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『この世界の片隅に』と私

『この世界の片隅に』という作品は原作と映画版でずいぶん受ける印象が違う。
原作漫画がすずという女性の自立をテーマとしているのに対し、映画版ではそこを上手く切り取って戦時下の日常物語に落とし込んでいるのである。

映像化されることですずの深層心理の変遷がわかりづらくなってしまっていると感じる。
彼女は絵を描くことで心を表現する人だから、動画ではその印象が残りにくい。
北条すずという人の思想を削ぎ落としたからこそ映画は大ヒットしたのだろう。

それでも私はすずの思慮深さや大人しくも意志の強いところに心を打たれる。
女性にしか描けない女性の苦しみを昭和初期のあの時代背景に落とし込んだこうの史代先生に心からの敬意を示したい。

映画版も素敵な作品であることに違いはない。でもやはり、原作漫画と映画の『この世界の片隅に』は別の作品であると思う。

私の心の中にいるすずさんが小さく笑いながら確かに私の世界の片隅に生きている。
この作品を読むことができて、感動する心があって、生きていて本当に良かったと思う。

私もいつか誰かの心の片隅に残るような作品を作りたいと強く願っている。

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