
フランス「モラリスト文学」の入口~ラ・ロシュフーコー

16世紀から18世紀にかけてのヨーロッパ諸国は、政治的には「絶対王政」の時代です。
イギリスはエリザベス1世、フランスではルイ14世などの治世がその代表的なものです。
17世紀に入ると、先にイギリスで市民革命が起き、王政は倒れます。
一方、ルイ14世が君臨するフランスは、ヨーロッパ文化の中心として栄えていきました。
この時代にはパリの郊外にヴェルサイユ宮殿が建てられました。
また、ギリシア・ローマを範とする「古典主義」の演劇が盛んになりました。
唯一の著書「箴言集」によって多くの名言を今日に残すラ・ロシュフーコーが活躍したのもこの時代のフランスでした。
ラ・ロシュフーコーは、モンテーニュやパスカル、ラ・ブリュイエールとともに「モラリスト」というフランス文学特有のジャンルに属します。
これは、人間の生き方を観察し、道徳的なあり方について反省を促す短い文章やエセーを書く作家を指して用いられる呼称です。
ラ・ロシュフーコーは「箴言集」で、人間の欺瞞や悲惨さを鋭くえぐった多くの名言を今日に残しています。
フランス有数の大貴族の出であった彼は、最初は軍人になりました。
しかし政治的野心が挫折し、恋人にも裏切られ、やがて文人に転身することになります。
そしてパリの文芸サロンに出席するようになり、毒舌の才を開花させて行きました。
「辛辣な人間観察を含んだ格言」を意味する「箴言(マキシム)」の伝統は、フランスで今日まで受け継がれ、鋭く辛辣な「エスプリの戦い」は今も日常的に行われているのです。
頭のいい馬鹿ほど
はた迷惑な馬鹿はいない。
Sometimes we meet a fool with wit
never one with discretion.

フランソワ・ド・ラ・ロシュフーコー
(1613 - 1680年~フランス・文学者)
生涯唯一の著書「箴言集」で知られる。「箴言」とは、当時サロンで流行した知的遊戯の一つで、出来るだけ短い文章で人間の心情を描写する、というもの。彼はこの分野で多くの辛辣なことばを残した。
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