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作家たちの「入口」

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国内外のとっつきにくそうな作家や難しそうな作品の、分かりやすい「入口」をご提案します。
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記事一覧

「ほら話」の突破力~『ふくわらい』西加奈子(ほぼネタバレです)

今回は、西加奈子の長編小説「ふくわらい」を取り上げます。 グロテスク、猥褻、とされる場面…

福田尚弘
1か月前
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虚無のパノラマ「楢山節考」~深沢七郎(ネタバレ有)

深沢七郎の「楢山節考」(1956年)は、日本に古来から伝わる「姥捨伝説」を題材として書かれた…

福田尚弘
1か月前
473

ポストモダン文学の入口②(アメリカ編)~カート・ヴォネガット「スローターハウス5…

(ややネタバレ) 1950~60年代のアメリカ文学には、それまで主流であったリアリズム重視の文学…

福田尚弘
2年前
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『ライ麦畑でつかまえて』(The Catcher in the Rye)J.D.サリンジャー ~ここは、「…

今回は、昨今では村上春樹氏の翻訳でも知られる、「ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン…

福田尚弘
5か月前
482

人それぞれの、孤独とぬくもり~『伊豆の踊子』川端康成

今回は、「伊豆の踊子」を取り上げます。 あまりに有名な作品ですが、終盤、舞台設定ががらり…

福田尚弘
7か月前
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ビート文学の入口 「オン・ザ・ロード~路上」ジャック・ケルアック(改訂)

ケルアックは、バロウズやギンズバーグらとともに、1950~60年代アメリカの「ビート・ジェネレ…

福田尚弘
1年前
249

モダニズムからポストモダン文学へ ①(欧州編) ~サミュエル・ベケット他(改訂)

「ポストモダン文学」は、第二次大戦後に生まれた前衛文学を指します。 この「ポストモダン」を直訳すると、「モダンの後」となります。 ですので、「ポストモダン文学」の前に、まずは「モダン→モダニズム文学」から簡単に説明しておきます。 「モダニズム文学」とは、19世紀後半の主流であった写実主義(例 フローベル、ディケンズ、ドストエフスキーなど)に反発したスタイルのものを指します。 論者によって幅が異なりますが、だいたい第一次大戦後の1920年前後から第二次大戦前の1940年あ

決して手が届くことのない「美」~ウラジミール・ナボコフ 『夢に生きる人』(改訂)

ナボコフは、19世紀末に帝政ロシアで生まれました。 しかし、革命後の1919年にイギリスへ亡命…

福田尚弘
7か月前
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サン=テグジュペリの入口~「星の王子さま」「夜間飛行」(改訂)

自身がプロの飛行士であったサン=テグジュペリは、その体験を題材とした小説を、全く異なった…

福田尚弘
1年前
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永遠の今~『シッダールタ』ヘルマン・ヘッセ(改訂)

ヘッセは、詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する作家です。  「シッダ…

福田尚弘
7か月前
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原人にだけ見える風景~梶井基次郎『檸檬』(他)

今回は、有名な『檸檬』を中心に、梶井基次郎の作品といくつかのエピソードをあわせて紹介して…

福田尚弘
10か月前
424

モーム「人間の絆」~ペルシア絨毯に込められたメッセージ

人生の意味とは? 「人間の絆」(1915)は、モームの自伝色が濃い成長物語です。 文庫版で12…

福田尚弘
1年前
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世界を、何となく覆う「悲しみ」~新美南吉『川』(他)

今回は、『ごんぎつね』であまりにも有名な新美南吉の作品群の中で、彼が晩年に残した「少年も…

福田尚弘
8か月前
340

「ロスト・ジェネレーション文学」の入口~ヘミングウェイとフィッツジェラルド・ふたつの切ない短編小説(改訂)

ロスト・ジェネレーション 1920年代から世に出たヘミングウェイらの世代は、「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれています。「迷子の世代」あるいは「喪失の世代」などの訳になります。 彼らはまた、「貧乏くじ世代」とも呼ばれています。 この時代には、いくつかの大きな災いが起きました。その中で最も衝撃的だったのが、彼らが青年期の時に起きた第一戦世界大戦(1914~1918)でした。 かつてない規模のこの戦争では、人類史上初めて毒ガスや戦車などの大量殺戮兵器が戦場に持ち込まれ、世