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『デジタル・ミニマリスト』を読む。 #159


以前紹介したミニマリズムの歴史の動画で、近年のミニマリズムはモノだけでなくデジタルも守備範囲であると紹介されていました。

そこで、代表作として挙げられていた『デジタル・ミニマリスト』を読んでみました。この記事では、その中から個人的に印象的だった箇所を引用していきます。


はじめに

まず、デジタル・ツールにまつわる諸問題を以下のようにまとめています。

デジタル・ツールの過度の使用がもたらす疲労感。主体性を弱め、幸福度を低下させ、負の感情を増幅し、より大事な活動から注意をそらさせる力

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そして、この対策を以下のように述べています。

必要なのは、自分の根本をなす価値観に基づいた、妥協のない"テクノロジー利用に関する哲学"だ。

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デジタル・ミニマリストは知っている。現代のハイテクな世界で生き延びていくために必要なのは、テクノロジーを使う時間を大幅に減らすことだ。

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ヘンリー・デヴィッド・ソローやストア派のマルクス・アウレリウスの引用があることも見逃せません。彼らの生き方は、ミニマリストの思想を語るうえでは欠かせない先人たちです。


1 スマホ依存の正体

ここ10年ほどでソーシャルメディアやスマートフォンが生活に浸透した理由は、間歇かんけつ強化と承認欲求に関する依存症であると指摘します。

間歇強化とは、予期せぬパターンで報酬を与えられる方がドーパミンが分泌されやすいというギャンブルにハマってしまう仕組みのことです。「いいね」がついていないか、面白い記事が更新されていないのかと頻繁に確認したくなるアレです。承認欲求については、言わずもがな「いいね」をもらえると"誰それが自分のことを考えてくれていた"と感じて、社会的な満足感を得られる仕組みのことです。

ちなみに、通知バッジを赤色にすると、クリック数が増加するのだそう。私はこのことを知ってから、パソコンやスマホの画面でバッジが表示されないようにしたり、画面自体を白黒にしたりしました。


2 デジタル・ミニマリズム

間歇強化と承認欲求の依存症から抜け出す方法として、デジタル・ミニマリズムが提唱されます。

主導権を取り戻すには、小手先の対処を考えるのではなく、自分が本当に大事にしていることがらを軸として、テクノロジーとの関係を一から築き直さなくてはならない。

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本書では、デジタル・ミニマリズムを以下のように定義しています。

デジタル・ミニマリズム
自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、他のものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学。

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また、デジタル・ミニマリズムを実践することで、役立ちそうな情報を見逃してしまうのではないかという不安については、以下のように返します。

小さなチャンスを見逃しても気にしない。それよりも、人生を充実させると確実にわかっている大きなことがらをないがしろにすることのほうを恐れるのだ。

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3 デジタル片付け

では、実際にデジタル・ミニマリズムを実践する際の手順を見ていきましょう。筆者はこの手順を"デジタル片付け"と呼び、以下のように定めています。

デジタル片付けのプロセス
 三〇日のリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。
 この三〇日間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする
 休止期間が終わったら、まっさらの状態の生活に、休止していたテクノロジーを再導入する。その一つひとつについて、自分の生活にどのようなメリットがあるか、そのメリットを最大化するにはどのように利用すべきかを検討する。

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4 一人で過ごす時間を持とう

本章では、リンカーンが一人の時間を確保するようにしていたことを例に挙げながら、「意義ある人生を送るためにはあなたの脳が必要としている静かな時間を定期的に確保することがいかに大切か」が説かれています。

特に現代では、スマートフォンによっていつでも何かしらのコンテンツ(音楽やポッドキャストなどの音声も含む)にアクセスできる状態であり、この現状を「孤独の欠如」としています。

孤独の欠如
他者の思考のインプットに気をとられ、自分の思考のみと向き合う時間が限りなくゼロに近づいた状態。

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だからといって、常に一人でいなさいという主張をしているわけではありません。ここでもソローの生き方を参照しながら、以下のようにまとめます。

常時接続を要求する文化にあって孤独の欠乏を避けるために、一人きりで考える時間と他者とつながる時間を日常の中で行き来すること、それこそが私の提案の重要なポイントだ。

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具体的な演習として、スマホが手もとにない時間を増やすことを推奨し、その間は散歩をしたり文章を書いたりすることを勧めています。


5 “いいね”をしない

第2章で、人間は承認欲求があることに触れましたが、この章ではその理由を進化心理学の視点から考察します。また、オンラインでのつながりの時間が増えるほど、オフラインでのつながりを損なうことを示す論文も紹介しています。これらの研究結果に基づいて、以下のように提案しています。

おざなりなコメントが並んだなかに「かわいい!」と一言加えるより、産後間もないママの家に遊びに行くほうが、あなたにとっても友達にとっても得るものははるかに大きいはずだ。

181ページ

簡単に言えば、“いいね”はしない。コメントもつけない。この最低限度の制限を守るだけで、人間関係は劇的に維持しやすくなるだろう。

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だから、noteで「スキ」をつけなくなったからといって残念に思わないでください。実際に会って話すことを大事にしたいだけですから。他にも、「テキストメッセージはまとめて処理する」とか「常におやすみモードにしておく」などの具体的な方法も提案されています。


6 趣味を取り戻そう

「質の高い余暇活動を先に開拓すれば、質の低いデジタル娯楽をあとから最小限にするのは容易になるはず」という前提をもとに、これまでのデジタルツールを控えましょうという提案と共に、この章では以下の条件を満たすような趣味(余暇活動)を始めることを勧めています。

1:受け身の消費よりも体を動かす活動を優先しよう。
2:スキルを活かし、物質的な世界で価値あるものを作り出そう。
3:親睦を支える枠組みが用意された、リアルな世界での交流が必要な活動を探そう。


7 SNSアプリを全部消そう

本章では、デジタル・ミニマリズムがアテンション・エコノミーに対抗する術であることを述べていきます。

重要なのは、"アテンション・エコノミー"とは、消費者の注意アテンションを集め、それを使いやすい形に包装し直したものを広告業者に販売して金銭的利益を得ている企業を指すと知っておくことだ。

246ページ

意図を持ってアテンション・エコノミーのサービスを利用するのは、デジタル習慣に常識的な修正を加える行為ではなく、勇敢な抵抗運動レジスタンスと考えるべきだということだ。

252ページ

スマートフォンとは、デジタル・アテンション・エコノミーが好んで送り込んでくるトロイの木馬だからだ。

278ページ

アテンション・エコノミーという言葉は、『何もしない』にも出てきたキーワードでした。注意を向ける対象をネットから自分の人生に取り戻していくという取り組みは、自分がデザインを考える上でも大事にしたいと思っています。


感想

デジタル・ミニマリストというタイトルから、いかにデジタルツールと上手に向き合うかという内容かと思いきや、現実世界で質の高い時間の使い方をしているのかという生き方を問うような内容でした。

充実した人生だからネットに依存しないのか、それともネットに依存しないから充実した人生になるのか?因果関係は定かではありませんが、とりあえず本書で挙げられている方法を30日間試してみては?



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