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大学授業一歩前(第119講)

はじめに

今回はひつじ書房様に記事を作成して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。是非、今回もご一読くださいませ。

自社の概要

Q:ひつじ書房様の概要を教えてください。

A:ひつじ書房は、言語学、日本語の研究、外国語の研究、国語教育、英語教育、日本語教育の関係の本を出している出版社です。
 今年は『「させていただく」の語用論--人はなぜ使いたくなるのか』(椎名美智著)の本が売れました。売れましたといいましても、大手の出版社のように1万部とか2万部とか売れるということはなく、発行部数は500部とかそういう冊数の本が多いです。この本はちなみに3刷りまで行っていて合計で2700部刷っています。現時点では2100部です。
 学術書の出版社ですが、岩波書店のように著者が認められて、売れるようになってから出すのではなく、新しい考えが生まれてまだ多くの人に認められるかどうか分からないところの書籍を出していく出版社です。ついでに申しますと椎名美智先生は角川新書でこの本の続編ともいうべき『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』を1月に出されます。岩波書店が種を植える人だとするとその土地がまだ、石だらけの時に掘り起こすことをやる出版社です。岩波書店をディスりたいのではなくて、役割が違うということです。
 1990年、今から30年ちょっと前に私松本功が29歳で創業して作った出版社です。いまは、私も入れて9人でやっています。

オススメの一冊(ひつじ書房の中で)

Q:ひつじ書房様の中でオススメの一冊を教えてください。

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A:定延利之(2020)編『発話の権利』A5判カバー装 定価2,900円+税 ISBN 978-4-89476-983-0になります。
 こちらは研究書なのですが、民主主義の権利と考えると誰でも平等に発話する権利があると考えますし、その権利は保障されるべきですが、自分と関わりがないこと、知らないことについて発言できるか、あるいは発言したとして、聞いてもらえるかというのは微妙な問題です。ある場所で可能になりある場所で可能にならないものを権利と呼ぶべきかという問題はあります。  とともに、社会の現実の場所で、平等に発言権を持っているとされる事柄でも、実際には発話することがないということはありますが、権利と呼ばれていると思います。
 本書はいろいろな話題があり、ボノボの言語とか、会議での話しとか、推しの話しとかあることと、研究自体が新しいので専門的に細かくなっていないので読むのはたいへんではないと思います。読んでみて下さい。

オススメの一冊(他社の中で)

Q:他社の本でオススメの一冊を教えてください。

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A:中央公論新社の新書の小島剛一著『トルコのもう一つの顔』をおすすめします。トルコが、トルコ語以外の存在を認めていなかった時代に、トルコに言語調査にフィールドワークにいった小島さんのルポルタージュ。
 現地の言語を調べていく際の様々な困難と現地の人々の交流を描いた感動的な名著だと思います。ことばを探求していくことの切実感と醍醐味が感じられる本だと思います。

メッセージ

Q:最後に大学生へのメッセージをお願いします。

A:出版と編集というのは、情報を編んで発信するという仕事ですので、情報が電子のかたちで届けられるようになっても、世の中に必要なもので重要なものだと思います。
 とともに編集者という存在は、書き手や著者という存在とも違っていまして、書き手を応援したり、広めるのを手伝ったりという、目利きであったり、応援団的な存在です。コンテンツさえあればいいということとはちょっと違っています。いろいろなテーマがあって、いろいろな人が作っていると思いますが、そのそばにいるというあり方はどんな世の中でも面白い存在だと思います。興味があったら、ひつじ書房のウェブサイトを覗いてみて下さい。

おわりに

 今回はひつじ書房様に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中作成して頂き本当にありがとうございました。
 私自身、「させて頂く」を周りの人が使いすぎだろうと思い『「させていただく」の語用論--人はなぜ使いたくなるのか』を読んだのがきっかけでひつじ書房様の存在を知り、今回寄稿をして頂きました。未だに「させて頂く」を連呼する人を見るとなんか首をかしげてしまいます。
 一つの言葉を題材に研究をする言語学の深さを知ることが出来た一冊でした。今年2022年二回目の投稿になります。次回もお楽しみに!!

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