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焙煎機作ってたら温度計できた

品質的にもコスト的にも「もう自分で焼いたコーヒーしか飲めない」という習慣的セルフロースターの皆様こんにちは、孫悟空です。うそだけど。

開発中の焙煎機の最適な温度計を検討していたところ、「これはもう作るしかないかあ」って感じでコロナでひきこもりついでに工房につきっきりですが皆様は生活変わりましたか?

さて。焙煎って200℃軽く超えるので焼いてる豆には直接触れないし、作業は途中で止められないし、勘に頼った手探り感が拭えないですよね。いわゆる温度計を使ってはいても、ドラムの中で何が起きているのか読めるのは叩き上げの職人だけ。最終的には勘を磨くのみ、という前時代的な世界だったわけですよ。まあそれが良かった時代もあったんでしょうけど、できた温度計を実際に使ってみるとこれが「今まで信じてた手探り焙煎1000本ノックは何だったんだ」的な効果がありまして。自分で焼いたほうが安くてうまいし楽しいって思ってる私みたいなみんなに使ってもらいたいところ。

開発では基本構造より製品化のための品質向上の方が時間かかりましたね。
日本の「要求されてもいない異常な多機能高品質」に慣れてしまっているせいか、「必要なのは必要な部分だけ」と頭ではわかっているのにほんの些細な違和感を切り捨てられず、些細な改善点を積み重ねてなかなか完成しない。もちろん魂は細部に宿るってのも本当だし、リリースの先にある製品としての責任を想像しすぎて重荷になっていることも理解しつつ、結局だっせえのリリースしたくないじゃん? かといって潤沢な資金投入を元にしたオーバースペックはできないから、シンプルを突き進めることにした。質実剛健、設計の断捨離である。

質実で必要なのは温度をグラフで表示すること。今どの程度の道程にあってこの先どういう感じかが見えること。

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左から温度、秒間温度、時間。
温度と時間はバラバラの機械でも表示できますけど、毎秒の温度変化は両方合わせて計算しないと見えないんですよね。はじめは下段の数値表示だけで行こうかと思ったんですが、CPUに余裕があったんでグラフィック変換してみました。
結果、図表に変換するだけでこんなに焙煎の安定感が出るとは思いませんでした。今までは15分経って1ハゼがないと、「この宇宙に星間移動する知的生命体はどれだけいるのかなあ」とか逃避行始めるところでしたが、この勾配ならあと1分でハゼかなとか見えるようになりました。。また200度張り付きの単調な焙煎より、低温通過の具合が味の深みに変わるなあとか適当な理由をつけて焼き上がりを納得する能力も身に着けました。もう焙煎を失敗する気がしない。

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写真は温度センサーの頭の部分です。中に丸く見えるのが温度センサーで直径1.5ミリくらい。温度を見るメタル素材がむき出しなので保護のために260℃まで耐熱のテフロンパイプで保護してあります。漏電防止と耐ショックが目的です。K型熱電対という規格の工業用の温度センサーで本来1296℃まで計測可能ですが、プログラムリソースの断捨離(軽量高速化)のために250℃に制限しています。

K電対はこのように開放型の形状だったり、ステンレスで密閉保護されたり、ネジが付いたりなど多彩なので、どんなタイプを付けるか迷いました。開放型は反応が早いが耐久性が低く、密閉型は丈夫だが温度変化の描写が遅くなる、セラミック充填型は高価、などと一長一短なので、いっそ付けないことも考えましたが、実際動かしてみないと何を選べばいいかもわからないと思うので「それぞれの焙煎機に最適なセンサーが見つかるまでのお試し気分の消耗品」ということで中心軸の基本部分だけを用意しました。テフロンのパイプは用途によってある方が良かったりないほうが良かったりしそうなので、自分でつけてもらうキットにしておきます。
というか、"ほとんど針金"なセンサーに手鍋や豆がガシガシ当たる使い方も充分想定されるので耐久性は保証できない。だからお試しのおまけで付ける程度の扱いになりました。あくまでも模索用です。根本はミニチュアプラグという形式ですが、付属のプラグを付け直すこともできますので「K型熱電対」ならOKです。色々工夫してみてください。もし使い始めに表示が不安定なら先端の玉から2本針金電線が出ているのがどこかに接触していないか確認してほしいな、そんなところです。

必要ないものは省くのがコストダウンの肝。

コストダウンといえば例えば電源。コンセントに繋ぐ家電製品は電源の安全性の"PSE認証"とるのにも軽く50万円かかる。ACアダプタも認証費用で高価になるし「なんだかなあ」と思っていたけど、「日本の製品が爆発しないのはこういった性能試験込みで認証する慎重さにあるんだろう」とか、「天下りっぽい機関と思っていたけど意外と役立ってるのかもなあ」とか考えながら。

…天下りといえば"海外での日本料理店認証制度"、あれちゃんとやったほうがいいんじゃないですかね。全然日本料理じゃない日本料理店多いですよ。反対したのは誰ですか。

…ということで電源は要認証部分を切り離してUSB専用。みんなアダプタくらい持ってるからと理由をつけて"電源アダプタ同梱せず"の暴挙に出ることに。そこまでのコストダウンは許されるのだろうか。まあでも皆さん焙煎のときくらいUSBアダプタの1個や2個出てきますよね。1個でいいです。モバイルバッテリーでもいいです。パナソニックの単3x2モバイル電源QE-QV201でも5時間位動きました。屋外でも焙煎できますね。

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一番のコストダウンどころは外装パーツ。金型作って射出成形にすると試作金型だけでも50万円くらいする。ちょっと凝った構造にすると製品化のスタート地点で100万円上乗せになる。でもユーザー負担を考えると躊躇する。だって100個しか作らないとしたらボディだけで1万円の上乗せになるから。今回7個しか作ってないので 温度計が15万円! ってわけにも行かないし。自分的には回線がショートしなければダクトテープでも役割は充分とはいえ、少量生産だからって流石に中身だけの組み立てキットで売るのもねえ。ってことで3Dプリンターでアクリル系の筐体を出力することにした。必要な部分を必要なだけ提供するには、私の場合こうなった。最近クラウドファンディングでも3Dプリンター使用ってよく聞きますね。画面と操作を邪魔しない、設置が多彩、滑って落とさないをテーマに実用性は充分な設計ができたと思う。これ以上の寸法性を求めるならアルミの削り出しになろう。

とまあ自分で開発しておいてなんですが、温度の表示の仕方一つでここまでやりやすくなるかーと感慨深いです。焙煎楽しい。

もしよかったらおひとついかがですか。

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