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「理解と誤解」

目の前で泣き出した女の涙
その理由を 理解できる男はいない

男にある孤独とは そういうものかもしれない

男は愛を告げる者
その時 女は 声だけで 恋に堕ちた


何かにふるえている男の言葉
その意味を 耳で聞くことのできる女はいない

女のみが母になれる理由は そこにあるかもしれない

女は愛を含む者
その時 男は 瞳だけで 恋に堕ちた


女は訊ねる 愛の理由を聴きたかった
男は答えた 口づけを説明するかのように 約束した

男は いつしか 時を重ね 口を閉ざす
女は いつしか 時を重ね 耳を塞ぐ

恋は唇から語られ 約束は言葉で嘘になる


男は 眩い光に照らされて美しく微笑む彼女に自分を認めて欲しかった
女は 闇の向こうからでも手探りで自分を捜し出してくれる声を待っていた

男と女は 光と闇の魔法の鏡越しに 恋に堕ちては

男は ガラス越しに透ける あなたも同じなのだと
女は 鏡越しに聴こえる あなたも同じなのだと

理解を誤解していた


誤解を解くということは 魔法が解けるのと同じかもしれない
理解を誤解していたことを 理解しなければならないから

理解なんて求めるから 鏡に騙されるのさ
騙しているのは いつも自分なんだ

本当の約束だとか 真実の理解なんてことが
嘘をなにも解っていない なによりもの誤解なんだ


恋はいつでも 鏡に向かってひとりでするもの
恋とはきっとそういうもの

独り言のように 喋りすぎてしまうもの


だけれど 鏡を見ていたって
そこには恋する相手しか見えていないのだから

独りでなんて 生きてはいけないのさ


20070519  3:37



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