大学授業一歩前(第141講)
はじめに
今回は「大学授業一歩前」の名前の元にもなった『社会学入門一歩前』の著者である若林幹夫先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中ありがとうございました。是非、ご一読下さいませ。
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えてください。
A:若林幹夫(わかばやし・みきお)です。専門は社会学。都市論を中心に、電話のコミュニケーション論、地図論、漱石論、未来都市論、ショッピングモール論、時間-空間論など、いろいろやってきました。
早稲田大学教育学部で社会学概論、都市論、「公共圏と親密圏」をテーマとする講義を担当していて、ゼミでは「時間と空間から社会と社会学を考える」をテーマに輪読・討論・研究指導をしています。他に東京芸術大学でも文化社会学とメディア論の授業を担当しています。
オススメの過ごし方
Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。
A:最近は「大学は人生の夏休み」と言ったりするようですが、私は夏休みのような人生を過ごしたくて研究者になり、大学の教員になりました。
夏休みの後のことが気になるかもしれませんが、夏休みをその後の日々のための「手段」にするのではなく、夏休み自体を存分に楽しみましょう。何かのためにではなく、面白いから、興味があるから、魅せられたから、楽しそうだから、あるいは怒りを感じるから、なんでもいいのですが、頭と心と体が動かされることを経験して欲しいと思います。そしてその中のある部分は「学問」と結びついていて欲しいですね。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力はどのようなものだとお考えになりますか。
A:言葉を正しく使って考え、表現すること。「頭」だけでなく、身体と感性ともつながった言葉と理性によって、自分、他者、社会、世界について考えるセンス。そして、知的なものへの敬意、といったところでしょうか。
あと、学ぶことは他者とのコミュニケーションなので、他者への敬意と一定の礼儀正しさも必用ですね。
学ぶ意義
Q:先生にとっての学ぶことの意義を教えてください。
A:「意義」って何なのでしょうね。何かをすることの意味、でしょうか? 私の場合、とくに何らかの意義を感じて学び、研究してきたわけではありません。あえて言えば自分が知りたいこと、考えたいことのために他者の考えを知り、社会や世界について知ることが、それによって自分の思考と感性と世界を広げていくことが、私にとっての学ぶことの意義だと思います。
オススメの一冊
Q:今だからこそ大学生に読んでおいてほしい一冊を教えてください。
A:とても難しい質問ですね。このサイトのタイトルの“本歌”になっている私の本、『社会学入門一歩前』は、大学に入る前、あるいは本格的に社会学を学ぶ前の人たちの「準備体操」のような本になればと考えて書きました。
最後の章「補 私の社会学」には、大学で私が学問とどう出会い、なぜ社会学者になったのかを書いています。社会学に限らず大学や学問との出会いについて考える一助になれば嬉しいです。
メッセージ
Q:最後に学生に向けてのメッセージをお願いします。
A:すぐわかることではなく、わからないことと時間をかけて付き合うことを大切にして欲しいと思います。学問とは「答えを学ぶこと」ではなく、「問い続け、考え続けること」の方法と過程の記録であり、現段階での途中経過なのです。
おわりに
今回は「大学授業一歩前」の名前の元にもなった『社会学入門一歩前』の著者である若林幹夫先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中ありがとうございました。
私自身、大学1年生の夏前(まさにちょうど今頃の時期)に『社会学入門一歩前』を拝読し、この名前と本のコンセプトに衝撃を受けてました。まさにこのnoteを始めの「一歩」になった一冊でした。社会学以外の分野の方にもオススメの一冊です。次回もお楽しみに!!