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手ぶらでいきます
朝起きてリビングに行ったら、私がいつも使うデスクの上に正方形の黄色い付箋が貼ってあるのが目についた。
そこには
「手ぶらでいきます」
とマジックペンで書かれていた。
いつもの夫なら、書くスペースに対してやや小さすぎると思われるサイズの字を、これまた細い芯のボールペンで書くのだが、マジックペンで大きく書かれたその文字に、なにやら強い意志のようなものを感じたのだった。
デスクの下には、夫が通勤用に使っている黒い鞄がおいてあった。
彼は、手ぶらで会社に行ったのである。
「手ぶらで?会社に!?」
夫はTシャツとデニムにアップルウォッチだけで出かけていくようなイマドキのIT関連企業に勤めているわけではなく、スーツで電車通勤するタイプのサラリーマンである。
スーツに手ぶら?と思ったがよくよく考えてみれば、会社にパソコンも筆記用具もある。外出予定がなければ、スマホと財布とハンカチくらいをポッケに入れていけば充分なのだ。
一時期は毎日ノートパソコンを持ち帰ってきたが、在宅ワークの日も減った今、会社に置いてきたっていいはずなのだ。
その1週間後の朝、夫のうめき声で目が覚めた。
前日にぎっくり腰になってしまった夫が、痛みに悶えていたのである。
夫がぎっくり腰になるのはこれが2回目で、10年ぶりくらい。
「腰に爆弾抱えている」と医師がいうように、背骨の形状から、夫はぎっくり腰になりやすい体のようである。
今回もわりと重めな症状のようで、4日目にしてまだ激痛、歩けない、座れない、で病院にも行けてない。
会社を休んで3日目の今日、会社から夫のパソコンが届いた。これで仕事を進めておくれということだ。スマホでもそれなりに、会議に参加したりメールを返したりしていたんですけどね。
夫がまた会社にパソコンを置いて帰って、手ぶらで通勤できるようになるのはいつになる事やら。早くその日がきますように。
ぎっくり腰って辛そうですよね。私は一度も経験がないのだけれども。
全世界のぎっくり腰の痛みに耐えているあなたへ。お大事にしてくださいね。