婚活女子が“傲慢と善良”を読んで
お久しぶりです。初めまして。くま子です。
今回は、婚活歴長めで、もうこのままでも良いかと思い始めているアラサー女子(・・・女子?)が、読書垢でも話題沸騰の“傲慢と善良/辻村深月著”を読んだ圧倒的個人的感想を想うままに書いていきます。
それでは、感想行ってみよう!
あらすじ
マッチングアプリを通じて婚活の末に婚約することになった架と真実の二人。しかし、二人は婚約していても距離がある。そんな時に、いきなり真実が架の前から姿を消してしまう。果たして、彼女はどこにいるのか。生きているのか。
彼女はなぜ架の前から姿を消したのか。真実の過去や交流関係が徐々に明らかになっていく。
良い子
このお話は主人公の架の彼女の真実が失踪するところから始まる。マッチングアプリで出会い婚約した二人だが、まだ二人には距離があるように感じる。
失踪した真実を探す内に彼女の生まれた環境や交友関係など、真実の過去が徐々に明らかになってくる。
生まれた時から母親から“良い子”を演じることを求められていた真実。しかし、その良い子は母親が都合よく真実を扱いたいが為の理想であった。
学生時は異性との交流を否定する、進路先を勝手に決める、周囲が結婚したら母親が認めた相手との結婚を望むなど、娘が自分の価値観に合わせるように無自覚にコントロールしていた。
限度はあれど、そのようなコントロールはどの家でもありそうなことである。
そんな家庭環境なこともあり自分で壁にぶつかり、試行錯誤する経験が圧倒的に少ない真実。
しかし、読んでいると周囲の問題だけではなく、本人もその環境がとても居心地よく、楽に感じていたことも分かる。
真実は良い子を演じる事で、誰にも傷つかない生き方を選んできた。
そんな、真実が一人ではどうにもならない問題に初めてぶつかる。それが、“婚活”である。
そんな真実が自分と向き合う過程がとても丁寧に、リアルな描写で書かれている。
ピンとこない
婚活がテーマな本だけあって、婚活したことがある方は思わずうなずいたり、胸に刺さり過ぎて痛いほどの描写や言葉が多い。
結婚相手を条件で探して、納得して相手と出会っても、実際に会うと、“なんとなくピンとこない”と違和感を感じてしまうのだ。
自然の出会いの中で好きになるのではなく、好きになれるかも知れないと期待していっている分、この“ピンとこない”はかなりきつい時もある。
そして、相手ではなく、そんなことが気になる、受け入れられない自分を嫌いになってしまうのだ。
この終わりが見えない繰り返しこそが辛い。
この本を読むと、自分だけがそんな思いをしたわけでは無いことがわかり、少しほっとしたものの、それでもこの悩みの先に結婚の相手はいるのかと不安は尽きない。
自分の値段と相手の値段、そんなものを天秤にかけては一喜一憂する。
そして、勝手に“また選ばれなかった”と嘆いて被害者づらをしてしまう。
なんだか、この本のタイトル通りに婚活はとても“傲慢”なのだ。
ぜひ、恋愛結婚の方も、婚活経験者の方も、婚活中の方も読んで欲しい。
自分らしさ
真実がどこにいったのか、二人はどうなったのか。
読み進めるとミステリ―のような、ミステリーでもないような。絶妙なバランスで成り立っている。
人間のエゴや傲慢さも書かれているが、ドロドロしているだけではなく、それだけの感情だけで終わらせない。
この話は物語の中だけの話ではなく、自分の身に起こったノンフィクションかも知れないと、そう思えるほど良い意味でも悪い意味でも人間らしさが丁寧に書かれている。
それが、その辺のミステリーよりよほど怖い部分もある。
自分の事の様に、自然と恋愛できなかった二人が、お互いと向き合うことは出来るのかが気になってしまう。
自分らしいって何だろう。自分らしく入れる相手ってなんだろう。
自分らしさがわからないと、さらに相手と向き合うことも難しくなってしまう。
そんな答えのない悩みに焦点を当てられて、胸に刺さって抜けなくなってしまう。
まとめ
親が望んだ良い子でいるって何だろう、婚活ってなんでこんなに苦しいのだろう。
婚活での“ピンとこない”の言い表せない感覚が、的確に言語化されて、その言葉のひとつひとつが胸に刺さってくる。
婚活経験者として、結婚まで至っていない身としては、ただただ胸が痛い。
婚活って所詮自分の傲慢で成り立っているのかも知れない。
自分で選んだ相手が正しかったと思えるように、自分と相手と向き合うしか答えは無いのかも知れない。
自分らしさって何だろう、婚活って何だろう。そんな、もやもやに答えをくれるような一冊。
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