制限食をおいしくたべる。
「たべることは、生きること」
よく言われることだけど、2019年は、それをいろんな意味で実感した1年だった。
2018年12月、全身性エリテマトーデスという病気を発症した。
その病気の症状のひとつとして、「ループス腎炎」という症状があった。その診断のために、腎生検をしたのだけど、わたしのタイプは「Ⅳ+Ⅴ型」で「最も腎不全になりやすいタイプ」なのだそう。
腎臓をまもるために、入院中から「塩分6gの制限食」になった。
腎機能はまったくもって悪くはなっていなかったので、それほど気にしていなかったけれど、入院中の食事に慣れようとはおもっていた。出されていた病院食は正直いって思ったよりはおいしかった。入院してすぐは食事が食べられなくて、少しでも食べられるように、と朝はパンにしてもらっていたのだけど、おかずも割としっかり味がついていて、塩分6g以下の味気のない食事、というイメージはまんまと覆された。それに1日1食は好きなパンを出してもらうことで、入院中のいい気分転換になっていた。
これなら、塩分6gの食事もぜんぜん余裕だなぁ、なんておもっていた。
ところがそれは、退院前日に突然やってきたのだった。
「ちょっと検査しますねー」
そう言って先生が持ってきたのは心電図の機械だった。その日の血液検査でカリウムが5.7mg/dlという数値だったのだ。カリウムは6mg/dl以上になると心電図上危険な変化が起こり、命にかかわる不整脈や突然止まってしまう可能性が出てくる。
それを知っているだけに、怖くて怖くてたまらなくなった。
結局、カリウムを出す薬をもらって変えることになったのだけど、腎機能はよかったので、それと食事でのカリウム制限をすることとなった。
退院前日に予定していた栄養指導のなかで、塩分制限食についてとカリウム制限食についての説明をうけたのだけど、特にカリウム制限については、
・コーヒーはインスタントの方がカリウムが高い。
・ゆがき捨てるとカリウムが減る。
・断面からカリウムは抜けていくから、小さく切ったほうが抜けやすい。
・じゃがいも系は湯がいてもあまりたくさんは抜けない。
・あれは高い、これも高い。それも高い。などなどなどなど・・・。
などなど。
あたまに残ったのはひたすら「あれが高い、これが高い。それも高い」ということばかりだった。
退院後は、じぶんで作ってみたり、親がつくったりしてみるものの、口に入れるこのたべものが《 栄養になるものなのか、はたまた毒か 》まったくわからず、食べることがこわくてたまらなかった。
そこで、国立循環器病センターが出している本を購入し、塩の量も、素材も調味料も徹底的にはかることにした。
もともと料理がにがてなので、控えめに控えめにして、まったくおいしくない・・・などの失敗をたくさんした。
じぶんでつくると安心だけど、じぶんでつくるとおいしくない。というかまずい。っていうか、料理ってここまでまずくなるものなのか。今までどれだけ調味料に救われてきたのか、ここではじめて身にしみて知った。
でも、このスプーンはいまでもとても重宝している。
これで、細かくはかることで、1食のうちどれかのおかずに0.4g程度の味がついていればそれだけでしっかりした味を感じることができるということがわかった。
全体で均等にまんべんなく薄味にするのではなく、1食のなかでメリハリをつける。たとえば、0.4g程度の味付けがあるものがあれば、茹でたにんじんやブロッコリー・カリフラワーなどのようなゆで野菜をそのまま盛り付けても素材の味で食べられる。
基本的にかつおでだしをとり、それでスープや味噌汁をつくる。
味噌汁は塩分濃度計で塩分濃度をはかって、汁の量を考える。
ごはんやおかずは常にこれで計量する。
カリウム制限食のとき、カリウムを多く含むたべものばかりを並べられて、絶句したけれど、だいじょうぶです!
ちゃんと測ればだいじょうぶ。
じぶんはどれくらいの量を食べても大丈夫なのかを知ること。
そして、それは1食あたりどれくらいなのか。
じゃあ1食のなかでこれくらいなら食べてだいじょうぶかな、と測る。
納豆もカリウムが高いのだけど、じゃあ50gならどれくらいかな?と考えると、ほかをカリウムが少ないもので調整すれば食べられたりする。
そういうのを徹底的に測る。測る。測る!
測れば、食べちゃだめなんてものはほとんどない。
(いちおう今のところまだバナナは控えてます。このあいだ1年ぶりにバナナジュース飲んだけど。笑 おいしかった。)
でもそれくらい、測ることで食べられるものの幅が広がるから、絶対測ったほうがこころの安定につながります。
最初はこわがって使っていなかった、マヨネーズやケチャップ、ドレッシングなどもこれで軽量すれば、塩分量を抑えることができる。
ちなみに、最悪だったのは「減塩醤油」。
あれはだめ。ほんと、さいあく。
もう、醤油ではない。
減塩のために「減塩○○」とかを使うのもひとつの手ではあるけれど、塩分をへらす代わりに変な添加物をつかってないかなど注意が必要だし、とにかくまずい。それだったら、あえて減塩ものをつかわずに、ほんものの調味料をつかって、量を調整するほうが味わいもからだにも絶対にいい。
退院したばかりのころは、食べることがつらくて、「食べることは生きること。生きることがつらい」と、泣きながらご飯を食べていた。
けれど、今は、測ればだいじょうぶだとわかった。
ちょっと食べ過ぎたとしても調整すればだいじょうぶ。
だから、誰かとたべるときは気にしないで気持ちよく食べる。
食べることは生きること。
食べかたを知ればこわくない。
知ればできることだって増えてくる。
たのしく食べて、おいしく味わって、これからもイキイキと生きてやるのだ。