【読書感想文】革命に端的さは似合わない
多崎礼『レーエンデ国物語 月と太陽』講談社、2023年。
(「レーエンデ国物語」としては2冊目の本)
を読んだ。
ーー革命の話をしよう。
から始まるこの物語。
革命の話。それは、成功談でありたいし、英雄の話でありたいし、革命が果たされた希望の物語であってほしい。
抑圧された人々が解放され、一方的な服従からも、隷属からも無縁の世界になる、その世界を描いてほしい。
ネタバレになるのか、読む前からある程度想像がつくので、微妙なところではあるけど、この本では革命は「果たされない」。
主人公は、怪力を誇る村娘テッサ・ダールと、名前も出自も隠さなければいけない少年ルーチェ・ロペス。
1冊目に比べ、2冊目のこの本は、全体としてとても殺伐としている。
性暴力、人が死ぬ、殺される、殺す、残虐に見せしめに殺される、そして次々と人が死ぬ戦闘の場面が多く登場する。
ほんの少しの明るい場面が、涙が滲みそうになるくらい、なんと「当たり前の世界」とは尊いのかと思う。
ほんの少しの風で、消えてしまいそうなろうそくの灯のような明るさを心の拠り所にして、この本を読み切った。
この本を最後まで読み切れたのは、物語のハッピーエンドや希望にかけていたわけではない。絶望や悲惨さにカタルシス(?)のようなものを感じて、読んだわけでもない。
たぶん、主人公テッサの強さや、太陽のような明るさや、不屈の精神を、最後の最後まで見つめることができたから、彼女らしい姿に背中を押されたから、読み切れたのだと思う。
だから、この読書は難航した。
読んでも読んでも、陰鬱な展開が待っていて、結末もなんとなく分かっている。どんなふうに結末に至るのか分からなくても、この革命は成し遂げられないとヒリヒリ感じる。
私は、大団円みたいな物語だけがいいと思う人ではない。もやーっとしたグレーな終わりや、バッドエンドもありだと思っている。
ただ、600ページもあって、展開が展開なだけに息が詰まった。
最後まで読めてよかった。。。
もし端的に表してしまったら、この物語は「革命に失敗した話」と言えてしまう。
でもそうではないのだ。
どんな逆境にあっても、こうべを上げて生きた人(々)の、命をかけた激動の瞬間の話なのだと思う。
絶望に溺れず、自由に憧れ、命を賭して戦った人(々)の話。
ルーチェの正体は、序章で明らかになるので、これもネタバレになるのかよく分からないけど、彼の後世での呼び名は、彼の純粋さ故の、叶わなかった夢と希望の裏返しだろうと思う。
彼は一途で、純粋で、優しすぎた。
彼のそばには、誰も何も残らなかった。優しい彼には、後世に残るような行為とその思いしか残らなかった。
その点だけは、私はとても苦い気持ちでいる。
3冊目を近々買おうと思っている(全5冊なのだそうだ)。
いつ読めるのかなとは思うけど、じわりじわりと歩を進めて、読みたいと思う。
【今日の英作文】
水漏れ事故の時はすぐに電話してね。
Call me as soon as a water leak accident occurs.
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