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BtoBイベントマーケ 入門(にしたい)【前編】

はじめに

こんにちは。うみと申します。

私は経営管理クラウドを提供するログラスというBtoB SaaS企業においてイベントマーケティングを担当し、数百の企画を行いその中で「行ける」と思った100近い企画を世の中に出してきました。
その中で、ログラスのイベント・セミナーは多くのお客様から「参考になる」「クオリティ髙い」とお褒めいただくようになっただけでなく、受注案件の多くに絡むなど成果にもつながっています。

今回、私が新たなチャレンジに進むことになりイベントマーケを離れるので、これまで蓄積してきた経験を一気に言語化し、棚卸しするとともに皆様に共有できればと考えております。

ただ、このnoteの中で本当に伝えたいことは「メイン担当1.5人月で、1年に100近いイベントをやれちゃう環境だぜ!」ということです。「量質転化」を信じている私にとってこれ以上ないありがたいことだなーと思っているので、その感謝を持ちながら書き進めたいと思っています。

対象読者としては以下のような方を想定しています。

  • BtoB企業(特にSaaS企業)において既にイベントマーケティングを行っているが、なかなか成果につながっていないと感じている方

  • イベントマーケティングをこれからはじめようとしている方

  • 新卒・第二新卒でベンチャー・スタートアップへの入社を頭の片隅に入れている方

読者の皆様が初めてイベントマーケに取り組む方であっても「本noteを読めばなんとか完遂できる」を目指して書いていきます。

※1:あくまで「私個人の見解、弊社で成果が出たやり方」ということにご注意ください。
※2:前編は「企画」と「集客」を中心に、後編は「運営」を中心に書ければと思っていますが、想像以上に書くのに体力がいるため、いつ後編を書けるかはわかりません……!


本noteにおける「イベントマーケ」とは

BtoBにおけるイベントマーケというと、

  • 展示会:東京ビッグサイトや幕張メッセなどに各社がブースを出し、自社製品の紹介を行う大規模イベント

  • 外部イベント協賛:日経・東洋経済・文春などメディア各社が主催する「DX〇〇」「人的資本〇〇」のようなテーマが設定されたイベントに協賛し、リード情報の提供を受けるとともに自社製品の紹介枠があるイベント

のようなものもありますが、本noteで取り扱うイベントはあくまで自社が企画・主催するイベントを指しています。例えば以下のようなものです。

  • ウェビナー

  • オフラインの交流会

長くなりますが、少しでも皆様の助けになれば幸いです。また「もっと知りたい」「企画に関わってほしい」等ありましたらお気軽にお声がけください。
では、始めていきましょう!

序章:BtoBにおいてイベントマーケティングを実施する目的

まずは、BtoBマーケティングにおいて、イベントマーケがどのような役割を果たすのか、その目的を他の取り組みと比較して整理していきましょう。GPT様に聞いてみました。

GPT様の定義

BtoBにおける施策を大別すると、まずは見込み顧客を獲得する「リードジェネレーション」・見込み顧客との関係を深める「リードナーチャリング」・既存のお客様との関係を深める「カスタマーマーケティング」に分けられると考えておりますが、表にある通り、イベントマーケティングは形態によっていずれの役割も果たす施策です。
つまり、設計次第で新規リード獲得を目的とすることもできますし、商談獲得や受注貢献を目的とすることもできます。また場合によっては既存顧客との関係構築を目的とすることもできます。

私もその柔軟性を生かして、イベントマーケを設計するにあたっては全社の事業課題に合わせてイベントのポートフォリオを組み替えていました。
とはいえ、施策一覧を見ていただいてわかるようにリードナーチャリングを行える施策は限られているため、イベントマーケはリードナーチャリングが重要になる事業フェーズにおいて重宝されると考えています(実際弊社でも、リード蓄積が進んだタイミングで立ち上げることになりました)。

第1章: イベントの目的設定

本章からは実際にイベントの企画から実行まで、流れと詳細を解説していきます。

イベントマーケ施策の目的定義

まずは「イベントマーケ」という施策自体の目的を定義していきます。イベントマーケは複数のイベントの組み合わせが最終成果につながります。
序章で解説したように、まずは対象が「見込み顧客」なのか「既存顧客」なのかを定義します。

事業課題が「受注まで」にある場合:見込み顧客が対象
事業課題が「受注以降」にある場合:既存顧客が対象

そのうえで、前者の場合は「リードジェネレーション」なのか「リードナーチャリング」なのかを決めていきます。

事業課題が「リードの不足」にある場合:リードジェネレーション(リード獲得)
事業課題が「リード獲得から受注への歩留まり」にある場合:リードナーチャリング

もちろん、企業によっては両方が求められることもあり、その場合はリード獲得を目的としたイベントとナーチャリングを目的としたイベントを両方計画に組み込んでいくことが求められます。

イベントの種類と目的

イベントマーケ自体の目的が定まったら、今度は一つ一つのイベントに検討を移していきます。
ここでは2つの表をもとにイベントの「種類」と「目的」を決めていきます。

カスタマージャーニーマップ

まずはカスタマージャーニーマップです。どの企業でも多分一回はどこかで議論があり、作られているのではないかと思います。
このジャーニーマップを見ながら、「どのフェーズにいるお客様に提供するコンテンツなのか」、「どんなコンテンツなのか」を決めていきます。

カスタマージャーニーマップ雛形の一例

ここでいう「コンテンツ」について、イメージがつきにくいかと思いますので、参考例を挙げます。

  • 例)現状→モヤモヤの自覚

    • 顧客の認識:「現状の業務には特に何も思わない」→「今のままではよくない気がする」

    • 障壁:今の業務に疑問を抱かない

    • キーメッセージ:他社と比べて遅れていませんか?

    • コンテンツ:当該領域における先進事例を紹介し、向かうべき理想像を提示する

つまり、「どんなコンテンツなのか?」という質問に対する回答として、まず「先進事例紹介コンテンツ」という回答ができれば良いのではと思っています。

イベント種類早見表

もう一つの表はイベント種類早見表です。
これはどの形態のイベントがどんな目的に合っているのかを整理した表です。
この表はあくまで私自身が実施したことがある、知っている範囲のものでありまだ未完成ですが、そのイベントの目的を何に置くのか・どのフェーズの顧客に訴求しに行くのかを大まかに定めることができます。

第2章: 企画

それでは、ここからは企画に入っていきます。
前提として、企画力の習得は一朝一夕では難しく、とにかく数をこなすことと企画に慣れている方の横で思考をトレースすることでしか上達していかない類のものと思っています。

アウトカム設定

前章ではざっくりとイベントの目的を決めていきましたが、実際に成果を残すためには、しっかりと測定できる指標でアウトカムを設定する必要があります。

後工程も踏まえたKPI分解

私はイベントマーケの成果を「リード数×MQL(ターゲット)率×架電対象率×架電カバー率×コネクト率×商談化率×受注率」と置いていました。これらに対して、数字を置いてシミュレーションをしていきます。LTVや基準となるユニットエコノミクスの数字を置くことで一つのイベントに使える許容予算も算出できます。

※めちゃくちゃ試行錯誤して作ったイベントKPI・コスト管理シートも存在しますが、ここでは公開できないので、もし気になる方はお声がけください。

イベントマーケでは何を成果に置くべきか?

イベントというチャネルはもちろんコンテンツによっては新規のリード獲得にもつながるのですが、単にリードを獲得するだけなら正直もっとCPAの安い施策は存在します。上述の展示会もそうですし、東洋経済・日経といった媒体が主催するイベントに協賛する形の方が効率よく数を積めるかと思います。

ということもあり私はありがちな「MQL数」だけではなく、「商談数」をイベントマーケのKGIに置いていました。商談数をKGIに置くことで、必然的にインサイドセールスとの連携が生まれます。

マーケ指標のみで考えると

  • 他の施策でISのリソースが埋まっており、リードの後追いが行われず商談化しない

  • 「リードの質が低い vs ISが商談にできないのが悪い」という不毛な議論が生まれる

ということになってしまうからです。
なので、どちらかというとマーケのチームメンバーよりもISとのコミュニケーション頻度が高かったです(笑)。

一方で「動かせる変数が何か?」を把握する

ただ一方で、コネクト率など、マーケ担当ではコントロールしがたい数字も存在します。そのため、どこの数字を動かすのかは慎重に検討することをおすすめします。

私の場合は「商談数」をKGIに置きつつ、「リード数×ターゲット率=ターゲットリード数」と「商談化率」を自らの力で動かせる変数(=KPI)と考えてイベントを設計していました。変数を決めたら、その変数を好転させるための仮説を立てていきます。

例として獲得ターゲットリード数を増やすことを念頭に置いた際に私がこれまで考えてきた仮説を列挙してみます。

  • 変数)ターゲットリード数を増やす

    • コンテンツのターゲット拡張(裾野広めのコンテンツ)

      • 著名人を登壇者に立てる

      • 有名企業の方に登壇してもらう

    • 開催形式の変更

      • オフライン→オンライン

      • 単発ウェビナーをカンファレンスに変える

    • コンテンツのテーマ変更

      • 「人的資本経営」「PBR1倍割れ」など、トレンドを踏襲する

    • 広告文やバナーのクオリティ向上

      • タイトル・概要文のテストを重ねる

      • 強い企業名やロゴをバナーに入れる

      • バナー内に引っかかるKWを散りばめる

    • 集客手段の変更・拡張

      • 予算を拡張し媒体数を増やす

      • リード単価の低い経済誌に投資する

      • Webinar to Webinarで集客する

商談化率を高めたいと考えたときには以下のような仮説を考えました。

  • 変数)商談化率を上げる

    • コンテンツターゲットの縮小(裾野を狭め、自社プロダクトに近いテーマ)

      • 著名人ではなく、導入企業の事例セミナーにする

      • 数も取れて商談化率も高いテーマのハックがめちゃくちゃ難しかったです……。弊社で言えば「FP&A(Financial Planning & Analysis)」がそれです。

    • セミナー内での自社プロダクト紹介の徹底

      • 自社プロダクトの紹介をセミナーの最後にすると離脱が増えるため、Q&Aを残した状態でプロダクト紹介をする

      • 冒頭に持ってくる

    • 事前架電の徹底

      • 外部媒体経由で集客したリードに関して、事前にSalesforceにインポートできるようOpsチームと連携しておく

      • お申し込みいただいたお客様に事前架電を行い、ウェビナーへのご期待を伺ったうえでコンテンツをチューニングする

    • 架電優先順位付け

      • アンケートで自社プロダクトへの興味をお聞きし、「興味あり」とお応えいただいた方には優先的に架電しご案内漏れ・遅れをなくす

Why-Who-Whatの設定

イベントの目的・アウトカムと動かす変数が決まったら、いよいよコンテンツの企画に入っていきます。皆様ご存知の通り、Howから入らず、まずはWhy-Who-Whatから決めていきます。
イベントの目的・アウトカムとWhy-Who-Whatは連動しているため、必ずしも目的・アウトカム→Why-Who-Whatの順に決められるわけではありません。往復しながら、決めていきます。

Whyの設定

ここでいうWhyは、前章でご紹介したような「成果から逆算した目的」ではなく、「自社がイベントをやる大義」を指しています。
どの会社にも「ミッション」が存在しますが、これは会社の目的の一つである「利益の追求」とは別次元に存在するものかと思います。それと同様、イベントマーケティングにおいても成果とは別になぜ自社がこのイベントをやりたいのか、このイベントを通じて届けたいものを設定します。

例えば弊社のイベント施策を貫くWhyとして「経営企画ファンクションをエンパワーする・アップデートする」を据えていました。弊社のお客様でもあり、なかなか情報が出回りにくい経営企画という職種において弊社が発信活動を行うことで何か手助けできることはないかということを考えていました。
このWhyは毎回のイベントで必ずお客様に説明していました。

Whoの設定

ターゲットの決め方はさまざまな書籍で書かれている通りですのでここでは割愛しますが、いくつかの観点からターゲットを決めていきます。
重要なのは「インサイト」の違いによってターゲットを分けるということと捉えています。以下にターゲット設定の切り口となり得るものをいくつか列挙していきます。

  • 業界カット

    • 例えば業界によって困っていること・悩んでいることが違う場合には、その業界の方をターゲットにするのも一つです。このとき、タイトルや概要文には必ずその業界で使われている言葉を使います。

  • 企業規模

    • 業界と近いですが、ベンチャー企業と大企業では抱えている課題が異なるケースが多いため、ターゲッティングの切り口として使うことができます。

  • コンペリングイベント

    • 例えば「IPO」や「M&A」、「基幹システムの刷新」など、自社プロダクトが求められやすくなるタイミングがあるはず。このようなコンペリングイベントを控えた方に有用な情報を届けにいくコンテンツも一つの選択肢になってきます。

  • 部署

    • 例えば弊社システムの検討は「経営」「経営企画」「経理・財務」「情シス・DX推進」など複数の部署からスタートする可能性のあるプロダクトなため、各部署ごとに訴求を分けています。

    • 経営の視点と経営企画の担当社の視点は異なりますし、困っていることも異なります。インサイトが異なるならイベントも分ける(もしくは両者のインサイトが重なる部分のテーマでイベントを実施する)。

  • 検討フェーズ

    • ジャーニーマップに戻りますが、どの検討状況にある方を対象とするのかで、情報提供に寄せるのか、それとも製品紹介に寄せるのかなどコンテンツが変わってきますので、必ずこの観点は入れるようにしましょう。

Who設定のポイント

最終的にターゲットを決める際は上記要素を検討したうえで個別企業名(できれば個人名)までターゲットを落とし込むことをおすすめします。
実在する個人名まで落とし込むことで、「あの方、本当にこれ興味あるかな?」という視点でダブルチェックでき、ターゲットが空想にならずに済むと考えています。
私はイベントマーケをやる前にISをやっていたかつイベントマーケ担当となってからも交流会でお客様の一次情報に触れていたので、ある程度「あの人」をイメージしながらコンテンツを作っていました。

Whatの設定

続いてWhatの設定に話を移していきます。

イベントが終わった瞬間、お客様になっていてほしい状態

Whatを構成する要素の一つが「イベントが終わった瞬間、お客様になっていてほしい状態」です。

ユーザベース酒居さんのこちらのnoteでは「テーマ」という言葉で説明されている概念ですが、これは先ほど設定した「Why/Who」に対して「このイベントでどこまで・どうやって到達するのか?」を定義することと理解しています。

私もここは少し理解に時間がかかったので例を挙げてみると、「経営企画のファンクションアップデート」というWhyに対して、とあるイベントでは「FP&Aの概要が理解できている状態」と設定しました。
経営企画の中でも数ある話題のうち、「FP&A」の「概要まで」を理解いただいている状態、と決めることで必要なコンテンツが見えてきます。

インサイト

Whatを決める際のもう一つのベースは「インサイト」です。
「インサイト」を私個人の見解で改めて言語化すると、「As is / To beのギャップを埋める方法の中でお客様が気づいていないもの、意識していないもの」かなと思います。
これをもっと感覚的にいうと、ターゲットが「確かに聞きたいわ」「そんな話があるのね」となるものです。

例えば経営企画の皆様には「横のつながりが少なく他社の情報が入ってきにくい」という特徴がありつつそれが当たり前になっており、このことが普段意識されることはあまりありません。
だからこそ、「FP&Aの概要が理解できている状態」に持っていくために、あえて教科書的な話よりも他社の事例の方が興味を持っていただけるのではないかと考えました。

また、毎回好評の「経営企画の交流会」は経営企画の皆様にとって「普段他社の経営企画と交流する機会ないから行ってみたい」というインサイトを突いたものになっているのではないかと思います。

もう一つ例を挙げると、情報収集をする際に「自分たちより少し先を行く企業の事例が知りたい」というインサイトも存在すると思っています。BtoBのスタートアップに所属する私がtoCのメーカーのマーケティング実務についてのセミナーがあったとして、あまりピンとこなかったりするのと同様ですね。

つまり、ターゲットと近い属性、近い規模の先進事例こそが本当に興味をもっていただけるコンテンツになると思っています。

※答えは自分の中にはない

Whatを定めていく際の注意点として、自分が良いと思ったアイデア・企画は必ずしも良いものとは限りません。

私の場合は

  • オフラインの交流会でお客様と直接話す

  • 社内のドメインエキスパートに企画案をいくつか提示してみて、「行きたい」と思ったものがどれか聞いてみる

  • 実際いくつかのタイトル案で広告を出してみて、反応を見る

といった形でインサイトを突けているのかを確認していました。

コンテンツ作成

Who/Whatが決まったら、コンテンツ作成に入っていきます。
ここでは一番ステークホルダーが多い「事例ウェビナー」を例にお話ができればと思います。その他自社登壇や交流会等のイベントの作り方についてはご相談いただけますと幸いです。

1.登壇者の決定

自社登壇以外のイベントであれば、まずは登壇者の選定が必須です。ぶっちゃけ、ここが一番ボトルネックになります(笑)。
ターゲットのインサイトに刺さりそうな登壇者の方にあらゆる手段を使ってリーチしにいきます。ここは執念とアイデアの世界です。例えば以下のような手段でお声がけをします。

  • XやLinkedinのダイレクトメッセージ

  • 講演依頼.comなど有識者とコネクトできるサイト

  • 自社のサービス領域の有識者の方とつながらせていただき、数珠つなぎでご紹介いただく

  • 社内メンバーの前職等のリファラル

  • オフラインの交流会でお誘いする

  • セールスやCSを通じたお声がけ

登壇を依頼する際は基本中の基本ながら、以下のような内容を依頼文に盛り込みます。

  • どんな会社なのか(不信を突破するため)

  • お声がけした理由(Why you)

  • 考えている企画概要

  • 一度お話しさせていただきたい旨

ここで企画概要を詳細に書きすぎると「違うな」となったときにリカバリーできません。登壇者の方と一緒にイベントを作っていくので、まずはお話しさせていただく機会をいただくことが目的です。

2.登壇者の方とのMTG

登壇者とのMTGはそれだけでnoteを書けるくらいになってしまうのでここでは詳述しません。ただし、「普段からイベント登壇をされており登壇慣れしている方」と「普段は登壇等ほとんどしない方」で注意すべきポイントが変わってきます。

前者の場合は登壇自体へのハードルが低く、過去登壇を参考にしながらコンテンツの落とし所を見つけやすいため難易度としては下がります。一方でお忙しい方が多く、初回MTGから2回、多くても3回でコンテンツまですべてFixできるよう心がけていました。

  • 初回MTG:背景・概要の説明・登壇許可・講演内容の大枠のFix

    • 過去の登壇履歴や発信を読み込み、その方の考えと自社の発信したい内容の共通項をしっかりと提示する

    • 共感いただけたのであれば、自社のプロダクトにも一言添えていただけないかご相談する

    • 口頭ではメッセージと大枠の構成で合意し、詳細は文面にして議事録でお渡しする

  • 最終MTG:作成いただいた資料の読み合わせと確認。自社モデレーターも同席

    • 資料を踏まえ、初回MTGの内容が反映されていない部分等があればすり合わせ

    • 全体の流れを一通りさらう

普段は登壇等ほとんどしない方の場合、登壇いただくハードルが高いので、Why youをしっかりお伝えするとともに登壇の懸念点を取り除くコミュニケーションを分厚く行います。資料も基本的にはゼロから作成いただくケースが多いため、テンプレートや型をお伝えしつつ、最低3回のミーティングを行う中でFixしていきます。

私は当初、初回MTGにおいて冒頭から一方的に概要を話してしまっていたのですが、そもそも登壇を許諾していない段階で既定事項のように話を進められるほど苦痛なことはありません。
また営業と同様、ヒアリングなしにズレた提案をしてしまうとその時点で登壇は実現しません。この場を設けていただけた理由・どのような形であれば登壇へのご負担が少ないか等を伺いながら、どのような形であれば前向きにご登壇いただけるか探っていくのが基本スタンスです。

  • 初回MTG:背景・概要の説明・講演内容の方向性頭出し・登壇許可

    • ヒアリングベースに、懸念を払拭するコミュニケーションが中心。(前向きに検討いただける方も多い)

    • お取り組みの中で、「めちゃくちゃ大変だった・苦労した」等、感情が大きく動いた取り組みをお伺いする

      • ここに知見や独自のPDCAが眠っているケースが多い

    • その中で自社として伝えたいメッセージと被る部分を見つける

    • 話した内容をもとに、構成レベルで提案しFMTを提供する

  • 2回目MTG:ドラフト作成いただいた内容をもとに、コンテンツをブラッシュアップ

    • 一通りのストーリーをお伺いする

    • 強調していただきたい部分、肉付けいただきたい部分の合意

  • 3回目MTG:作成いただいた資料の読み合わせと確認。自社モデレーターも同席

    • 資料を踏まえ、初回MTGの内容が反映されていない部分等があればすり合わせ

    • 全体の流れを一通りさらう

3.タイトル・コンテンツ構成の作成

集客の章でもお伝えしますが、やはり集客の肝はタイトルです。その点では中身ありきでタイトルを合わせに行くのではなく、「こういうコンテンツを作るんだ」という意思込めの意味で先にタイトルを作る方が良いと思っています。

タイトル

事例ウェビナーにおいては、タイトルは「登壇者の企業名」「登壇者の肩書」「テーマ」が含まれている必要があります。当然多くの場合企業名が集客の大枠を決めるのですが、「テーマ」が秀逸だとそれだけでも十分な集客につながります。

あくまで私が検証してきたタイトルの中で、伸びたテーマに共通する点は以下のようなものでした。

  • そもそもそのテーマに関する書籍やWeb上の情報が少ない(新しい)

  • 「正解」がなく、各社でやり方が異なる

  • 「組織間のパワーバランス」や「コミュニケーション」といった、外向けに文章として残せない内容

このあたりはやはり経営企画の皆様にとって、他では手に入らない非常に気になる情報になりえるのかなと思っています。
ウェビナーでなく恐縮ですが、めちゃくちゃ集客が伸びたイベントの一つに、以下のイベントがあります。

バナーには当日のアジェンダを散りばめたのですが、来ていただいた方になぜ来てくださったのか聞いて回ったところ

  • そもそも正解のない「予算策定」の正解を探そうというテーマが気になった

  • 「ボトムアップ予算とトップダウン予算の調整」というニッチだが各社で色が出る論点が気になった

  • 「最高の予算フォーマット」がめちゃくちゃ気になった

といった声をいただきました。

タイトルに関してはインサイトとセットで検証することが非常に重要です。単に大量に作ってとりあえず広告で良いものを残す、という検証方法を取るにしても、「なぜそれが良かったのか?」を考察したり聞きに行ったりしないとラーニングとして残らないので注意です。

コンテンツ構成

ここでいうコンテンツ構成とは、登壇者MTGにて提案するドラフトにもなるものです。
コンテンツ構成は、イベントタイプ(事例なのか?著名人講演なのか?)によって一定程度、型化できるものだと考えています。
理由として、構成はあくまで情報を伝わりやすくするための順序に過ぎないためです。事例を伝えるのであればそれに適したフォーマットがあり、自社のプロダクトを伝えるにも一定のフォーマットを作ることでクオリティのブレを小さくできます。

重要なのは「イベントが終わった瞬間、お客様になっていてほしい状態」に対して今どこにいるのかをご認識いただき、このコンテンツを通じてここまでいけます、という全体像を理解いただくことと思っています。

例えば事例タイプのイベントであれば、以下のような構成がもっとも情報を伝えやすいフォーマットなのではないかと思います。「テーマ」には、例えばFP&Aで言えば「組織」「IT」「業務フロー」「人材」というような取り組みの単位を当てはめていきます。

  1. As is(改善前の状況)

    1. テーマA

    2. テーマB

    3. テーマC

  2. To be(改善後の状況)

    1. テーマA

    2. テーマB

    3. テーマC

  3. As is / To beのギャップを埋める取り組み

    1. テーマA

    2. テーマB

    3. テーマC

この論理構成は一度自分で作ってみたら必ず壁打ちさせていただくようにしていました。自分では気付かない論理破綻も存在するので。

企画をずらす

本章の最後に、「企画をずらす」ということについて触れたいと思います。

師匠の盛川さんのnoteにも記載がありますが、簡単にいうとWho/Whatは決まったけど、それをどうお客様に届けるのかという話です。ここにも成果を高めるレバーがあります。

イベントの目的設定の部分で以下のようにどんな種類のイベントがあるか、について触れましたが、他にもより多くのターゲットに関心を持っていただくための企画のずらし方を検証してきました。

以下にイベント種類以外での企画ずらしのポイントの例を挙げてこの章を終わりたいと思います。

  • 場所をずらす:プレミア感のあるホテル等に場所を移すだけで一気にエクゼクティブ層に届けられるイベントを構想できたりする

  • 日時をずらす:土曜日にやってみるなど。平日の夜だと忙しくて来れないが非常に勉強熱心な方々に集まっていただけた

  • 規模をずらす:「カンファレンス」「ウェビナー」「オフライン」など、どんな箱を用意するかによって規模が変わり、成果も変わる

  • 主催をずらす:「親和性のある企業との共催」「競合との共催」で一気に新規の方にアプローチを広げる

    • 競合との共催は様々な事情で弊社ではやったことがないのですが、こちらのセミナーなんかは、現在競合がいない商談中企業に競合の存在を認識されるリスク等があるものの、検討層に一気にアプローチできるすごい発想だなと感動しました。

第3章: イベントのプロモーションと集客戦略

ここまで、イベントの企画について記載してきました。ただ、結局イベントマーケの成果は集客次第ということで、手を抜かずに書いていきます。

集客の前提

集客単価

全マーケ施策で共通かとは思いますが、集客においてまず考えなければならないのが、「費用対効果が出ているのか?」ということ。
前述のとおり、私の場合は「商談数」をKGIに置いていましたので、「商談単価」がその費用対効果を見る指標になります。一方、集客の調子を見るにあたってはその手前の「新規MQL単価」で見て広告をさらに踏むのか、止めるのかを判断していきます。

自社イベントチャネルは立ち上げ段階でしたので、いったんは他チャネルを参考に商談単価とMQL単価の基準を算出します。式はシンプルで「商談単価=LTV×受注率」と「新規MQL単価=商談単価×商談化率」で、「このくらいまでなら踏んでもよい」という水準感を把握します。

予算

集客の許容単価を下回っていれば無限に投資できるかというと当然そうではありません。予算上限があります。

私が担当していた時のイベントチャネルの意義は商談生成に置いていましたので、この限られた予算内でいかに受注につながる商談数を最大化できるかという目線で予算のアロケーションを行っていきました。

基本的にオフラインイベントで基準CPAを下回ることは非常に難しいので、オンラインイベントに予算をアロケーションしていくことになるケースが多いと思います。
一方でオンラインイベントはその性質からオフラインに比べると商談化率は低くなる傾向があるため、オンラインとオンラインをうまく組み合わせ予算を作り、商談化率や予定集客数をシミュレーションしながら四半期ごとに予算を作っておりました。

集客チャネル

集客において一番重要なのは当然コンテンツ(タイトルとリード文)なのですが、より良いCPAでターゲットを集客する点においてチャネルの話は欠かせないかなと思います。

もちろん、イベントチャネルとして成果が出ていること、そして許容CPA範囲内に集客ができている前提で、ありがたいことにさまざまな集客チャネルにチャレンジさせていただきました。
以下にチャレンジしたチャネルを列挙していきます。成果がどうだったかに関しては商材次第なので参考程度でお願いいたします。

見にくくてすみません

オフラインイベント集客のポイント:社内を巻き込む

特にオフラインイベントは前述のとおり集客が難しく広告だとCPAが合わないことが多いので、いかに社内を巻き込んで、IS・CSの集客していけるかが肝になってきます。

社内の巻き込み方については正直なことを言うと私はあまりうまくできなかった自負があります。
ただ、間違いなくQuick Winを積み重ねていく中で、「呼ぶと成果になる」というパーセプションを社内に作れることと粘り強くコミュニケーションし続けること、そして社内の皆さんのアクションハードルを極限まで下げるということが重要です。

例えば

  • 集客用のマニュアルを準備する

  • 集客用のメールテンプレートを作って展開する

  • 実施意義や過去の実績、過去の実施風景の動画を作成するなどして、セールスやCSの定例で告知させていただく

  • 一人一人の集客声かけリストを作成し、隣の席に行って少し時間をいただき一緒にやっていただく

    • これはセールスの方々にヒアリングしたところ「依頼タスクとして頭の片隅に残るよりもその場で処理してしまったほうが良い」というご意見をいただいたので、実施

オンラインイベント集客のポイント:媒体拡張

イベントチャネルのボトルネックはどこまでいっても集客です。またどの媒体も広告を打ち続けているとどうしても新規のお客様に会える確率は落ちてきます。
当時は事業状況上、イベントチャネルにも新規のMQL獲得・商談生成が期待されていたからこそ、「媒体拡張PJ」と銘打ってさまざまな集客チャネルの可能性を探ってきました。

その結果はすでに上の表でお伝えしている通りなのですが、以下のような視点で各媒体を比較します。もちろん出稿するコンテンツによって効果は変わるため、できるだけ各媒体複数回ずつ、異なるコンテンツで出してみて横比較しながら特徴を探っていきます。

  • その媒体が含有するユーザーの企業属性・役職・部署

  • 登録動機(セミナー系を期待しているのか?記事を期待しているのか?)

  • 相性の良いコンテンツ

  • MQL含有数(新規率に影響)

結果、「新規MQL単価」が合っているかが投資継続の判断基準となるのですが、「この媒体は○○という特性があるので○○系のコンテンツが相性いいのではないか?」「この媒体の新規率の推移をみるとこのくらいで新規の方と会えなくなりそう」といった仮設を持ちつつ検証することで、3か月でかなりの数の新規媒体の検証ができたと思っています。

クリエイティブ

チャネルに加えて、集客に影響を及ぼすのがクリエイティブです。「コンテンツ」の章でタイトルについては触れていますので詳細は省きますが、大きくクリエイティブとは以下の3点を指します。

  • タイトル

  • バナー

  • リード文

リード文とは、LPのイベント紹介文のことで、どんなイベントなのか、どんなコンテンツ内容なのかが書かれた部分のことです。

バナー

バナーは広告やメールにてお客様の目に最初に触れるクリエイティブですので、しっかりこだわっていました。基本的に弊社の最強デザイナーの方とすり合わせながら要件定義していきます。
要件定義MTGには以下の項目を持ち込みます。

  • タイトルとイベントの概要

  • 登壇者とその方の企業(バナーに登壇者の企業のロゴを載せることが叶わないケースも多々あるため、少なくとも所属企業のコーポレートカラーをバナーに用いて認知してもらう)

  • 参考クリエイティブ

    • Pinterestで他社のセミナーバナーを探し、参考になるデザインイメージを持ち寄る

  • その他要望

    • 出稿する媒体によって入稿サイズが異なるため、必要なサイズはこの時点で頭出しする

    • コピーの中で、どの文字を強調するか

    • バナー内にちりばめたい要素

  • 納期

リード文

リード文は、実際にお客様がそのイベントに参加するかどうかを決定する文章であり、その判断に必要な情報をしっかりと載せていくとともに、魅力的に見えるよう訴求していきます。

新しい、古いみたいな議論もありますが、基本的には「PASONAの法則」に従って記載します。

  • 「PASONAの法則」とは……神田昌典さんが提唱したフレームワークで、LP等で顧客の登録・購入を促す際の文章の書き方

Problem&Affinity:お客様のAs is / To beのギャップを埋める方法の中でお客様が気づいていないもの、意識していないものを見つける(インサイトを突く)必要があります。この問題提起の具体性が集客に大きな影響を与えると思っていますし、裏返すとここがしっかり書けないイベントはふわっとするケースが多かったなと思います。ドメインエキスパートに直接壁打ちして、行きたいと思うかを率直に聞きます。

例)リクルート様とのFP&Aに関するイベント

Solution:イベントの概要となぜそれが解決策になるのかを説明します。なぜその登壇者・登壇企業がそのテーマについて話せるのか、先進的なのかをしっかり伝えることで、参加する価値のあるものか否かを理解いただけると思っています。

例)リクルート様とのFP&Aに関するイベント

Offer:ターゲットを広げるイメージで書いています。ビジネスにおけるターゲットの考え方の定石は「絞る」と習ってきましたし、上記でも「バイネームがイメージできるくらいターゲットを絞る」とお伝えしたのでやや直感に反するのですが、

イベント自体のコンセプトを考えるとき:熱烈に良いと思っていただけるコンテンツにするため、ターゲットを絞ってその人にとって最高のイベントコンセプトを考える

集客するとき:そのコンセプトを、より多くの方に「これ自分のためのものかも」と思ってもらえるよう、さまざまに言い換える

という整理をしています。

例えば、世界中にサポーターを抱えるFCバルセロナのドキュメンタリーコンテンツがあったとして、内容は全世界のクレ(バルセロナのサポーターの愛称)に刺さるものであったとしても、スペイン語だけで宣伝されていたら日本人には刺さらないかもしれません。

同じように、人によって同じコンセプトであっても普段使っている「言語」は異なるので、さまざまな角度や粒度、視点でそのコンセプトを語る必要があると考えています。

具体的な内容としては以下のようなものです。

  • ブレッドで、ターゲットに刺さりそうな言葉を羅列する

  • オフラインイベントだと、懇親会の雰囲気や来る人

  • 資料の一部を見せて、これをプレゼントします、なども有効

  • 来場者特典

例)リクルート様とのFP&Aに関するイベント

Narrow down:Offerの強化のイメージです。「今このセミナーを見る理由」を強化するため、「あなたのためのイベントです!」をアピールします。

例)リクルート様とのFP&Aに関するイベント

媒体ごとの調整

検証においては、「できるだけ少ない出稿回数で結論を出す」は非常に重要です。そのため、上記で挙げた以下のような変数を、今回は何を検証しているのかを意識しながらつぶしていきます。

  • その媒体が含有するユーザーの企業属性・役職・部署

  • 登録動機(セミナー系を期待しているのか?記事を期待しているのか?)

  • 相性の良いコンテンツ

  • MQL含有数(新規率に影響)

ポイントは、うまくいかない(集客数が伸びない)としても、「うまくいかない」という結論を出すこと。そうしないといつまでたっても「実はあれ行けるのでは?」という楽観が残ってしまいます。

前編の締め

前編では、目的設定・コンテンツ・集客について書いてきました。文字数が多くなってしまい大変恐縮ですが、ぜひ参考にしていただけましたら幸いです。

後編は近い将来、イベント本番の運営やオペレーション・フォローアップや計数管理といった運用面についてお話できたらと思います。

最初にも書きましたが、イベントマーケターの方とお話する中でも、ログラスのイベントチームの期間あたりの試行回数はとても多い方だと確信しています。

しかしその裏側には

  • Opsを高品質で助けてくださる業務委託の方

  • 質の高いクリエイティブを作ってくださるデザイナーの方

  • 兆しのあるものにしっかり投資するというログラスの文化

  • ユーザベース酒井さん(https://note.com/jmagicpie)をはじめとする先駆者の皆様の取り組みとその学びのシェア

といった環境に支えられていることも忘れていません。本当に感謝です。

だからこそたくさんの試行の中で量質転化ができ、たくさんの知見を積み上げられたと思っています。

もちろんこれはマーケに限った話ではありません。どの部署でもたくさんの試行回数に基づく知見の蓄積が進んでいますし、ご入社いただいた方皆さんにそういった機会が回ってくるのが今のログラスです。


そんなログラスでは、現在一緒に働いていただける方を募集しております。
お気軽にご応募、カジュアル面談のご希望などお待ちしております。

【イベントマーケター】
https://hrmos.co/pages/loglass/jobs/1813462408235663396106

【新卒採用】
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【中途採用】
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うみ
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