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【読書メモ】問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する

問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する
著者:安藤昭子
出版社 ‏ : ‎ ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 ‏ : ‎ 2024/9/20


【まとめ】
◆問はいつ生まれるのか
・驚きから問いは始まる。
・今、目の前にあるそのことにいかに驚くかが重要。

◆問い体質はどうやったら作れるのか
・問いから問いの連鎖が生まれ、問い体質の土壌ができあがる。
・「少しだけ知っている」が「もう少し知りたい」につながる。
・知らないものには興味が向かないし、十分に知っていることにも好奇心はわかない。

◆問いの連鎖を起こす方法
本を活用する例として、
読前に、仮説や問いを立てる。
読後に、最も心を掴まれた問いを残しておく。


問いは驚きから始まる

・生涯をかけて「偶然性」を探求した哲学者・九鬼周造(1888-1941)

・「驚き」は、人間特有の情。
例えば、「驚」という漢字には馬が入っているが、馬にとっては驚きではなく、恐れになる。

・一般的に「驚き」は、偶然的なものに対して起る感情である。

・今、目の前にあるそのことにいかに驚くか。
「あたり前」の奥にある「他にもあり得た」世界を想像し、目前の情景をいかに「あたり前でない」世界として見ることができるか。人間はそこに驚きを抑えることができない。

・科学者のニュートンは、落下するリンゴに「驚き」を見出し、万有引力にたどり着いた。リンゴが落ちるなんて、誰でも知っているのに、である。

・「哲学」はそのまま「問い」と置き換えられる。


問いが奪われている

・想像のきっかけは、あることを「知らないことすら知らなかった(無知)」の状態から、「知らないということを知ってしまった(未知)」の状態に転がり込むところにある。

・「未知」はさまざまなアプローチを経て「既知」になる。その過程で何度も「問い」が引き出され、たくさんの「未知」と出会い、知性の足場が育まれる。

・キーワード検索は、「未知」を瞬時に「既知」に変える作業。これは、問いの機会を奪われているとも言える。

・インターネットは、知らず知らずに私たちの本来の感受性や好奇心を奪っていく過酷な環境でもある。


子どもは40000回質問する

・『子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』
著者:イアン・レズリー

・好奇心には、目新しいものすべてに惹きつけられる「拡散的好奇心」と、目先の利益には必ずしもならない関心事を探究しようとする「知的好奇心」のふたつの側面がある。

・好奇心が駆動するには、「少しだけ知っている」という状況が大事なのだと、レズリーは指摘する。

・自然人類学者の長谷川眞理子(1952-)さんは、人類があるとき大陸から出た理由は、好奇心であるという。あの山の向こうに何があるのか。その好奇心が、人類の活動領域を広げ、進化させた。

・好奇心の強さの程度は生まれつき決まっているものではなく、外部との相互作用の中で引き出されていくものだとレズリーはいう。

・「少しだけ知っていること」が「もう少しだけ知らせてくれる」ものに引き合わせてくれる。


アンラーン

・「アンラーン」とは、ある事象に対してすでに知っている知識を脇において、新たな目で捉え直す試みだ。「学びほぐし」ともいう。

・問いの芽は、放っておくと「そういうもの」という 固定観念に押しつぶされる。 そういうときは、 一度常識をアンラーンするといい。

アンラーンのコツ

①歴史の「はじまり」をたどる
・何かを本質的に考えたいときは、一度は「起源をたどる」。

・情報を俯瞰的な目で捉え直す際に役立つ型として「略図的原型」がある。
編集工学では、「略図的原型」を「プロトタイプ」「ステレオタイプ」「アーキタイプ」の3つに分類する。

・特にこの「アーキタイプ(原型)」は意識しないと見えてこない。私たちの認識はたいてい「そういうものだ」という「ステレオタイプ(典型)」で埋め尽くされているし、何かを学ぶとき「つまりは」という「プロトタイプ(類型)」を理解するにとどまることが多い。

・例えば、「コンビニは今後どうなるのか?」ということがふと気になった場合、一度コンビニの略図的原型を考えてみるといい。
「コンビニ」のプロトタイプは、「日用品のフランチャイズストア」「長時間開いてる便利なスーパー」などといえるだろう。
ステレオタイプは、「セブン-イレブン」「ファミマ」などが挙げられる。
アーキタイプは、「商店街」や「駄菓子屋」かもしれないし、もっと遡れば「万屋」あるいは「市」かもしれない。
そういう風に見てみると見慣れた「コンビニ」もちょっと違ったものに見えてくる。

②「おさなごころ」をたどる
・問いにまつわる「個人的な起源」に目を向ける。

「なぜこんなことが気になるのか」、「どうしてそこに違和感を覚えるのか」。自分の内面に耳を澄まし、好奇心の正体に目を凝らしてみる。

・自分の好奇心のアーキタイプ(原型)を訪ねるつもりで、おさない頃の記憶にまでさかのぼって、プロトタイプやステレオタイプで埋め尽くされる前の自分と対話してみる。


問いの連鎖を起こす

◆探求型読書
・何らかのテーマに探求するために本を活用する読書法を編集工学研究所では、「探求型読書(Quest Reading)」と呼ぶ。

・本の内容を余すことなく理解することよりも、本を手がかりに思考を進めることを目指すアプローチ。

・「問いが先導する読書」、「問いを導く読書」と言える。

・探求型読書では、「読前」が重要。
本文を読み進める前に、自分なりの想像力を働かせる。この一手間をかけることで、主体的な読書が可能。

・事前に立てた仮説や問題意識を頭に置きながら、目次を手がかりに、気になるところから拾い読みをする。

・つい著者の言い分を汲み取ることに思考が引っ張られるてしまうが、あくまで主体は読者なので、著者の「Q」と「A」を活用しながら、自分の「Q」と「A」を引き出していくことを意識する。

・読後に、最も心を掴まれた問いを残しておく。その問いを持ちながら再度本棚に向かうと、気になる本が目に飛び込んでくる。

・こうして問いから問いへの連鎖を起こしていくことで、「問い体質」へと変化していく。

・探求型読書については、『知識を操る超読書術』の内容とも酷似している。

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