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卯岡若菜
2020年7月30日 23:45
書かなければならない義務なんかなかった。はじめにあったのは、ただ「書きたい」、それだけだった。理屈っぽく、見ようによっては可愛げのなかった子ども時代のわたしは、ただひたすら思考と感情を文章にすることが好きだった。口達者のくせして肝心なときほど役立たずになってしまう口に比べ、文章であれば深く大きな呼吸ができる。自由に書ける。上手に書きたいと思ったことはなく、ただただ書いていたかった。たぶん、「書
2020年7月16日 22:37
こう、ぐわあっと胸をわしづかみにされるというか、胸どころか心臓を握られているような感覚というか、布団に突っ伏してじたばたせずにはいられない衝動というか、それら押し寄せる波を我慢した結果ただ惚けた自分しか残らなくなってしまった、みたいな、そんな事態に陥ることがちょくちょくある。端的に言えば「好き」。それだけだ。「どこが」とか「何が」とか、説明しようとすればできなくはないのだけれど、言葉に当て
2020年7月8日 12:22
七月に入り、早くも一週間が経過した。このところ、天気はずっと不安定だ。今日も仕事部屋の窓から見える景色は、曇天と雨天とを繰り返している。いま住んでいる場所からはそもそも臨むことができないのだけれど、遠くに見える山々は、今日みたいな天気だと雨にけぶってしまっていただろう。実家から見える山を、ぼうっと眺めているのが好きだった。そんな天気次第で明瞭に見えたり霞んでしまったりする景色と同じように、わた