「食いしん坊のお悩み相談」感想
もしあなたが神奈川県民で、崎陽軒のシウマイを愛しているのであれば、ぜひこの本を読んでほしい。
これはネット上の質問に著者の稲田俊輔氏が回答したものをまとめたものである。
著者の「お客さん物語」を読んで、面白かったので気になっていた。
私は面白いと思った著者がいると続けてその人の本を何冊も読むことが多く、稲田俊輔の名前も本屋に行けば探すことが多かった。そこで見つけたのがこの「食いしん坊のお悩み相談」だった。ただ、ネットでほぼ全部の質問と回答が読めるので、あまり買う気はなかった。
本屋でパラパラと立ち読みをした時、ちらりとシウマイの文字が目に入った。これは崎陽軒のシウマイのこと?気になったのでその質問と回答をじっくりと読むことにした。
質問は、崎陽軒のシウマイをあまり美味しいと思えないが、お土産としてよくもらうので美味しく食べられるようになりたい、というものだった。
その回答は、熱心に推しの布教に勧める人に対し、良さを理解しようと務めるもののイマイチ良さを掴みかねている人の様子が感じられた。
著者と崎陽軒の関係は3期に分けられるという。
1期は質問者と同じく崎陽軒のシウマイの美味しさが分からない時期。
2期ではこのような発言をしている。
「崎陽軒のシウマイは決してすごくおいしいものではないかもしれないけれど、あれにはあれしか無い良さがありますね」
これは「決しておいしくないとはなにごとだ」と神奈川県民に怒られたそうである。神奈川県民としてはそりゃそうだ、としか言いようがない。あれは美味しいものなのですよ。
そして3期の発言。
「崎陽軒のシウマイは、焼売でなくシウマイという別の食べ物としてはおいしいですね」
お前は何もわかってないな、という思いが湧いてきた。著者はまたしても神奈川県民から怒られたそうだ。「崎陽軒こそが最も焼売らしい焼売だろう」と。
そこは私の意見と若干違ってくる。私は、シウマイ弁当は駅弁としての完成形なのだと思っている。
列車に乗って食べ物の袋を開けた瞬間に食べ物の匂いが立ち上り、周囲が気になった事がある人は多いと思う。なんとなく肩身が狭く、そそくさと食事を済まし、あまり美味しさを味わえなく残念な思いをする。
シウマイ弁当は由緒正しい駅弁なので、そのような心配はない。無臭とは言わないものの、臭わないのが特徴だ。
シウマイもからあげも一口で食べられるサイズで食べやすい。
著者は冷めても美味しいと言っていたが、冷めた状態で食べると美味しいように調整してあるものなのです。逆に、温めるとシウマイの良さはあまり発揮されないと思っている。
傾けても振り回しても寄り弁にならないし、汁もこぼれない。時間ギリギリで走って新幹線に飛び乗ってもびくともしない。最高じゃないか。
だから新幹線でビール片手にシウマイ弁当を食べるのは最も正しい姿なのです。
もっとも、走って新幹線飛び乗った場合、心配なのは寄り弁よりもビールかもしれないけれど。
この文章を書くために買った本を何回も読み直していたら、シウマイ弁当の回答ページを覚えてしまった。118ページである。ここだけでも読んでほしい。
本の感想というよりも崎陽軒のシウマイ布教のようになってしまった気がするが、まあいいか。
他の質問に対する回答も思わずニヤリとしてしまうものが多いですよ。