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母の餃子

子供の頃、母とよく手作り餃子を作った。

母が肉だねを作って、包むのは私と分業して。

肉だねを多めに作って、餃子の皮も150枚くらい買ってきて包む。

私はギリギリ皮が破れないくらい肉だねが詰まった、むっちん餃子が好きだ。

「もっと加減して包みなさい」

「この一山が何個分だから、一つに包みすぎ」

「皮が余っちゃうでしょ」

とよく言われたけど、構わずむちむちの餃子を包んだ。

毎度私が包んだ餃子は、皮が破れた餃子が続出した。もちろんそうではなく、神がかったむっちん餃子もある。

ひだもちゃんととる。買った餃子には、絶対負けないいっちょ前のむっちん餃子がトレーにぎっしり並ぶのはほれぼれ、壮観だった。

一口に入り切らないくらい大きくて、食べるとジューシーな餃子が食べたい。

母の餃子の肉だねは、私のお手本だ。

キャベツをスピードカッターでみじん切りにして、ほんの少しの塩で殺す。それをぎゅっと絞って、肉と混ぜ合わせる。

キャベツは山盛り。スパイスは何種類か入れていた。

ジューシーというと、肉肉しい感じのものをイメージする人もいると思うけど、我が家のジューシーは、キャベツの甘みと旨みがジュワーとしてくる、キャベツジューシーな餃子を指す。

一人暮らしを始めてからも、またあの餃子が食べたくて、何度かチャレンジした。

ただ、餃子の皮の種類も大きさも違うし、そもそも肉だねの再現ができない。

とても悔しい。

母にレシピを聞いたこともあるけど、スパイスも、キャベツの量も、

「うーん、あるもの適当に入れてた」

とのことで、全然あてにならない。

その時の味は、その時にしか味わえないものらしい。

味というものは、一期一会なんだなぁと思う。

自分で作ると、数を多くしても残ってしまうから、自然作る量も少なくなる。

100個以上作っていた頃のように、遠慮なくもりもり餃子ばっかり食べるわけにいかなくなる。

一つ一つを丁寧においしく食べる方針に転換せざるを得ない。

でも、時々もりもり、がっつり餃子ばっかりのご飯を食べたくなる。

母製肉だねの大量のむっちん餃子が恋しい。

どちらが速く包むか競走して、いつも負けた。

「年の功があるからね」。

でも、むっちん餃子の具の詰め具合だったら、私だって母に引けを取らなかった。

具が残らず、余った皮にはチーズを挟んで揚げ焼きした。このチーズ餃子、頑張ったご褒美みたいで、とても好きだった。

餃子余ってもいいから、母の餃子を思い出しつつ、100個作ろうかな。

きっと同じ味は作れないけど。

【今日の英作文】
何らかの理由で彼女は仕事を辞めました。
For some reason, she quit her job.

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