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物語ること、生きること

物語ること、生きること
上橋菜穂子(著)、滝晴巳(構成・文)
講談社 青い鳥文庫
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わたし、大人になって色々体験することで、
「へー、自分はこんなことが好きだったんだなあ」
と気づくことが案外あるんですけれど、
「めっちゃくちゃに勉強してる人」
てのがかなり好きっぽいんですよ。
以前感想文を書いた「マイフィンランドルーティン」のchikaさんとか

同時通訳者の英語ノート術&学習法の著者の工藤さんとか。

なんでしょうね…バイタリティが羨ましいのか、それだけ夢中になれるものを持っている人が羨ましいのか…
あるいは単純に「めちゃくちゃ勉強できる」て状況が羨ましいのか…
※後日、このめちゃくちゃ勉強してる人の本の面白いやつも紹介しようと思ってます

「守り人シリーズ」「獣の奏者」「鹿の王」などでご存知の方も多いかと思うのですが、作家の上橋菜穂子さんの自伝インタビューを児童向けにまとめた一冊のようです。
読んでおいて「ようです」、という言い方もなんなんですけれど、お話をまとめたにしては大変こう、口語的ではない文章でして、また、情報量もめちゃくちゃ多いですね。
お話の描き起こしから書き足しや補填を相当されているのではないでしょうかね…著作者の欄が、御本人と「構成・文」でお二人なところでなんとなくかかったお手間を察しております。

大変失礼ながら、上橋さんの著作…しかも御本の方は実はそんなにたくさんは読めていなくて、アニメやドラマになったものをいくらか見たほどの私だったので、御本人がこんなにバイタリティに満ち満ちている方とはつゆ知らず、拝読して大変驚きました。めーーーーーっちゃくちゃ!勉強してる!世界を走り回ってる!すっごい…しかも多作…なんなの…このパワー、どこからくるの…
で、調べてみるとエッセイの著作も相当量あったんですね。いやーびっくりした…フィールドワークで現地飛びまくりの相当な研究者じゃないですか…
これをきっかけにエッセイいくつか拝読してみようと思っております。いやーこの本に載ってたお話、めっっちゃ面白かった!

こちらの本、作家になりたかったご自身の学生時代から今に繋がる学びの数々を惜しげもなく披露されていて、しかも当時のお気持ちやら色々な行動をかなり赤裸々に著しておいでなんですね。基本的には作家になりたいと思っている人に向けて書いてあるのかな…将来に悩む子どもたちに向けての本だと思うんですが、作品のファンももちろん、他国の文化に興味があったり、学びてものに悩んでいたり、慣習だったり歴史だったりが好きな人だって、それはもう面白く感じる本だと思います。もちろんですが大人が読んでも大変に面白い…というか、大人が読んだら
「な、なんでまたこんなに大変なことしてるんだこの人…」
て二重にも三重にも面白いんじゃないでしょうか。うーん、でもあれかな…娯楽的な話というよりは、文学からの引用も多いし、ガチな勉強…研究か…そんな規模の話なんで、一定以上勉強が好きな人とか、勉強の道に進むのを悩んでいる人がより楽しめるものかもしれないな……これ予備知識のないお子さんどれぐらい楽しめるんかな…いっそ異世界すぎて面白いんかな……

児童文学としても、三十代女性でしかも物理的に戦うタイプの主人公の作品てものすごく珍しいと思っていたんですけれど(守り人シリーズのバルサのことですね)、こちらの本を読んでいると、
「こんな経験をしていたら商売の「セオリー」なんて、たいしたことじゃないと感じるかもしれない…」
と思ったりします。あの、視点…視野というか、住んでおられる世界の広さがすんごいですね…異文化の研究されるてのはこんなに考えが幅広くなるんだな、て、単純な私は気軽に憧れてしまったりしましたもの。
テルマエ・ロマエ描かれてるヤマザキマリさんも著作読んで住んでいる世界が広いなと思ってましたが、同じ香りがします。
あと、世界史…世界史にもっと興味を持ったら、今までの自分の中に無い見え方をする物語がたくさん読めそうだ、とも感じました。
上橋さんが読んだ本、影響を受けた本も巻末にリストになっているんですが、相当量載ってますね…はっはーん、この人、「やりすぎる」タイプだな…!!
しかしこの本を読んでいると、上橋さんの御本を全然読みたりなかったのと、話題に出る名作を読んでない己が本当に惜しいですね…何か作品を読んではこの本、読んではこの本、と、戻って来たい…いくらでも再読したい本の一冊になりそうです。図書館で借りたんだけど、自分で買って手元に置いておこうこれ…とりあえず電書(ぽちっ)。

取材は2013~14年にかけて行われ、今回私が読んだ青い鳥文庫は2016年に刊行されているので、6年以上も経った今だともっと面白いお話が出そうですね。この本で御本人が「自分もまだ山を登っている途中」と言ってて、
「どこまで…高みへ登るというのだ…」
と震えるんですが、今年まだ60歳だというし、元気な人はまだまだ結果を残せる年代ですよね。お体に気をつけてもりもり研究して面白いものを残していただきたいですよね。
元々インタビューからの書き起こしなのと、青い鳥文庫という媒体で若い人向けを想定してまとめられているので、内容は高密度なんですが、基本的に読みやすい御本です。なので、上橋菜穂子さんファンでこちら読んでない方はぜひにと思います。やー、本文内で紹介されてる本も読みたいものいっぱいだったな。

読書て世界を広げてくれるんだな、という事実がこれでもかと詰まってる良書です。娯楽として読むだけでもぜひぜひ。元気出るこれ。


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