「陸沈人」
「陸沈人」2010-12-17
彼のひとは紛れもなくあらゆる人々の魂に空気の如く居た。
そのひとの気配のないしんとした佇まいに周囲の人々は畏怖の感情を抱いていた。
だが、彼の心中を観知る人は皆無に等しかった。
既に生きた伝説的存在であった。
彼は、ある宴会の場で沸騰したヤカンの飛沫をコップを持つ手に浴びても無表情のまま何事もなかったかのような態度であった。これは彼を語る上での数多くのひとつにすぎない。
彼は如何なる人物も拒まなかった。彼が嫌うのは常識を知らぬ無礼な者の態度であった。
私は今日まで彼のように懐の深き陸沈した人物を知らぬし、今後も彼のような存在には会うこともないと思っている。
今日まで生きていたら、と想うも是、是非も無しである。
今日は阿部勉氏の命日である
https://note.com/umezaki/n/nd5242c9333c9
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