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第8章 秋作で土づくり 〜キーホルガーデン編〜

 この一年間の自然的な栽培の締めくくりとして、キーホールガーデンを作ろうと考えた。次の春〜夏作に向けた土作りを同時に行いながらの秋冬野菜の栽培を行うのが狙いだ。


秋冬野菜の主役と脇役

 秋冬野菜の定番は、コスパ・作りやすさ・美味しさの面で玉ねぎ、ほうれん草、桜島大根、茎ブロッコリーの4つは欠かせない。正直、手間を考えるとキャベツなど重量野菜は買った方が安いと思う。

  だが、生物の多様性確保のため紫キャベツ、白菜、芽キャベツ、ニンニク、ワケギ、ラッキョウ、イチゴ、牛蒡、ニンジン、パクチー、パセリ、芽キャベツ、大阪白菜、こぶ高菜、ターサイ、エンドウ豆など色々な作物を植え付けてみた。

生育後のサイズを考え、畝の空いている隙間を埋めるように種や苗を植えていく。
奥に見えるのはミミズコンポスター。

 整然と一列に植えることはあまりせず、多様なものを畑のあちこちに植えている。日当たりや収穫時に手が届く範囲を想像しつつ、隙間を埋める形で植えていくと、自然と育つ場所が分散する形になる。
 収穫だけではなく、畑の景観も楽しみたいので、マム、クリスマスローズ、パンジー、ラベンダーで彩りを添えてみた。この辺りは毎年気分で変えていこうと思っている。

虫との戦いは半ば諦めた

 無農薬で播種や植え付けをしている場合は、「生物多様性の為に畑の虫に餌やりをしている」と割り切ったほうが精神衛生的にも良い。私の菜園の3大害虫であるダンゴムシ・カメムシ・バッタの食害がしばらく続いている。

 天敵役として期待するカナヘビがかなり増え、カマキリもそれなりに生息しているが、天敵になっていないのか、まだまだ頭数が足りないのか、3大害虫が幼苗に被害を与えることが多い。

 この夏はカメムシがナス科の野菜に大量に取りついて吸汁していたが、天敵のことを考えると殺虫剤は使いたくなかったので、これまでは料理用ガスバーナーで遠火にサッと炙って駆除してきた。
 タバスコや焼肉のタレなど色々試したが効かず、ガスバーナーが植物に影響が少なく一瞬でカメムシを効果的に駆除できることがわかってから、〆さばを炙る以外にもバーナーが大活躍した一年だった。

左:カマキリがいる株にはカメムシは寄り付かないようだ
右:アワノメイガ・タバコガ対策でLEDで畑をキラキラにライトアップしたのは楽しい思い出

 植え付けた野菜たちが生存できるかは害虫の状況次第だ。播種や定植時期は早からず・遅からずが大事なので、リスクヘッジのために夜が涼しくなり始める頃から1ヶ月間の4回に分けて毎週植え付けをすれば、どこかで生き残る可能性が高まる。

 実際に1年無農薬栽培をしてみた体感で言えば、野菜の幼苗の生存率は直播が一番低く0〜5割、小苗は3〜6割、大苗にすると一気に生存率が高まり8割くらいと考えたほうが良いだろう。手間を惜しまないのであれば、ホームセンターで買えるお手頃な連結ポット苗も一度鉢替えをして大苗に育ててから植え付けるといい。

とにかく日陰を作り出せ!

 来年の春作に向けた、一番の猛暑対策は日陰を作り出すことだと悟った。

 アプローチの一つは作物で立体的に日陰を作ることだ。適度に直射日光が遮られることで超高温にならず、地表に多少の被覆物があれば土壌水分が保たれるメリットが生まれる。また、足場を作り出すことで、害虫の天敵となるクモやカマキリが生息しやすい環境にもなる。

 猛暑の夏から秋までの間、常に元気に緑を保ち日陰を提供していたのは、ツルムラサキ、さつまいも、ゴボウ、パパイヤ、スーパーソルガム、ローゼル、ナス。
 屋外水耕栽培を除き、この7種だけが露地栽培で元気だった。彼らは畑に潜み、陰を作るもの。我が家のシャドーガーデンの七陰とでも呼びたい。

 野菜以外にも来年に向けて、日陰を作り出す植物の植え付けをおこなった。畑の所々にユリの球根を仕込み、直射日光のダメージを軽減する形で南向きに伸ばすようにイチジクの2年苗(カドタとゼブラスイート)を植えた。
 究極的には野菜・花・穀物・果樹・食べられる野草が混然一体となっているエディブルガーデン状態を作り出したいと思っている。

キーホールガーデンを作る

 私はどうしても来年の夏には里芋を上手に育ててみたいと考えていた。今年は猛暑と日当たりが良すぎたことで、乾燥してしまい一時的に枯れてしまったからだ。

 人工的に地形で日陰を作り出してみたらどうだろう。台湾では暑い時期に、畝立てをした後で畝部分ではなく日陰になるボトム部分で青梗菜を育てているらしいと聞いたことがある。

 どんなふうに畑に高低差を作るか考えていた時、私の脳裏にレソト式のキーホールガーデンが思い浮かんだ。人工的な山を作り、日陰になる北側斜面に作物を植えたら少しは涼しく、乾燥状態を免れるかもしれない。

キーホールの壁部分は杭を打ち、間に薪をはめ込む。
開口部は日当たりが良い南側に向けてみた。

 根菜エリアの芋を掘り、土をキーホールの周りに積んでいく作業をしていると、様々なものが土の中から出てきた。
 今年から脱プラを意識して使用をやめている黒マルチの切れ端が出てくるのをみると、マルチが改めて土に帰らないゴミであることを実感する。

 コガネムシの幼虫は見つけ次第、道路へ投げ捨て野鳥の餌にしていくだけだが、冬眠準備に入るカエルを掘り出した時は少し驚いた。
 こんなのは初めてだ。少しずつ害虫の捕食者が生息する環境が整ってきているのだろう。

発掘されたマルチの残骸と生きたカエル。
丁寧に芋掘りをしていたおかげでスコップで真っ二つにならなくてよかった。

 キーホール部分では雑草堆肥を作り、隣の超高畝のトマトやナスなどの果菜類の後片付けで出る残渣を堆肥化して根菜に使う。
 病害リスクを考慮しつつ畑の有機物を持ち出さずに循環させていくアイディア。

 畝に堆肥装置を組み込むことが栽培に悪影響を及ぼさないことはわかっている。すでに超高畝ではミミズコンポスターを3基埋設しており、野菜くず・コーヒーかすなどを処理しながら畝に養分補給しているが、大きな問題は起きていない。
 この山の麓には玉ねぎ、南側斜面には人参、北側斜面には里芋などを連作し続けていこうと考えている。

堆肥置き場と畝が合体した、マグマが流れ出る火山のような光景が出来上がった。

 ひたすら芋を掘り、キーホールの外側に土を積んでいくと小さな山にはなった。しかし、レソト式のように外周に石垣を積める高さにするには土の量が足りない。
 キーホールガーデンを作るには想像よりも大量の土が必要なことがわかった

 底に雑草などを敷き詰めて嵩上げしようか悩んだが、根菜類の栽培エリアにすることを考えると、又根やコガネムシの幼虫による被害が増えそうなため、これで一旦完成とした。
 水分保持能力に若干の不安要素が残るため、斜面の土砂崩れ防止処理も兼ねてほうれん草の種をまきカバークロップとしつつ、今後時間をかけてさらに高さを出し、キーホールガーデンとしての完成度を高めていきたい。

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