アトロルベンスの懺悔
1日中下を向いて黙々と植替え作業をしておりますと、血液が顔面に集中するのか面白いくらい顔が浮腫むんですけど。
元々面白い顔をしているので浮腫むくらいじゃ誰も笑っちゃくれませんがね。
あと、この季節の我が家は冬眠準備のカメムシの大群に襲われます。
カメムシの多い山間部に住んでおりますので、春と秋の園芸で忙しい時はカメムシも忙しい時なのです。
秋の赤トンボの群れとかを風流に想像していただきまして、その赤トンボをカメムシに置き換えてみてください。
ブンブンブンブン飛びまくってあちこちに激突しては墜落しております。
網戸や洗濯物にびっしり。
ちなみに、わたくしくらいのレベルになりますと、素手でカメムシの空中キャッチいけます。
カメムシが臭い匂いを放つ微妙なラインを熟知しておりますので、刺激することなくそっと握り締め、勢い良く道路に叩きつけてやります。殺!
優しさと厳しさを兼ね備えた剛腕カメムシマイスター。
鼻も慣れてしまってなんとも思わない体になってしまった。
カメムシが頬や頭をかすめる中、無我夢中でクリスマスローズのお世話をしているんだよってことを伝えたいだけなのに…
クリスマスローズよりもカメムシの話に熱が入ってしまう…
自分、今日は特に疲れているようです。
前置きが長くなりましたが、
今回は私の1番お気に入りの原種株アトロルベンスの失敗談をしたためたいと思います。
現在市場に出回っている色とりどりのクリスマスローズは、オリエンタリスと呼ばれるものでして、
ここ2、30年で交配に交配を重ねて作り出された雑種の品種になります。現在進行形で進化し続けております。
育種家さん達の涙ぐましい努力の連続が今日のクリスマスローズブームを牽引しているんですね。
そして、このオリエンタリスの大元の祖先がいわゆる原種といわれる自生種でして、ヨーロッパを中心に独自の生態系で各地に分布しております。
犬でも猫でも人間でもそうですけど、雑種は病気や環境変化に強いんです。
遠い遺伝子がかけ合わされるほどに強いハイブリッドが生まれる。
そして、純血種や近親交配はどうしても弱い。
クリスマスローズだって同じで、原種(特に現地採取株)は高温多湿の日本じゃ弱く脆い存在なのです。
そんな原種であるスロベニア産のアトロルベンスの株分けを譲ってもらったのが今から4年前になるでしょうか。
自分にとって初めての高価な原種株でした。
株分けとはその名のとおり、パッカーンと株を割って分けることでござる。
切断手術ですよ。植物にとっては負担に決まっている。
せめてこの年の開花は諦めて蕾を摘み取り休ませるべきであった。
植物が花を付けるというのは子孫を残す行為ですからね。
生物とは元来子孫を残すことに最大限のエネルギーを使うよう設計されているんですよ。
それが自然の摂理というものです。
を、すっかり忘れて人間のエゴで存分に咲かせたあげく、種まで存分に取った結果がコレです。
取った種の発芽苗は半分ほど生存しておりますが、なんせ原種は気難しいので夏場は地上部を落としてしまう。
今年の夏をなんとか耐えて生き残っているチビ苗達も開花まで上手く育つとは限りません。
おそらくもっともっと減るんじゃなかろうか。
全滅もありうる。
それでも…なんとか意地でもこのアトロルベンスの遺伝子を残さねば…
じゃないと、気前よく株分けしてくれた先生に顔向けができないってもんですよ!!!
順調に育ったとして、開花まで早くても5年以上はかかると思われますが、5年日本の夏を経験した苗は親株よりも暑さに耐性が付くはずです。
これもまた自然の摂理。
ちゃん。