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【どこよりも詳しい】スワローズ新外国人ディロン・ピーターズ投手徹底分析
こんにちは、シュバルベです( ✌︎'ω')✌︎
セリーグ連覇を果たした東京ヤクルトスワローズ。すでに12月頭にライネル・エスピナル投手を獲得し、外国籍選手の補強第1号となっています。
そして、12月20日。補強第2弾となる報道が出ました。現ピッツバーグ・パイレーツ所属の左腕、ディロン・ピーターズ投手です。
背番号は「63」。22年はA.J.コール投手が着用していた番号です。
22年オフにA.J.コール投手、A.スアレス投手、S.マクガフ投手の3投手がチームを去り、大きく入れ替わりが発生する投手陣。ピーターズ投手にも当然ですが大きな期待がかかります。
本noteではディロン・ピーターズ投手がどんな投手か、そしてチームにどうフィットしていくかを考えていきましょう。
0.ディロン・ピーターズ投手のプロフィール
アメリカのインディアナ州出身のディロン・ピーターズ投手は、身長180cm、体重88kgとMLBの投手としては比較的小柄な左腕です。長髪でカッコいいですね。
1992年8月31日生まれの30歳。スワローズに残留しているサイスニード投手、オスナ選手、サンタナ選手と同級生。新たに加わるエスピナル投手も31歳の1つ差で、この年齢に固まっているのもチームに早くフィットさせる意図的なものかもしれません。
MLBで歴代最多7度のサイヤング賞を獲得したロジャー・クレメンス投手や、横浜ベイスターズにも在籍したスティーブン・ランドルフ投手らを輩出したテキサス大学 オースティン校出身で、2014年にドラフト10位でマイアミ・マーリンズに入団。
同年にトミー・ジョン手術を受け、2015年からマイナーリーグに出場。2016年にA+級で11勝を挙げるなど着実にステップアップすると、2017年9月1日にMLBデビュー。デビュー戦で7回無失点8奪三振と結果を残し、シーズン終盤ながら6先発を果たします。
キャリアハイは2019年で、12先発を含む17試合72イニングに登板し4勝4敗防御率5.38。通算成績では59試合34先発198.2回で13勝12敗、防御率5.30となっています。
2021年9月に腰痛、2022年8月に左肘の炎症で離脱するなど故障は年1ペースであるものの、大きな怪我はここ数年間患っていません。
マイナーリーグがコロナ禍で開催されなかった2020年にも1試合ですがMLBで登板しており、これは来日する外国籍投手では稀なことです。
スワローズとは推定年俸75万ドル(約1億円)。昨年契約した投手陣とほぼ同じ価格帯で契約を取り交わすことが出来ました。
1.ディロン・ピーターズ投手の投球成績
ここから具体的な成績・数字を見て行きましょう。
直近、2022年のMLBでの登板成績は次の通りです。
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4月~8月にかけて22試合39.1イニングに登板しており、シーズン前半戦ではしっかりと戦力に数えられてきたことを伺わせます。
4試合の先発登板がありますが、最長イニングは3.1回。主に2番手~3番手で複数イニングを担う形での登板が多く、9試合でリリーフとして2イニング以上投げています。
最後に先発登板した5月16日に2/3イニングで5失点を喫してしまい、以降先発としての芽が摘まれてしまいますが、それ以外の先発試合では8.1イニング1失点と結果を残しており、NPBに来日したのは先発投手のポジションに飢えているからではないかと推測しています。
過去3年間のMLBおよびAAAの成績はこちら。
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2019年の72イニングには満たないもののいずれの年も稼働しており、一定以上のクオリティを期待できる投手となっています。
AAAクラスでは20K%を超える奪三振能力を有しているものの、MLBでは21年19.7K%→22年15.8K%と下降傾向にあり、逆に与四球率や被本塁打率は上がってしまいました。
キャリア通算で9.8BB%と近年スワローズが獲得してきた投手の中ではやや多いですが、それ以上に日本での活躍には奪三振をどこまで取れるかが重要になってきそうです。
MLBで13勝12敗と1つ勝ち越し、マイナーリーグでは36勝23敗で、勝ち運にも恵まれているなと思います。
2.ディロン・ピーターズ投手の投球内容
続いては具体的な投球内容について見ていきましょう。
2022年、MLBで投じたボールは次のようになります。
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球種構成は一目見て先発向きだと感じさせるものです。
多くの投手が投球の軸とするフォーシームは投球割合23%で3番目、最も多く投じているのはシンカー(NPBだとツーシーム)で27%。いわゆるこの2つの速球系で50%の割合を占めています。スライダーやカーブといった第4・第5球種も10%を超える投球割合で、バランスの良い配分となっています。
フォーシームは平均149.5km/h。MAX152.7km/hでmin145.8km/hと振れ幅が少ない点はポジティブにとらえて良いでしょう。NPBの先発左腕で最も平均球速の速い投手が高橋奎二投手の148.7km/hなので、もし149km/hを超えれば十分すぎます。
※もっとも、平均球速152km/hだった左腕のディートリッヒ・エンス投手(西武)のNPBでの平均球速が147.7km/hだったことを考えると、日米での球速差は考えすぎない方がいいかもしれません。(NPBはスピードガンも球場ごとに異なりますし。ホークアイがついてるのも2球場だけですし。おすし。)
今シーズン投じている5つの球種を縦×横変化量でプロットした図がこちらです。
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かなり綺麗なプロット図となっていて、しかもリリースポイントも球種によるバラツキが少なく、個人的には非常にワクワクしています。
いつもなら触れないのですが、テンションが上がってしまったので1球種ずつ見て行きましょう。
※シンカーは直近の外国籍左腕投手で投げる投手が少ないためフォーシームの項目で一緒に説明入れます。
・フォーシーム/シンカー
ピーターズ投手のフォーシームは平均して12cmのシュート成分と42センチのホップ成分を持っています。MLBの平均と比べてシュート成分は少なく、真っスラ系のボールと言えるでしょう。
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直近2年のNPB来日外国籍投手で比べると、西武のエンス投手やオリックスのビドル投手と近い変化量となっています。
投げるコースはホームベースの三塁側の高めのゾーンが非常に多く、カウント球としても追い込んでからのウィニングショットしても投じています。右打者に対してもこのインハイのボールを有効に見せているようです。
特にエンス投手のフォーシームとは回転数も近しく、回転軸も151度と155度で非常に似通っています。エンス投手のフォーシームがNPBで多くの得点価値を生み出していることから考えると、NPBでピーターズ投手のフォーシームも有効である可能性が高いでしょう。
フォーシームに近い球速帯のシンカーも持っているのがピーターズ投手の強みで、この球種は平均して34cmのシュート成分と32cmのホップ成分を持っています。
シンカーはボール先行時に多く投じられており、制球に自信のあるボールなのでしょう。しかも左打者に対する投球の40%以上を占めており、空振りは少ないですが、ファウルや見逃しでカウントを稼ぎ内野ゴロでのアウトも狙えるボールで被打率はわずか.179となっています。
この後に記述するチェンジアップと変化量が非常に近いので、相乗効果が生まれる良い持ち球と言えるでしょう。
・チェンジアップ
ピーターズ投手のチェンジアップは平均136km/h、32cmのシュート成分と25cmのホップ成分を持っており、MLB平均や来日する外国籍左腕投手と比較的近しいボールとなっています。
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先のシンカーと変化量は近しい一方で球速差は約15km/hあり、空振りを取るのに非常に有効なボールとなっています。このボールで22年は球種別最多の10個の三振を取っており、三振を狙ったときのウィニングショットとして計算ができます。
右バッターに対しては最多の31%を占めており、インハイのフォーシームと対を成す低めのコースを狙ったボールとなっています。
チェンジアップのようなシュート成分の多いボールを左打者に投げることを苦手とする左腕は多いですが、ピーターズ投手は21年に28%、22年に9%投じており、打者の左右問わず投げることの出来るボールとなっています。
・スライダー
ピーターズ投手のスライダーは平均136km/h、10cmのスライド成分と2.4cmのドロップ成分を持っているボールです。
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MLB平均と比べて横の変化は少ない一方、縦の変化量は大きい落ちるボールとなっています。
この球種をピーターズ投手は18年~21年にかけてほぼ投げていなかったのですが、2022年に解禁する形となりました。
使用されるタイミングは限定的で、左打者に対して投手有利なカウントの時に多く投じられています。アウトコースで左バッターの空振りを狙っていると思われますが、空振り率は低く現時点では有効なボールとはなっていません。
・カーブ
ピーターズ投手のカーブは平均124km/h、30cmのスライド成分と26cmのドロップ成分を持った大きな変化球です。
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MLB平均よりも曲がり幅の大きなボールとなっていて、回転数も2900回転近い強度の高いボールです。
右打者にも左打者にも使われ、戦術までのボールと比べてピッチトンネルからは外れますがカウント球にも追い込んでからも有効なボールとなっています。
2022年にカーブの被打率は.263ありますが、長打は0本。緩急をつけるボールとしてNPBでも継続して投げていきたいですね。
ディロン・ピーターズ投手の投球内容を細かな球種まで含めて見てきました。
左右の打者に対する攻め方をざっくりまとめると次のようになります。
〈対右打者〉
・インハイのフォーシームと低めのチェンジアップで高低を攻める
・カーブと速いシンカーはゾーンに入れてカウントを整えていく
〈対左打者〉
・速いシンカーを多投し内野ゴロを誘う
・チェンジアップも使い、高めのフォーシームと高低で攻める
・スライダーは制球甘く改善の余地
いかがでしょうか。
球速帯も120km/h中盤から150km/hまで幅広く、やはり先発投手として見てみたいと思いませんか?特に速いシンカーで多くのゴロを築ければNPBで無双できる芽も見えてきます。
この章の締めとして動画を。
今年5月の3.1イニング投げた試合での4つの三振ですが、
・右打者へのアウトローのチェンジアップ
・左打者へのインローのシンカー
・右打者へのアウトローのチェンジアップ
・右打者への高めのフォーシーム
で奪ったまさに理想系の投球です。
これが常時できればローテーション確定でしょうね。
3.ディロン・ピーターズ投手に求められる役割
最後に、ピーターズ投手がスワローズで果たす役割についてです。
ここまで読んでいただいた方には伝わると思うのですが、この投手は非常に期待を寄せて良いと思います。
スワローズの先発投手は2022年、かなり苦しい状態でした。セリーグのチーム別成績はこちら。
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7つの勝ち越しはあるものの、消化した投球回はリーグで最も少なく、リリーフ投手に多くの負担をかけてしまっています。奪三振能力の高い投手が少なく、三振数ー与四球数で算出されるK-BB%もリーグワースト。
こちらは22年のスワローズのイニング数×QS率の表です。
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ベテランの石川投手もよく奮闘していますが長いイニングの消化は出来ておらず、高梨・原の2投手もシーズン通した安定感に欠ける感は否めません。
ピーターズ投手にはぜひ既存投手のお尻に火をつけ、競争を過熱化させるような一軍の先発投手として期待したいなと思います。
期待したいシーズン成績としては、一軍100イニングかつQS率50%です。
スワローズにとって先発は懸念事項で、そこを埋めてくれる可能性を秘めた投手をよく獲ってきてくれたなと。
イニング消化面で言えば、ショートイニングに慣れてしまい最初は長いイニングでバテてしまうこともあるかもしれませんが、サイスニード投手の一年目もまさにそうだったことを思えば私たちも長い付き合いを覚悟すべきです。
今年は最長3.1回でしたが、昨年はAAAで6イニングを投げた試合もあり、2019年にはMLBで7.2イニング投げた試合もあるので、決して投げる体力が無いということでもないと思っています。
さらにポジティブなことを言うと、2022年のシーズンスタートから8試合16イニング連続で無失点。この内容で先発投手の枚数として計算に入れて貰えなかったMLBの壁の高さを感じますし、多少なりとも不満はあったはずです。球種構成を見ても現時点で日本に来てくれる先発投手の中ではトップクラスと言って良いのではないでしょうか。先発確約の契約条項が付いていてもおかしくないなと思っています。
同じような球種を持っていて、かつアームアングルなど投げている姿勢が似ているなと直感的に思ったのは、NPBの投手ではオリックスの宮城大弥投手です。彼もNPBでは身長が低いですが、高卒2年目からローテーションに入り連覇の原動力となりました。
懸念事項は、スライダーを解禁した今年に肘の炎症を起こしてしまった点で、球速も21年よりフォーシームで3km/h程度上がっていることも含めて負荷がどこまで掛かっているか気になります。逆にそれが解消されていればほぼ心配は無いかなと。
スワローズにとっても今年は3連覇のかかるシーズン。黄金期の途上にあるチームで、先発投手のクオリティの向上は昨年からの純増分となります。
まずは日本のボールやマウンドに慣れ、MLBとの変化量の差などをデータと感覚で突き詰め、オープン戦から少しずつ登板を重ねて欲しいですね。
スワローズ公式から出ている本人コメントで締めましょう。
来シーズン、スワローズという家族の一員になれることを嬉しく思っています。また、ファンの皆さんとチームメイトにお会いできることを楽しみにしています。皆さんの文化と野球への忠誠心を受け入れることに、とてもワクワクしています。 素晴らしいシーズンにするために、しっかりと準備をして臨みたいと思っています。
Go, Swallows!
私もとてもワクワクしています!!!!(大声)
非常に楽しみにしています。ディロン・ピーターズ投手、読者のスワローズファンの皆様もぜひ応援していきましょう!!
Go, Peters!