大学授業一歩前(第83講)

はじめに

今回は、政治哲学や公共哲学そして法哲学がご専門の木山幸輔先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂き、ありがとうございました。実は木山先生には偶然、私も講義を受講したことがあり、その経緯などは最後に触れさて頂ければと思います。是非最後までご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。

A:木山幸輔といいます。専攻はちょっと難しい問題です。早稲田(東京)では政治理論の、駒場(東京)では公共哲学と社会思想史の、英国では倫理学の、京都ではアフリカ研究の、スコットランドでは法哲学の先生に指導教員とか受入研究者をお願いしていました。今は筑波大学で、法学概論・法哲学(学類=学部相当)、Political Philosophy・Public Philosophy(大学院)と、それらに関連する演習科目を担当しています。その他、埼玉医科大学の教養科目として、政治哲学や対話技法・哲学実践の入門科目を担当させていただいています。今年までの2年間だけですが、明治大学経営学部で公共哲学を教える機会をいただいています。

オススメの過ごし方

Q:授業のオンライン化の中でのオススメの過ごし方を教えて下さい。

A:偉そうなことを言いたくないのですが、意味を認められること(例えば楽しいこと、楽しくなくても自分がこれをせねばと駆り立てられること)を自分で見つけましょう。今1年生のクラス担任をしているのでお伝えすることもありますが、大学というところでは、情報やサービスの「消費者」意識でいると、たいして学びを得られません。特にオンライン時代はそうでしょう。自分で「これをやりたい」ということを見つけたら、できる限りで追い求める。そういうふうに過ごしていたら、後悔は少ないのではないでしょうか。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力はどのようなものだとお考えになりますか。

A:上とも関連して、自分で見つけて言葉にする能力でしょうか。社会の中で考えたい問題意識とか、恋愛から学ぶ自分の人格の問題とか、そういったことを自分で言葉にしていけることが大事だと思います。「なぁなぁ」で済ませるのではなく、言葉にして、きちんと考えること。これが大事だと思います。あとは、自分が考えること、そしてその人が考えることを大切に話すことができる友人を見つけることも大事だと思います。友人は能力によって見つかるわけではありませんが、きちんと対話する態度と能力は間違いなく大事です。

学ぶ意義

Q:先生にとっての学ぶ意義を教えて下さい。

A:単純に、学ばないと生活の糧を得ることができませんでしたし、今後もそうでしょう(笑)。日本やイギリスの多くの大学や街のお世話になりましたが、その大学や地域の常識、文化、特徴などを知らないと楽しめませんし充実した生活になりませんでした。学生さん向けにもう少しポジティブに言えば、学びは視野を広げる手伝いをしてくれる、と言えると思います。他の人から多様な視点を知ったり、哲学的な、あるいは社会科学の知見を学んでいったりすることは、単純に納得できる人生を歩む糧になると思っています。

オススメの一冊

Q:今だからこそ読んでおいてほしい一冊を教えて下さい。

画像1

A:たまに聞かれることがあって、困ってしまうことが多いです。どうぞ大切な本を見つけられてください。考え続けられること、捧げられることを見つけるための読書をなさるといいかと思います。人によっては、専門書かもしれないですし、小説かもしれないですし、漫画かもしれないです。数年後、あの出会いは大きかったなあ、という本があるのは嬉しいことになると思います。その意味では、余裕があるうちは入門書や雑誌、友人などを情報源として、自分が時間やエネルギーを捧げたいと感じるものを探すとよい気がします。しかし、出会いはたまたまやってくるのです。とはいえ、大学生としての生活の多くを占める「書くこと、学ぶこと」の意識化には、レポートや論文の書き方を指南する本ですが、戸田山和久(2012)『論文の教室[新版]』NHK出版は良い本だな、と思います。学類1年生向け大人数授業の課題にして改めて思っていました。教員目線になってしまっていて、申し訳ないですが。

メッセージ

Q:学生に向けてのメッセージを最後にお願いします。

A:歳をとりつつあるせいか、これもまた聞かれることがあって、困ってしまうことが多いです。学生のみなさんも、それぞれいろいろな背景、環境、考え、制約の中で大学生の身分を持っていらっしゃるでしょうから。だから、どうぞ後悔がないようにお過ごしください。とはいえ、身体は有限なので無理をしすぎずに。自分を知る、ということは、若いうちにしておくべきことの一つだと思っています(知られた自分は多少可塑的ではあっても)。


おわりに

今回は木山幸輔先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中ありがとうございました。

しかし、出会いはたまたまやってくるのです。

この言葉は本当だと思います。私自身が公共哲学を始めるきっかけになった一冊は古書店から落ちてきたことは、このnoteで幾度か書いているのですが、その著者の最後のお弟子さんが木山先生で、さらに偶然にも明治大学経営学部で公共哲学の授業を二年間の間のみ持っていたというこれまた偶然がります。自分が極めたいと思い、その道を突き進むと意外と偶然にも多くの方々とのご縁が結ばれるのかもしれないですね。次回もお楽しみに!!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?