創作SF もろびとこぞりて
「うちがいうたことは、忘れてええんやからね」と声が聞こえた。
落ち込んだ様子ではなくて、わりとさっぱりとしていて、面白がっているような口調だ、と阿南は好感を持った。
どこから聞こえたのだろうと視線を上げる。
今、阿南がいる待機カフェは、温かい色のライトに、緑、白、茶の3色で構成された内装だった。壁や天井、テーブルは、木製風の合板で、あちこちにフェイクグリーンが飾ってあった。チープではあるが、居心地の良い空間を作ろうと努力しているのはわかる。
かかっている音楽は、英語のポップス