大学授業一歩前(第116講)
はじめに
今回は不登校問題を研究してらっしゃる藤井良彦先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございます。是非、ご一読くださいませ。
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。
A:中学校には一日も通いませんでした。公立高校への進学はできないと言われたので、私立の通信制高校に進学しました。その高校の指定校推薦で大学に入りました。学士、修士、博士とすべて別の大学で取得しました。博士学位を取得してからは、いわゆる不登校の問題を再検討して、『不登校とは何であったか?』という本を書きました。スクール・マイノリティという観点から学校哲学を模索しています。
オススメの過ごし方
Q:大学生にオススメの過ごし方を教えて下さい。
A:上智大学名誉教授の渡部昇一氏が、図書館の夜勤警備の仕事をしながら本を読んだという話があります。一方、大阪大学名誉教授の鷲田清一氏は図書館の開館時間から閉館時間まで通い詰めて本を読んだという話があります。アルバイトをする必要があるのなら、渡部氏のように仕事と勉強が両立できる道を探すべきです。最低限の生活費が足りているのなら、ぜいたくはせずに徹底的に勉強すべきです。服や靴を買っていてはいけません。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力をどのようなものだとお考えになりますか。
A:何でも検索できる時代です。知識のデジタル化は否定しません。しかし、アナログの知識も必要だと思います。本の検索はデジタル、書庫の本を右から左へすべて見ていくのはアナログ。PDFを検索してダウンロードするのはデジタル。それを印刷して書き込みを入れて読み込むのはアナログ。私は300年前のドイツ語の哲学書をPDFでダウンロードして紙に印刷、書き込みを入れながら紙の辞書を引いて読みました。
学びの意義
Q:ご自身にとっての学びの意義を教えてください。
A:学校とは何か?という問いがずっとあります。その問いを離れて学問もありません。今は大学に籍がないので在野ということになります。しかし、この在野という言葉も、一昔前のように無学歴を意味するものではなくなってきています。安易に在野という言葉にもたれることはできません。学問を通じて学校とは何か?という問いに迫っていきたい。
オススメの一冊
Q:オススメの一冊を教えて下さい。
A:本を読むのではなく、図書館の書庫にあるような、『紀要』『論叢』をバックナンバーから順に見ていくことをお勧めします。もちろんすべて読む必要はありません。目次を見て、どんな論文が書かれているのかを見る。専門誌でもコラムのような埋め草は読んで勉強になります。論文は長くても2万字以内です。10枚コピーしても100円です。日に何本か読めば、その情報量は量の上でも質の上でも一冊の本を読むのに勝ります。本屋で新刊書を買うのは不経済です。高い学術書を書いてる著者でも、その論文なら10円コピーで手に入ります。(学術書の大半は論文集なのです。)
メッセージ
Q:最後に大学生へのメッセージをお願いします。
A:学位と学歴は違うと思っています。私は中学校に行かないで将棋道場に日参していました。通信制高校では化学がわからず学友のレポートを丸写ししていました。受験勉強は一切していないので入れる大学に入ったというお調子者です。しかし、学位論文を出版した本や、その後に発表している本は十分な学術書であると自負しています。なぜか?学位を取得するための勉強は人一倍したからです。少子化の問題もあり、最近では必要な学力のないままに大学に入っている学生も多いと思います。その分、しっかりと論文を書きなさいよ。
おわりに
今回は不登校問題を研究してらっしゃる藤井良彦先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございます。
デジタルとアナログの二つを使えると、片方だけでは限界のある知へアクセス出来ます。技術はまさに使い手次第なのかもしれません。
また、先生の共著『在野学の冒険』は在野研究とは何か、この問いに真っ向から答える一冊です。こちらも是非、ご一読下さいませ。次回もお楽しみ。