【読書感想文】誰がモンスターだったか
ホリー・ジャクソン 服部京子=訳 『自由研究には向かない殺人』(東京創元社、2021)を読んだ。
先日、寄り道していると書いていた本。
読み終わりました!
あらすじ
イギリスの小さな町、リトル・キルトンに暮らす女子高校生ピップは、5年前に起きた女子高校生アンディの失踪事件と、その犯人とされる交際相手のサル(サリルの愛称)の自殺の謎を、自由研究を口実に調べ始ることにする。
ピップは、サルと個人的に親しかったこともあり、サルがアンディの誘拐・殺人の犯人だとは思えなかった。
ピップは、大学入学の追加資格として認められる、自由研究 EPQ(Extended Project Qualification)を理由に、サルの弟ラヴィの協力を得て、謎を追い始める。
事件が起きたのは、2012年。
ピップが自由研究を始めるのが、2017年の夏。
このミステリーの世界で、おお! と私がまず思ったのは、スマホも、ノートパソコンも、グーグルも、フェイスブックも、その他のデジタルツールもふんだんにある世界だということ。
現役女子高校生のピップはもちろん、それらを巧みに使いこなせる。
本としての構成も見事で、手書きのピップによるマーダーマップや、手書きの手帳の写真のデータ、自由研究のレポートの形をした作業記録が、きちんと本文中に登場する。
まるで、ピップと謎の追求をともにしているような気分になる。
警察や、町の人達の認識では、アンディ失踪=すでに死んでいる。そして、アンディの後を追うようにして、「明白な証拠」を残して自殺したサルは、その犯人に間違いない、というもの。
私が何度も先走りたくなったのは、あちこちが何か不自然だと思うのに、その何かが掴めない、絶妙なストーリー展開だったから。
手を伸ばす。犯人候補として、名前はいくつもあがる。
ピップの作業記録にも、犯人リストができあがっていく。
なのに、今ひとつ確信が得られない。この人、本当に犯人?
ううう! もどかしい!! ページをペラる(そして、毎度ホリーに叱られる)。
ピップは、様々な人たちへのインタビューやSNS、デジタルツールを駆使し、警察顔負けの明晰な頭脳で、謎を解き明かす。
この本に限らず、ミステリー小説の醍醐味は、人が多面的であるということに軸足を持っていること。
誰にも知られたくない秘密、悪事、人によって違う顔を見せることがあること……。
「モンスター」という言葉がこの本には、よく出てくる。
さて、誰がモンスターなのか。
失踪した(そして、殺された?)アンディは、「かわいそうな」、潔白な女子高校生だったのか。
アンディを殺したとされる、交際相手のサルは、善人の顔をかぶった嘘つきのモンスターだったのか。
そして、真犯人(がいるとすれば)は一切合切、パーフェクトなモンスターなのか。
謎を解いたピップはどうだろう?
誰から見るかによって、誰がどうモンスターなのかは、違ってくるはず。
その相関図は複雑で、だから面白い。
誰がどう繋がっていて、なぜ繋がっていて、このミステリーを作ったのか。
間違いのない視点などない。
勘違いしない人間もいない。
だから、ミステリーは面白い。
ずっとわくわくしっぱなしだった。
ああ! 楽しかった!
続編があるとのことなので、本屋さんにあれば、買って読もうと思う。
ところで、最初この本を手に取ったのは、「一気読み部門 第1位」という帯がついていたから。
買った時、何かの本を一気読みしたかったのだと思う。
結局できなかったけども。
時間はかかったけど、読み終えられて嬉しい。
楽しい読書の時間だった。
【今日の英作文】
イソノさん一家はみんな仲良しです。
The Isonos are all getting along well.
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