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普段本を読まない自分が小説を読んでみた(9冊目『永遠の0』)

今回は、フィクション/戦争小説を読みました。

基本情報の記録

タイトル

永遠の0

著者

百田尚樹

出版社

講談社

あらすじ

「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。
そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。
終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。
天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。

読み終わって感じたこと

実は劇場でも見たことのある作品で、信じられないくらい号泣して感動したのを覚えています。

戦争のことではあるものの、ただ単にあの頃がいかに暗い時代であったかとか、どれだけひどいものであったかなど、作中にも出てきたような正義を気取ったジャーナリストやメディアが垂れ流すようなものではなく、リアリティーがありながら、人と人との関わりにおける奇跡や巡りあわせ、想いの本質がフラットに捉えられ、平和ボケした現代とは異なる特殊な時代であったことには変わりませんが、その時であろうと今であろうと愛するということのコアとなるところに触れられたように思いました。

臆病者、命を救ってくれた人、卓越した操縦(戦闘)技量を持った人・・・そんな印象の振れ幅が激しい人物がどのような感情を抱いていたのか、読みすすめていくたびにより興味深くなりつつ、どうすることもできない葛藤を抱えている様子に締め付けられ目頭が熱くなります。

ブルーレイ版のスペシャルボックスまで買ったことがある大好きな作品ですが、小説としても最高でした。

この本と自分の考えや経験との関連性

特攻隊員、神風特攻隊に関していえば、私の身内に特攻隊員はいませんでしたが、祖父母は戦争体験者でした。
祖父は徴兵されて戦地へ赴いたこともあり、断片的ではありますが当時の話を祖父母両方から聞いたことがありますし、白黒写真も見たことがあります。
祖父の話としては、
海上輸送中に敵に攻撃され、海に放り出されて2日近くさまようも、奇跡的に救助船に助けられたことや、実際の戦地では空腹で苦労したことなど、かいつまんでではありますが、いろいろと聞きました。
また、当時の祖父についての話を知っている人によれば、日本軍が無条件降伏後も、戦地へ赴いた人全員がすぐに帰ってくることはなかったようで、私の祖父もなかなか帰ってこなかったことから、家族としてはもう亡くなっているもんだとあきらめていたようでした。しかし、何日かして奇跡的に生きて帰ってきたこともあり、かなり衝撃的だったようです。同時に、無事に帰ってきたとはいえ、実の母でも「あれはだれ?」と言ってしまうほど痩せこけてしまった姿もまた衝撃的だったとのことでした。
ただ、生きて帰ってきてくれたとはいえ、そこから何事もなく生活していったかといえばそうでもなく、しばらく眠れない日が続いたようです。当時、家の近くには列車が通っており、夜に列車が通った際にその音を敵襲と勘違いし、飛び起きて警戒するようなことが続いたということも聞きました。
今でいえばPTSDになるのでしょう。
祖母からは、空襲警報が鳴るたびに、わずかでも外に光が漏れることの無いよう部屋の中を暗くし、爆撃機のB29に気づかれて爆弾を落とされないようにしていたそうです。真っ暗であることが怖かったと言っていました。
祖父母から直接聞いたことはほんのわずかなことだったかもしれませんが、この小説を読んでふと思い出しました。

総合的な感想

「戦争はするなよ」と、祖父母が言っていました。また、戦地の状況は詳しくは聞かなかったものの、祖父は「むごかった」と言っていました。
いわゆる平和主義者が声だけをあげるようなスカスカの言葉ではなく、今にして思えば、"どうか戦争が起こってしまわないように。孫たちが戦争で悲惨な目に遭ってしまわないように"という願いであり、祈りに近いものだったととらえています。
もう祖父母はいませんが、作品の中のような時代を生き延びた人達の残した言葉や情景といったあらゆる記憶は、どんなジャーナリストやメディアの主張よりも重く厚みのあるリアリティーとして、伝えていく義務と考えていく義務があるのだと思いました。
この物語を読んだとき、タイトルである『永遠の0』に、あなたはどんな意味を見出すのだろう。


今読んでいる本、感想予定の本など

『52ヘルツのクジラたち』『また、同じ夢を見ていた』『アリアドネの声』『俺ではない炎上』『正欲』『噂』『花屋さんが言うことには』
※今後読みたいものも含む

過去の読書感想

  1. かがみの孤城

  2. 方舟

  3. レインツリーの国

  4. 向日葵の咲かない夏

  5. 犯罪者

  6. アルケミスト 夢を旅した少年

  7. 早朝始発の殺風景

  8. 葉桜の季節に君を想うということ

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