10月11日の手紙 ストーンサークルの殺人
拝啓
10月に入って、Audibleで聴き始めた(読み始めた)、ストーンサークルの殺人」、聴き(読み)終わりました。
ネタバレほどほどの感想です。
全く内容を知りたくない方は、ここでブラウザバックしてください。
開始当初はやや退屈だったのですが、10章まできて、主人公ワシントン・ポーとその部下ティリー・ブラッドショーが出会ってから、俄然面白くなってきました。そこまでは、状況説明やポーの過去を説明するくだりが多く、動きが少なかったのですが、グッとギアが入った感じです。
ポーとブラッドショーの出会いがとても良いです。主人公ワシントン・ポーの人となりがよくわかります。いじめを許さないポーがとても気に入りました。あれくらい、かまさないと、激しいいじめには勝てないでしょう。喧嘩っ早い人間としては、「いいぞ、ポー」と応援してしまう出会いの場面です。
ティリーの人生の中で、あの出会いの場面のように、からかいに対応してくれた人間はこれまでいなかったでしょうから、とてもインパクトがあったはずです。
こだわりが強く、社会経験が少ないが高IQで優秀なティリー・ブラッドショーは、ポーと組むことで様々な新しい体験をしていきます。ポーに事件捜査の才能を買われるだけでなく、友人になるのです。友人として認められる、食事をする、プレゼントをもらう、パーティーに出かけるなど、その様子がとても可愛らしいのです。そして、この体験はティリーだけでなくポーも変化させていくようでした。小説の冒頭と最後では、ポーもずいぶん変化しています。ミステリーですが、謎解きだけでなく、人間と人間の交わりによる変化もしっかり描かれていると感じました。
金髪でスマートなフリン警部も含めた、ポーのチームが好きです。
でこぼこコンビ、対照的なバディが大好物ですが、でこぼこチームも良いですね。ベタベタしすぎず仲良くやってくれ、と思いながら聞いて(読んで)いました。「CSI:科学捜査班」の再放送にハマって、ひたすら観ていた時期を思い出しました。
この作品も、映画化か、ドラマ化されそうなほどキャラクターは魅力的です。まだされていないとしたら、今回の殺人描写、死体描写が酷すぎてできないのかしら、と思いました。まあ他にもかなり酷い描写がありますし。でもポーやティリーにぴったりの役者さんが演じたら、すごく人気が出そうなシリーズだと思います。
読み手の藤井剛さんは、渋くて良いお声です。ただ、地の文を読む時がやや硬い発声に最初は感じられました。登場人物が複数いた方が聞き取りやすく感じます。登場人物の声は、それぞれしっかり声色を変えて、演じられているからです。硬い発声の部分が減り、個人的には聞きやすくなります。
しかし、ポーとティリーだけでなく、ティリーとフリンという女性同士、
もしくはポーとそれ以外の男性警察官たちの声の演じ分けができているのは素晴らしいですね。プロの力です。
最後まで終わってみると藤井剛さんの少し硬い重厚な声がこの本にはぴったりであったということがわかりました。選んだ方に拍手を送りたいです。
また電話のセリフがちゃんと電話っぽいエフェクトがかかっていたのには感動しました。あれはとても良いので他の作品でもやって欲しいです。
Audibleならではの臨場感があります。
さて、唯一の欠点はミステリのお約束、登場人物表がなかったことです。自らせっせと名前のメモをとって読んでいました。
ファーストネームで呼んだり、ファミリーネームで記述されたり、役職で呼ばれたりが、混ざっているのがなかなか難しいです。
メモは必須かもしれません。
加えて、地域も覚えて地図でチェックした方が楽しめる気がします。
犯人とその動機については、チャリティの話が出てきたあたりで、予想はついていました。特に動機の背景は、日本の漫画や都市伝説でも使うような設定ですが、英国が使うと重みがありますね。
嫌な設定ですが、立ち消えないということはそういうイメージが払拭されないし、それに類似したことが起こっているのでしょうし、
日本の芸能関係のニュースを見てもわかるように、実はよくあることなのだと思います。
犯人については、「意外な近しい人」だろうと考えていたので、後半はかなりハラハラしていました。隣人だろうか、上司だろうか、それとも仲間か…と予想をしていました。後半のある場面で悪い予想が外れたと、ホッとしていたのですが、どんでん返しがあり、悪い予感は当たってしまいました。、
シリーズはまだ続くようですし、あの終わり方であれば、犯人はまた登場するのかもしれません
英国の田舎風景、英国の食事やカフェの様子、英国の捜査の様子(壁一面に資料を貼りまくる、報告会議をする、地道に聞き取りをする)などもとても楽しめました。
次作、ブラックサマーの殺人も聞き始めています。このシリーズはお気に入りになりました。
推理小説が苦手な方でも、でこぼこバディものが好きな人は楽しめると思います。
ぜひ聴いてみてください。
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