あのピカソが認めた天才を誰だか知っているか?
『シンの芸術家』といえば、19世紀フランスの画家アンリルソーの顔が浮かびます。
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絵を見て感じて頂けたと思いますが、なんともいえない独特な魅力があります。
今では、こういった雰囲気の絵を珍しがる事の方が珍しいですが、この「無視できない何か」は 19世紀当時の芸術家たちのインスピレーションの泉を氾濫させました。
彼はヘタウマの元祖と評され、あのピカソに多大な影響を与えた画家としても有名です。
ピカソとルソーのエピソードをいくつか紹介します。
若き日のピカソ、路上販売されていたルソーの絵に出会い、衝撃を受ける。
ピカソに「君と僕は二大画家だ。君のはエジプト様式で、僕のは現代の様式だ。」と言わせる
ピカソ主宰でルソーを讃えるパーティ「ルソーの宴」を開く。
ピカソは4枚のルソー作品を生涯手放さなかった。
などなどなどなど。
これだけ見てもルソーへの憧れが伝わりますね。
こちらはルソーの代表作『夢』です。
緑、それから緑と緑、更に緑に、ついでに緑です。
ルソーは20種類以上の緑の絵の具を使い分け、ジャングルの神秘を表しました。
緑はルソーの代名詞と言えるかもしれません。
芸術家は自分の中にある「美」を掬い上げ、抱き抱え、産声が鼓膜を貫く日を夢見て、あれやこれやと技術を身につけ、着想を膨らませます。
師に習い、他の弟子達と競い合うこともそのひとつでありますが、彼は完全な独学を選びました。
結果的に、それが最も「美」への道として拓けていたのです。
こちらは「旧約聖書」の一場面《エバ》です。
楽園で暮らすエバは蛇に唆され、神からの「絶対に食べてはいけない」という言い付けを破り、禁断の果実に手を伸ばします。
この場面を描く画家の心を想像してほしいのですが、もしもあなたが背景の「楽園」を描くならば、どんなものを創造しますか。
君たちはどう描くか
そのアンサーをアンリルソーはカンヴァス一面に広げています。
ルソーの精神世界に存在する理想郷は、豊かな緑で覆い尽くされていたのです。
しかし、ルソーは実際のジャングルを見た事がなかったのです。
-なんてこったい
それはルソーの絵にも表れています。
例えば、こちらの絵はジャングルに居るはずの無いライオンが、得体の知れない獲物を捕らえている様子です。
ルソーは周囲に対して、自分はジャングルを見た事があると吹聴してまわっているのでした。
その熱心さに、周囲は感心し、信じきっていたほどです。
しかしながら、彼の絵を見ると、「ジャングルを見たことある」という嘘が、真のように感じてしまいます。
どうやら彼の見たジャングルでは、確実にライオンが謎動物を喰らっていたのです。
真以上の真、「その嘘は、ほんとうである」といった工合にです。
こうしてアンリルソーは、彼自身の内側に眠る、理想の美を見事に描き切りました。
ピカソの奇想を練り上げたように見える作品群の、その創作の道の途中にはルソーの美の宿があり、導かれるように門をたたき、からだを預け、旅の疲れを癒したことでしょう。
そこから再出発して、たどり着いた極地こそがピカソ作品が放つ圧倒的なエネルギーの正体なのです。
ウノドレ。