![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/170165708/rectangle_large_type_2_d59e9f349efb8c15fb578bcf0c45ba39.jpg?width=1200)
悪意は最高の暇つぶし
本当になにもやることがなくてカフェに来た。
やるべきことはある。かもしれない。やることがない。
洗濯物も回した。部屋の掃除もした。台所も片付いている。課題もない。仕事もない。やることがない。
このまま家にいてダラダラとスマホをいじっているのは良くないと思ってカフェに来た。
本を読もうと思った。
ずっと読まずに寝かせていた本を数冊持ってカフェに来た。
ミスドの倍の値段がするのに、ミスドの方が美味しいと感じるドーナツを食べた。
損をした気分になった。
読書に飽きてぼーっとする。
平日のカフェ。
田舎。
仕事をしているサラリーマンはいない。
高齢者の茶飲み場と化している。
ふと、悪口が浮かんだ。
1人掛けの席を3つも占拠しているおばさんに対して、傲慢だなと思った。
混雑しているわけではないのだから、3席も占拠していても良いだろう。
でも、そのおばさんに対して悪口が浮かんだ。
次々と浮かんだ。
食べかけのパスタ放置して一体そのパソコンで何をやっているんだ。
若い服装なのに濃い紫の口紅がおばさん感を出してて残念だ。
大袈裟なため息をついてパソコンを叩くのは不快に感じるからやめてくれ。
悪口を言いたい口になって店内を見回すと、全ての客に対して悪口が思い浮かんだ。
おしゃべりの声がうるさい。
着ている服のセンスを疑う。
床に食べカスをこぼしすぎ。
店員さんに対しても浮かんだ。
四角い机を丸く拭きすぎ。
一杯の珈琲を淹れるのに時間かかりすぎ。
珈琲が出来上がる前にお客さん呼んでる。
浮かんできた悪口はもちろん声に出さない。
今このnoteに書いている時点で声に出しているのと変わらないかもしれないが、少なくともこの悪口が当人に届くことはない。
届けたいとは微塵も思わない。
届くなと思うし、もしかしたら誰かが自分のことかと誤解してしまうかもしれない。
誰に対しての悪口というわけではないのだ。
浮かんできた悪口は軽いもので、多分思考の暇つぶしなんだと思う。
目につくもの全てに悪意をぶつけてみる。
それが一種の暇つぶしになっている。
この悪意は相手に非があるわけではない。
改善してほしいとか、心からやめてほしいとかそんな感情は一切なくて、私が暇であるが故に生まれてしまった悪意の塊だ。
わざわざ言葉にしてみると、どうしようもなく醜くて燻んだ世界になってしまうが、言葉にしなければ日常の風景として流れていくだけのもの。
暇が生み出した醜い魔物が悪意だと思う。
悪意は自分を蝕んでいく。
悪意を生み出すことは少し気分が良くて、少しでも油断したらこの悪意を誰かに見せてしまいたくなる。
悪意は最高の暇つぶしだけど、悪意に蝕まれていくことで自分という生き物がどんどん醜くなっていく。
冷め切った珈琲を飲んで、少し後悔しながらカフェを出る。