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認知症=赤ちゃん、トンデモエピソード3選

 祖父が認知症になった。いろいろやばすぎて筆舌尽くし難いのだが、祖父を見れば見るほど、赤ちゃんだなぁ、と思う。逆に、エン様(子どものあだ名、1歳11ヶ月)が親を困らせるようなことをしていても、認知症と同じだなぁ、と思うと大きな目で受け止められるようになった。

 認知機能をこれから作り上げていく赤ちゃんと、認知機能をこれからゼロに戻す認知症。認知機能レベルはたいして変わらないのだと思う。ただ、認知症祖父は93年生きた蓄積があり、身体が覚えている記憶がある。そのおかげで赤ちゃんでは起こり得ないトンデモエピソードが毎日起こっている。

●トンデモ1:デイサービス行きたすぎて119

 119のタクシー利用ー! 市民の皆さんすみません!

 祖父はデイサービスに通っている。平日の9:00-16:30。このスケジュールがなんとも保育園っぽい。要介護4のほぼ寝たきりなので、車が迎えに来てくれる。デイサービスでは入浴してくれるので気持ち良いらしい。家では92歳妻や私の父にガミガミ怒られるが、デイサービスでは介護士さんたちが優しくしてくれる。デイサービス大好き。

 しかし困るのは土日。デイサービスはお休みだが、祖父はデイサービスに行きたい。やいやい言うのに父が対応している。

「デイサービス連れて行ってくれ! 迎えが来るんや」
「今日は土曜や言うてるやろ。デイサービスは行かれへん」
「土日でも来ていいという契約になってるんや! 病院長に電話したらわかる。市長も知ってる」

 結局祖父は自分で119をかけ、救急隊に
「〇〇(デイサービスの施設名)連れてってください」
 と言っていたらしい。救急車は救急病院にしか搬送できないのでそれは無理、となり終了。

 

 これ実は、父の対応が間違っている。赤ちゃん育児していた人ならわかるのでは? 正解は
「そっか、デイサービス行きたいんやなぁ。デイサービスのお迎えは何時に来るの? あっちではどんなことするの?」
 と、いろいろ話しながら気を逸らせる。私が実家に帰っている間にも同じシーンがあり、気持ちを受け止めながらふんふんと話していたら、祖父は自分でベッドまで戻って行った。

【赤ちゃん育児・認知症介護共通の教訓1】
気持ちを受け止めてあげる

 赤ちゃんは自分で119かけられないけど、祖父は「緊急時は119」ということは覚えているから、自分にとっての緊急事態(=デイサービスに連れて行ってもらえない)で119をかけてしまった。

●トンデモ2:タンス全部ひっくり返す

 赤ちゃんキター! 典型的赤ちゃん。ティッシュ全部出すのと一緒。出すのが楽しくなってしまったのだろうか。ふと部屋を覗くと床中服まみれ。ティッシュも3箱くらい中途半端に使われている。

  赤ちゃんだとティッシュくらいで済むが、身体の大きい認知症患者はひっくり返す規模も大きくなる。
 介護者が私なら、いっぱい出したね~と言って片付けるのだけど、主な介護者が92歳祖母なので、本気で怒っている。祖母にとっては服をタンスにしまうことは大変な重労働。でも怒っても仕方ないし祖母が疲れるだけだから、したいようにさせるしかない。

【赤ちゃん育児・認知症介護共通の教訓2】
気の済むまでやらせる。


●トンデモ3:ゴキブリホイホイ食べる

 まじかー! 死ぬー!

 寸前のところで私の弟が止めたらしいけど、祖父は食べる食べると大声で喚いて聞かなかったという。
 ちなみに殺虫剤を誤飲すると、嘔吐や痙攣、心肺機能低下を起こすらしい(成分によるが)。 

 はてさて、祖父はなぜゴキブリホイホイを食べようとしたのか。画像は伏せるけど、ゴキブリホイホイのプラスチック部分を開けると、ゴキブリのエサ+殺虫剤と思われるお団子みたいなのが入っている。それが錠剤と似ている。祖父のお薬カレンダーの真下に、ゴキブリホイホイがあった。

 育児経験者としては、まず危険なものを赤ちゃんが触れる可能性のある場所に置かない。基本のキ。
 次に、錠剤のように見えるゴキブリホイホイを食べようとしたら、代わりにサプリか何かを渡す。ビタミンサプリでもラムネでもミンティアでもいい。

【赤ちゃん育児・認知症介護共通の教訓3】
本人のやりたいことを叶えるために、似たような別のものとすり替える

 でも、これらの対応を赤ちゃん育児をしていない人に求めるのはかなり難しいと思う。育児もコツが無数にあり、本を読んだりママ友から聞いたり一生懸命努力して勉強して、うまく対処する方法を身に着けてきた。介護でも同じようなことだなと思うが、急に症状が進むので家族側が追い付かない。祖父は4月まで自分で図書館に行って本を借りて読んでいたのだ。たった3ヶ月で要介護4、認知機能もかなり低いレベルまで進んでしまった。これでは家族側が無理。
 しかも、同居家族が祖母92歳心不全と父である。祖母は自分の身体もしんどい状態で、介護できるような人じゃない。でも父が頼りにならないから祖母が頑張っている。
 父は育児もしてこなかったし口が悪いし頑固な昭和の典型的男で介護ができるような人種じゃない。でも、自分を変えるしかないのだ。育児するにも親はものすごい制限を受けている。介護も同じ。今までと同じ働き方、同じ暮らし方で介護できると思うなよ、と娘の私から釘を刺した。

 祖父はもう自宅介護できるレベルではないので、特別養護老人ホームへの入居を目指して進めている。
 トンデモエピソードは、介護者にとっては笑えないが、育児中の身からすると赤ちゃんと同じでちょっと笑える。93年の時を経て赤ちゃんに戻った祖父。これからどうなるのか見守りたい。

《終わり》

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