UMU

BEAT CRUSADERSのベーシストとしてデビュー。現在はumu、umu&the pankyjive、モスキートーンズとして音楽活動を展開。イラストレーター、ラジオ番組パーソナリティなど多岐にわたり活動中。http://umuyashiki.com

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マガジン

  • それならそれでユートピア

    現代版源平合戦??

  • 遥か彼方のアブラード・ザ・ブッター

    UMUの日常を綴った役に立たないコラム集

最近の記事

これといって何もなかった歳末の大阪旅行(2)

共通の友達、カズオ君が合流したのは15時くらいだった。 どこに行こうかー?となって色々選択肢はあったけど、行ったことがない場所がいいというボクのリクエストからカズオ君の地元の尼崎に行くことになった。 出屋敷という尼崎のひとつ向こうの駅からめちゃくちゃ長いアーケードを歩いて尼崎駅まで歩いくと、途中で肉屋さんの軒先で売っているホルモンとか総菜屋さんの唐揚げとか色々あるから、食べ歩きしながらビールでも飲みましょうという流れになって尼崎に向かったわけなのですが、移動の電車の中で猛

    • これといって何もなかった歳末の大阪旅行(1)

      12月29日、楽しいことも煩わしいことも全てが終わった年末。 ボクと友人の根津くんは、かねてから約束していた大阪旅行にむかった。 朝イチの新幹線しか予約ができず、寝過ごして遅刻する恐怖から前日から徹夜で駅に向かい、私鉄を乗り継いで品川駅についた。 一番の帰省ラッシュの日だけあって、駅は大混雑であった。 定刻通りに新幹線は発車した。2人ともほぼ徹夜だったために新幹線で寝ればいいかと思っていたものの、乗り込んだ新幹線は博多行き。 眠り込んでいたら博多についてしまう。 そんな緊

      • それならそれでユートピア13(侮れない友達)

        「これでも一応、江戸の頃からやっとる宿やぞ。文化と伝統じゃどこにも負けへんで」 「この辺に他に宿がなかったから長く続いただけやろ」 「やかましいわ」 十津川沿いのその宿は大きくはなかったが、確かに十分な伝統を感じさせる重厚な雰囲気があった。 しかしながら、日本で一番過ごしやすい新緑の季節の土曜日なのに他に客はおらず、宿泊客が食事をする食堂の座敷には他にだれもいなかった。 タンクマンの幼馴染のその男は次郎といった。 普通だと思われた身なりも、タンクマンと比べたら普通なだけで

        • それならそれでユートピア12(モテそうでモテない男)

          朝8時を過ぎた頃、三ツ矢の電話が鳴った。 二日酔いをまだひきづってた状態で電話を受けると声の主は 「おはよー、三ツ矢ちゃん」 とテンションの高い声で漲っていた。 「あー、おはようございます・・・」 声にならない声で三ツ矢が答えると 「だめじゃない、朝からそんなテンション低いなんて」 「いや、朝だから低いんですよ」 「いやいや、朝から元気でいないと幸せが寄って来ないよ、ボクちゃん、いま幸せの絶頂期」 「はいはい。らしいですね。年下の彼女が出来てテンションが高いってみんな言っ

        • これといって何もなかった歳末の大阪旅行(2)

        • これといって何もなかった歳末の大阪旅行(1)

        • それならそれでユートピア13(侮れない友達)

        • それならそれでユートピア12(モテそうでモテない男)

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          それならそれでユートピア11(客の来ない名店)

          車は三重県の伊賀方面を抜け、奈良県に入った。 そのまま五條市に向かい、十津川村に入った頃には15時を過ぎていた。 目の覚めるような新緑の中を十津川沿いを真っ赤なオープンカーは颯爽と走っていた。山深いこのあたりの緑は関東の山々よりもちょっと色が濃く、少し鬱蒼としている。 ナチョスとサトシは昼飯を食べたら車内で適当に寝て、眠りから覚めると前日の酒も抜け一段と元気になっていた。 「ほんとにこんなところにあるのかよ?」 「めちゃくちゃ山の中じゃねーか」 「タンクマンのホームページ

          それならそれでユートピア11(客の来ない名店)

          それならそれでユートピア10(不穏な空気で街道沿いの名店へ)

          「うー、気持ち悪い・・・」 沈黙気味の車内でサトシが口を開いた。 「そんなに飲んだのか?」 「もうめちゃくちゃっすよ」 「ホンマやな、ワシもまだ酒が残っとるわ」 車は高速道路で四日市を過ぎたあたりを走っていた。気持ちの良い五月晴れと抜けの良い色のオープンカーは、客観的には実に爽やかな雰囲気に見えるのだが、それに反して車内の雰囲気はどんよりしていた。 「でも不思議なんすよね、酔い方が」 「え、サトシはいっつもあんな感じじゃない?」 「いや、確かに僕は酒に飲まれて記憶もなく

          それならそれでユートピア10(不穏な空気で街道沿いの名店へ)

          それならそれでユートピア9(挫折と後悔と未練)

          薄暗い部屋。 ベッドではない場所でナチョスは目を覚ました。 「どこやねん、ここは」 まだ酒が残っている。 目をこすりながら見渡すと、そこがホテルの部屋の床の上だということに気がついた。 薄暗いベッドの上から寝息が聞こえる。 誰かがいる。 訝しがってそーっとベッドを覗き込むと、、、寝ているのはサトシだった。 「なんや!お前かい!!」 見渡すとシーツの上には袋の空いた麻辣ピーナッツとあたりめ、未開封のコンソメのポテトチップス、赤いきつねが乱雑に置いてあり、床の上にはビールと

          それならそれでユートピア9(挫折と後悔と未練)

          それならそれでユートピア8(友達の死と情報収集)

          「なんだか疲れたなぁ」 「2人とも必要以上に声がでかいんだよな」 「しかもな、人の話を全然聞かへんやろ?あれはあきまへんで」 「会話というものを知らない田舎者だね、ありゃ」 「奈良の田舎もんだな」 「うるっさいわ。おれの悪口は言ってもええけど奈良の悪口はいうなや、あ、おれの悪口も言うな!」 「あとさ、会話の最後にグフって言うだよね」 「そうそう、なんなんだ、あれ?」 気をとりなおして入った居酒屋はこれまた名古屋めしとは全く関係ない渋い居酒屋だった。これといってなんの変哲もな

          それならそれでユートピア8(友達の死と情報収集)

          それならそれでユートピア7(焼肉は名古屋めしです)

          「すんまへーん!ホルモンとシマチョウ、あとマッコリ1本」 混雑と煙が充満する店内にナチョスの声が響いた。 昼に東京を出れば新宮には夜にはなるが、その日のうちになんとか到着する。ただ暇と金(を担当する者)がある3人はそんな考えはハナから持ち合わせていなかった。 「雄二さん、名古屋行きましょよ。味噌カツ、味噌煮込み、エビフライ、ほいで、、、味噌カツでっか。名古屋めしっちゅーやつですか?仰山ありまっせ!」「ナチョス、味噌カツ2回言ってるよ」 サトシが口を挟んだ 「うるせー!じゃ

          それならそれでユートピア7(焼肉は名古屋めしです)

          近況報告から考える本質と側(がわ)

          暑い。 夜になっても暑い。 なんなんだよ、マジで。 【近郊報告】 big the grapeは現在新曲が3曲が概ね完成していて、9月のライブハウスでの音源発売に向けてレコーディングをするぞという意気込みだけが盛大に高まっているものの、実際にはなにもやっていないというやってるやってる詐欺の真っ只中です。 結構いい曲ができているんだけどな。 髪型がそれはもう大変なジミヘンmeets全盛期のアンドレザジャイアントみたいな感じなので、曲もなんかそんな感じでいつもに増して荒々しい感じ

          近況報告から考える本質と側(がわ)

          それならそれでユートピア6(謎のタンクトップ男)

          新東名が出来たときにつくられた浜松サービスエリアは広くて清潔感があった。 そんな綺麗な場所から追いやられ、汚いものを隠すかのように一般のお客さんから見えないような場所に作られた喫煙所で、ナチョスとサトシはたばこを吸いながら一息ついていた。 コーラ号の中でもたばこは吸えるのだが、地面に足をつけてすうたばこもまた格別だと2人はワケのわからないことをほざき、たばこを吸わない雄二は聞いているのか聞いていないのかわからない表情で2人の脇に座りぼーっとしていた。 3人が喫煙所で佇んで

          それならそれでユートピア6(謎のタンクトップ男)

          それならそれでユートピア5(いざ出発)

          見事な五月晴れだった。 日本では梅雨に入る前のこの時期が一番過ごし易い。 土曜日のお昼にも関わらず環状八号線はそれなりに混雑していた。おそらくこの陽気に誘われてどこかに出かける人が多いのだろう。陽気と関係なく、いまどきおかしな宝探しに行くのはこの3人以外は考えられないが。 「マジでこのオープンカーで行くの?」 サトシは自信満々で目的地に向かう2人に対してちょっと不安げに言った。 「当たり前じゃボケー!このお天気にオープンカーって気持ちええやないか」 ナチョスがそう答えると

          それならそれでユートピア5(いざ出発)

          それならそれでユートピア4(巧妙な罠)

          翌日のお昼、ナチョスが雄二の家に行くと雄二はオレンジジュースを飲んでいた。 「お前、昨日サトシに具体的な話をしてなかったけど、大丈夫なのか?」 「大丈夫ですわ。こっからですよ、本番は。まぁ見ててください。ひとまずは雄二さんの車でサトシの家に行きましょ」 ガレージのドアを開けるや否や雄二が 「マジか!!」 と声をあげた。 「そーいえば、親父も兄貴も今日車使うって言ってたな。よりによって残ってんのがこんな車しかないのか・・・」 そこには派手なアメ車の真っ赤なオープンカーが停

          それならそれでユートピア4(巧妙な罠)

          それならそれでユートピア3(無料のお酒)

          サトシが立ち飲み屋に現れたのは8時をちょっと過ぎたあたりで、雄二とナチョスが2杯目のビールをちょうど飲み干した頃だった。 「なんすか?話って」 入店するや否や、2人に近づいてきたサトシは仕事帰りの疲れきった顔でちょっとだるそうに言った。 着ているスーツは1日の労働の成果を表わしているようにも見えるし、前の日から飲み続けていた結果、朝からすでにヨレヨレだったようにも思えるくらいのヨレぷりだった。 「ま、その前に飲みなや」 ナチョスがそう言うとサトシはビールを頼んで2人に

          それならそれでユートピア3(無料のお酒)

          それならそれでユートピア2(ナチョスの思いつき)

          昼下がり。 5月の下旬、暑くもなく寒くもない一番いい季節。 こないだまで花を咲かせていた桜の木々は新緑となり、日に照らされて葉っぱが緩やかな風にそよいで揺れている。 団地の脇をジョギングしていた重松雄二の電話が鳴った。 「へいー」 と電話にでると同時に雄二は太ももあたりに軽い衝撃を受けた。 「やっぱりここを走っていたか。いつもこの時間はこの辺を走ってますもんね。コンビニから帰る途中で後ろ姿が見えたんですわ」 後ろから自転車で軽く衝突しながらナチョスが言った。 雄二はイヤホン

          それならそれでユートピア2(ナチョスの思いつき)

          それならそれでユートピア1(追跡)

          「なんで追っかけてくるんだよ!?」 「ぼくらが逃げたからじゃないっすか?」 「いや、そういうことじゃなくて」 「知らない街で遠くからあいつだーってこっちに向かってきたら、なんだかわからないけど普通逃げるでしょ?」 「とりあえず、おれこっち行くからお前そっち行って。あとで宿で落ち合おう」 十字路をサトシは左に、雄二は右に走っていく。 2手に分かれた追手。 夜になると盛り上がるであろう、まだ人影もまばらな所謂夜の繁華街を裕二は上手く走って泊まっていたホテルに逃げ戻った。 サト

          それならそれでユートピア1(追跡)