あんこの国では、今…… ( 最終回 あんこのつぶつぶちゃん と コシちゃん の きのうの つづき )
まだ夜も明けぬうちに、ふたりは、おもちの国を出ました。
ふたりの王子は、これまでにないスピードで、馬を走らせました。
「つぶつぶちゃーん、今行くよー!」
「コシちゃーん、待っててよー!」
月明かりが、あんこの国を照らしていました。
「シュガー王子とソルト王子が来るまで、このあたりで待とう」
「ああ。以前、ここで、見かけたんだ」
「あ、来たぞ」
「よし、そっと、後について行こう」
「いや、待てよ。
彼らが、つぶつぶちゃんとコシちゃんに会う前に、話をつけた方がいいかもしれない」
「そうだな、そうしよう」
「待てよ、シュガー王子、ソルト王子」
「なんだよ。誰かと思えば……。
ここで、何してる?」
「それは、こっちのセリフだよ。
そっちこそ、何を企んでるだ!」
「企むって、なんのことだ?」
「ちょっと、ちょっと。
騒がしいわね。こんなに朝早くから、なあに?」
「なんなの、なんなの?」
「あっ、つぶつぶちゃんとコシちゃんだね。このあいだの返事、考えてくれた?」
「僕のパートナーになる決心は、ついたかな?」
「私は、おもち王子のパートナーになりたいわ」
「私は、あられ王子のパートナーになりたい」
「えっ、それはどうして?」
「パーティーで、ひと目お見かけしたときから、おもち王子のことしか、考えられなくなったのよ。
コシちゃん、ごめんね。
あら?あなたは、シュガー王子も、好きって言ってたよね」
「シュガー王子は、パーティーでお会いしたとき、瞳の奥に冷たいものを感じたわ。
だから、つぶつぶちゃんがパートナーにならないように、
私もシュガー王子が好きだなんて言ってしまったのよ。
嘘ついてて、ごめんね
私が、ほんとうに好きなのは、あられ王子よ」
「コシちゃん、僕を選んでくれて、ありがとう」
「いいえ、私のほうこそ、お礼を言わなくちゃ。ときどき、あんこの国に危ないことが起きないように、見ていてくれたでしょう。あん子ちゃんから、聞いてたわ」
「おいおい、どうなってるんだ。
それじゃあ、僕たちは、振られたってことなのか」
「そうみたいだな……。
悔しいけれど、今日のところは、引き下がるとするよ。
だけど、あきらめないからな!」
そう言うと、シュガー王子とソルト王子は、足早に、去っていきました
「よかった。これで、ひと安心だ。これからは、おもちの国で、なかよく暮らそう」
「ごめんなさい、それはできないわ。私たちは、あんこの国が大好きだから、
ここを離れたくない。ずーっと、ここで暮らしたいと思ってる。コシちゃんも、そうよね」
「もちもち、もちろん!」
「パートナーには?」
「なるなる」
「なりたい」
「うーん、そうか」
「そうなんだ……」
「わかった!それじゃあ、こうしよう。僕たちがここに来て、いっしょに暮らそう」
「そうだね。それがいいね、いいいい」
「ほんとうに、それでいいの?」
「後悔しないの?」
「それが、いちばんいい」
「ふたりがしあわせなら、
僕たちも、しあわせ」
そういうわけで、
おもち王子もあられ王子も、
あんこの国で、
暮らすことになりました。
「おもち王子の方が、やさしいわ」
「あられ王子の方が、かっこいいわ」
「つぶつぶちゃんの方が、かわいいよ」
「コシちゃんの方が、ツヤツヤさ」
「あー、
もう、なに、これ!?」
あん子ちゃんは、ため息をつきました。
笑いながら、
ね
( 完 Fin おしまい 終 )
☆彡 あん子ちゃんの ひとこと日記
「私の王子様は、
どこにいるのぉぉぉぉぉー!」