とある島国に住む女性の物語：ナラティブセラピー

💡ナラティブ・セラピーとは？
自分の経験を「物語」として語ることで、感情の整理をします。

とある島国に住む女性の物語

プロローグ

とある島国に住んでいる女性が、ずっと悩んでいることがありました。
それは、「言葉の圧が強い人の話を長時間聞いていると、恐怖が積もっていき、限界を超えると手足がビクっと勝手に動いてしまう」ことでした。

彼女は、なんとかこの反応を抑えようとしました。
足の裏に力を入れてみたり、足を軽く床から上げてみたり、全身に力を入れたり緩めたり、違うことを考えてみたり。
けれど、どの方法も効果がなく、「強くて長い時間の恐怖」 を感じると、どうしても手足が動いてしまいます。

そして、だんだんと 「少しの恐怖でも手足が動いてしまう」 ようになりました。
それと同時に、彼女の中で 過去の記憶が浮かび上がる ことが増えていきました。

浮かび上がる過去の記憶

それは、両親から受けた虐待の記憶でした。
子供の頃、彼女にとって ビンタ、蹴り、物を投げられる、物で打たれる、暴言を吐かれることは日常 でした。

しかし、強い恐怖として頭に浮かんでくるのは、特に2つの出来事でした。

1つ目の記憶。
彼女と母がテーブルの端と端に座っていた。
母は怒っていた。
そして、怒りながら、彼女の顔面に雑巾を投げつけた。

2つ目の記憶。
彼女が父に話しかけたときのこと。
食事中の父は、突然怒鳴り、箸で彼女の頭を叩き、さらに怒鳴った。

恐怖が積もっていく身体と心

2つの記憶の中で、彼女の脳は スローモーションの映像 を何度も何度も再生していた。
• 鬼のような形相の両親。
• 物を投げる、物で叩くとわかっても、逃げることができなかった子供の自分。
• その瞬間が迫るまでの、逃げたいのに動けない時間。
• そして、当たるまでのスローモーション。

彼女はあるとき、ふと気づいた。
目の前にいる 「言葉の圧が強い人」 を見たとき、自分の身体が勝手に動くのは、
「両親の姿と重なっていたから」 だったのだと。

目の前の人 ≠ 両親
それなのに、彼女の脳と身体は、「また逃げられない恐怖が来る！」 と誤認してしまう。
だから、どうしようもなく身体が勝手に動いていたのだと。

彼女が始めた「恐怖との向き合い方」

彼女は、「今の恐怖は、過去の恐怖とは違う」 ということを、少しずつ脳に教えていくことにした。
• 目の前の人が怒鳴ったとき、
「これは、あのときの両親ではない」 と心の中で確認する。
• 逃げられなかった過去と違い、
「今の私は、ここから離れることも、断ることもできる」 と自分に伝える。
• 身体がビクっと動いてしまっても、
「これは過去の記憶の反応で、今この場では何も起こっていない」 と言葉にする。
• 深くゆっくり呼吸し、足の裏の感覚に意識を向け、
「私は今、ここにいる」 と脳に伝える。

こうした小さな積み重ねを、根気強く続けた。

恐怖から自由になった彼女

ある日、彼女は気づいた。
以前なら 「恐怖が積もっていく感覚」 だけで身体が勝手に反応していたのに、
今は、恐怖を感じても、少し落ち着いて対処できている。

そして、長年苦しんでいた 「逃げられない恐怖」「いつ来るかわからない不安」 から、少しずつ自由になっていた。

過去の出来事は変えられない。
でも、「今この瞬間をどう生きるか」 は変えられる。

彼女は、恐怖に支配されず、自分の人生を歩んでいく ことを選んだ。

めでたし、めでたし。