だということ。
本当にこれは見習わなければいけない。
この本を読むと気づくと思うのだけれども、何を始めるにしても毎回誰かと出会って、新しい友人の専門分野を突き詰めている。それはもちろん彼の評判を知っていてさらに発展的なことをオファーしている場合もあるけれども必ずしもそうでもないんだよね。
彼自身おそらく誰に対してもフラットな関係を築いているのだと思うのだけれども、それが自分の専門分野ではない人であっても彼らを尊重しているからに他ならないのではないだろうか。
だから彼の話は楽しい。
私自身そうしたいと思う部分があってもやっぱり興味がなかったら断ることもあるからだ。
amazonのレビューをみても私がそう思ったのと同じように翻訳がいまいちっていう評価は多い。でも彼が知らない良い翻訳家を探すのではなくて、初めて英語からの日本語への翻訳をする人だとしても知り合いの中から選ぶのってものすごくわかる気がして。そう思ったら、そこも含めてこの本としては正しい形のように思えた。
この本から伝わってくるのは、彼はもちろん物理学にも誠実だけれども、友人に対しても誠実なのだと思う。
もう遅いかもしれないけれども、どうせなら彼みたいな伝記が書かれるような、人生を歩みたいよね。
批判がありそうな点
彼が若い頃にした、からかい半分のいたずらにけしからんって目くじらをたてる人なんていう人もいるかもしれない。彼がしたコップにフルまで入れた水の中にチップのコインを入れカードを乗せてテーブルでひっくり返してカードだけを引き抜くなんていうのは、子供の頃に「チャレンジ」という通販型教育雑誌で見た気がするけれど。
それであっても、正直になんでこんなにおもしろい本が推薦図書とかにならなかったんだろうかと思わなくも彼が大学生くらいまでのはじめの1/4までは思わなくもなかったのだけれども、原爆の開発の話などは敵国で実際に投下された我が国的にはものすごくセンシティブな感じがするとの、バーテンダーから聞いたナイトクラブで女の子をひっかける方法とかは完全に子供向けじゃないよね(笑)
原爆の話については、戦争の話はどっちの国に生まれついたかのポジションが違うというだけの話で「風立ちぬ」はOKだけれども、彼の話はNGというのは終戦から70年以上経った今ちょっと違うと思っていて。(その部分だけ切り取ればいろんな意味でほぼ同じような話。奥さんが結核なのも含めて)
あくまでも中立的に言わせて頂くならば、彼が若手として参加したマンハッタン計画は思ってたよりも杜撰な計画だったことが垣間見えたりする。まだコンピューターがなかった時代なので、機械式のマーチャント計算機で計算だけをする女性を雇って計算していたかなんて話まで出てくる。もっと近未来的な工場で作っているのかと思えばおそらく全然違う気がする。感情的なことは抜きにして、一旦読んでみてもいいと思う。
中立といいつつ彼の弁護をするならば、本当に短いけれども彼の後悔は綴られている。他の内容と比べると短くともおそらく深い後悔だと思う。
ところで彼が予言した量子コンピューターについて
量子力学なんて話題を最近みるんだけれども、実はちょっと読んでみようかなと思ったこともあった。でもふんぎりがつかないままにたまにまとめ読みしている江端智一氏の1年ほど前のITメディアの記事を読んで、江端さんが量子力学読んだけどわかんねーよ!って言ってるなら、私無理じゃない?と諦めつつも、量子コンピューターについては書かれているのでご紹介▼
たぶん、他の記事なんかよりもよっぽどわかりやすいと思う。調べた内容がまとまってるので。ただ、理解ってなんですかってなっちゃうけど。少なくとも、まだまだ研究段階で商用には程遠いとかそれくらいはわかった(笑)他はね、なんだそれ。だけど。
ただ、ITメディアで彼の連載追うの本当にみづらすぎて、もしかしたらITメディアとの契約上むずかしいのかもと思いつつも、Kindle出版でいいから電子書籍化してほしいと切に願うわ。unlimitedなんてケチなこと言わずに1テーマ新書と同じくらいの値段なら全然買うんだけれども。
そういえば、結局「ファインマン物理学」を未だ手に入れてないのよね。
カリフォルニア大が無料公開してるみたいだから、英語で読むか…。さすがに日本語で読もうと思ってたけれど。
アップしてからファインマンさんの若い頃の写真誰かに似てると思ったら、ゴシップガールのチャックさんだわ。
動くとあんまり似てないやつだと思うけれども(笑)
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