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創作小説

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千歳緑/codeが書いた創作小説です。
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記事一覧

2024年12月19日 小説「月次祭(つきなみさい)」

完全な暗闇の夜、 ある場所に、 小さな灯りがあった。 灯りは揺らめいている。 焚火であった。…

千歳緑/code
1か月前
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2024年10月30日 創作小説「欲しいものはわかってる」下

病院の予約は、10時半。そろそろ出かけるとするか、とスズキトモコはカバンとスプリングコート…

千歳緑/code
3か月前

2024年9月27日 創作小説「開かれた手紙」

拝啓 この手紙を受け取ったひとへ 身に覚えのない手紙に驚いていることだろうと思う。 とに…

千歳緑/code
4か月前
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2024年8月17日 創作小説「黄色のゴーヤ」

熟れたゴーヤは黄色い。 暗い台所で見ても、そこだけ、光ったようにに少し明るい。 そして、絵…

千歳緑/code
6か月前
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2024年5月19日 創作SF小説「痛み」

曇りの日特有の、黄みがかった灰色の光のもとに手をかざした。 血管が青く透けて見える。 ヨド…

千歳緑/code
9か月前
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創作SF 「名前の無い店」

「人の作ったおにぎりなんて食べたことない」と、1人が言う。 つるりとした卵形の顔で、短めの…

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創作SF もろびとこぞりて

「うちがいうたことは、忘れてええんやからね」と声が聞こえた。 落ち込んだ様子ではなくて、わりとさっぱりとしていて、面白がっているような口調だ、と阿南は好感を持った。 どこから聞こえたのだろうと視線を上げる。 今、阿南がいる待機カフェは、温かい色のライトに、緑、白、茶の3色で構成された内装だった。壁や天井、テーブルは、木製風の合板で、あちこちにフェイクグリーンが飾ってあった。チープではあるが、居心地の良い空間を作ろうと努力しているのはわかる。 かかっている音楽は、英語のポップス