自分たちで進める授業
教師が口を出さずに、“子どもたちだけで課題解決に向けて話し合いを進める授業”を想像してみてください。素敵だと思いませんか?
仲間の「わからない」を大切にしながら、自分の考えを安心して言い合う。一人だけでは、解決できなくても、みんなで考えれば解決できる。
そんな授業を目指して、日々実践してきました。
学校の特色、学年・学級のカラー。様々な集団があると思いますが、子どもたちに話し合いをするための土台と話し合いのシステムを伝え、練習すればどんな集団でもできると思います。
今回は、私が実践してきたことをお伝えします。
1.なぜ「自分たちで進める授業」を行うのか
子どもたちの資質能力(「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」)が育成されるようにするためには、単元の内容や時間のまとまりを見通しながら、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うこと、「指導と評価の一体化」を実現することが重要であると言われています。
子どもたちの資質能力育成に向けて
①単元の内容や時間のまとまりを見通すこと
②「指導と評価の一体化」を実現すること
③「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うこと
が大切だということです。
③「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業のやり方には、様々な方法があると思います。その方法の一つとして、「自分たちで進める授業」を提案します。
①②については、以下の記事で詳しくお伝えしています。↓
2.話し合いをするための土台
子どもたちだけで話し合いを進めるには、安心して発言できる教室でなければなりません。安心して発言できるクラスにするために必要なことは、3つです!
①「わからない」「まちがい」は宝物
仲間の「わからない」をバカにせずに大切にする。「わからないこと」や「間違えること」は良いことである。という認識を全員が持っていないといけません。
この意識を根付かせるために必要なことはただ一つ。教師が口酸っぱく言い続けることです!
誰かが「わからへん〜」と呟くたびに、「わからなくてもいいよ!分かるようにするために勉強するんだよ!」と伝えます。
誰かが発言の場で間違えた時には、なぜ間違えたのかをみんなで考えます。そして、「ありがとう。あなたのおかげで、みんなの勉強になった。間違えることは良いことだね。」と伝えます。
そんなことを毎日のように続けると、安心して発言できる・安心して間違えられる教室になります。
↓こちらの記事も参考に★
②マイナス発言は許さない
「許さない」と言葉で表すと少しきつい感じがしてしまいますが、マイナス発言が飛び交う教室では、安心して発言できません。なので、日頃からマイナス発言をしない空気を作る必要があります。
とは言っても、人間誰もが「しんどいな〜」「やりたくないな〜」と思ってしまう時があります。子どもも教師も同じです。
なので、マイナス発言があった時には叱りはしません。
まずは、寄り添います。そして、なぜマイナス発言がダメなのかを伝えます。
例
👦「(課題に対して)え〜だるい〜。やりたくない。」
と大きな声でマイナス発言があったとします。
👩🏫「確かに。この課題難しそうだもんね。先生も子どもだったら、やりたくないと思ってしまうかも。でも、その『やりたくない気持ち』を大声で言うのはどうかな?心の中でマイナスなことを思うのは自由だけど、教室で、授業中にその気持ちを声に出すのはよくないよ。今、このクラスでは◯人が一緒に勉強をしている。集団で学習している。その集団の場で、一人がマイナスな発言をすると、教室の士気を下げることになる。(雰囲気を悪くする。)だから、マイナスなことを思っても、集団の場(授業中)では、マイナスな発言は言わないように練習しよう。」
少し回りくどく表現しましたが、こんな感じです。
大切なことは、「集団の場で、一人がマイナスな発言をすると、教室の士気を下げることになる。(雰囲気を悪くする。)」ということを伝えることです。
③聴き方・話し方の指導
発言者が安心して話せるような「あたたかい聴き方」と「分かりやすく伝える話し方」のスキルを指導する必要があります。
↓詳しくはこちら★
3.話し合いのシステム
話し合いをするための土台がある程度できたら、話し合いのシステムを伝え、練習させます。
①自主起立
自主起立とは、挙手なしで、子どもが自分の言いたいタイミングで立って発言する方法です。
メリットは、
・つなげて言いたい時に言えること
・話が途切れないこと
・教師がいなくても発言できること
です。
が、自主起立がスムーズにできるようになるまでには特訓が必要です。
↓詳しくはこちら★
※後日、記事をアップします。
②話し合う順番を伝える
「自分たちで話し合いを進める」と言っても、「ご自由に勝手にどうぞ。」では難しので、話し合う順番は伝えます。
【算数の場合だと】
①わからない子がどのくらいいるのかを確認する
→わからない部分を話せるのであれば発言してもらう
②それぞれの考えを発言する
③まとめ
【国語の場合だと】
例:5年「なまえつけてよ」第4時
①春花と勇太がお互いにどう思っているか(1日目)
②春花と勇太がお互いにどう思っているか(2日目)
③春花と勇太がお互いにどう思っているか(3日目)
④春花の勇太に対する心情の変化は、何をきっかけに、どのように変わったのか。
⑤まとめ
のように。
また、司会者も決めておきます。
「次、〜について話そう。」や「(シーンとした時に)まだ意見言いたい子いる?」などを言う役です。
慣れてくると、司会者を決めなくても周りの雰囲気を見て、声かけできる子が出てきます。
③発言後は確認を。
基本は、発言者につなげて、次の子が発言する。ですが、テンポよく話がつながっていくと、必ず、話している内容を理解できずに取り残される子が出てきます。それを防ぐためにも、一人が発言した後は、必ず近くの子とその発言内容を確認する時間をとります。30秒ほどの短い時間で!
確認し合うグループは、ペアや班の子たちでも構わないと思いますが、4人だと少し多いです。また、ペア、班限らず話しやすい子と確認することもありにしているので、子どもたちには、あえて「近くの子」と確認すると伝えています。
【例えば】
Aさんが発言したとします。
(確認タイム)「Aさんが言ったことは〜だよね。」
自主起立でBさんが立って発言。
(確認タイム)「Bさんが言ったことは〜だよね。」
自主起立でCさんが立って発言。
(確認タイム)「Cさんが言ったことは〜だよね。」
をひたすら繰り返します。
この中で、わからないことがあれば、そのわからない内容を共有したり、付け足しがあれば付け足したり、自分とは違う意見であれば、意見したりします。
みんなで課題の解決に向かって話し合いを進めます。
4.終わりに
「自分たちで話し合いを進める」授業を毎日している訳ではありません。私は、国語(物語・説明文)、算数で実践しています。単元の終盤、それまでに学習したことをいかせる時間に行っています。
初めは、なかなかうまくいかないと思います。今から指導を始めて、年明けくらいから「自分たちで話し合いを進める」イメージでいいと思います。
4年生であれば、4月「白いぼうし」6月「一つの花」は練習です。教師が話し合いの途中にたくさん入って、指導する必要があります。9月「ごんぎつね」で、自分たちだけで話し合うチャレンジ。1月「プラタナスの木」2・3月「初雪のふる日」で、教師なしでも話せるようになれば、上出来だと思います。
「自分たちで話し合いを進める」授業の提案ですが、子どもたちで話し合いをさせることが最大の目的ではありません。あくまでも、資質能力を育成させる手段だということは頭に入れておいてください。
子どもたちで話し合いをさせることが最大の目的ではないと言いましたが、「自分たちで話し合いを進める」授業を行う(行い続けると)と子どもは変わります。
意欲のなかった子が授業に積極的に参加したり、話の聞けない子が真剣に仲間の発言に耳を傾けたり・・・。教室に温かい言葉が飛び交い、活気が溢れます。自分たちだけで話し合えるようになると、子どもたちに自信がつきます。学年当初に比べると、子どもたちの自己肯定感も上がっているように感じます。
ぜひ、実践してみてください!
では!🐢