【読書感想文】魔女たちは眠りを守る
あらすじ
魔女はすべてを覚えている。
ひとの子がすべてを忘れても。どこか遠い空の彼方へ、魂が去って行こうとも。
そして地上で魔女たちは、懐かしい夢を見る。記憶を抱いて、生きてゆく。その街は古い港町。
桜の花びらが舞う季節に、若い魔女の娘が帰ってきた。
赤毛の長い髪をなびかせ、かたわらに金色の瞳をした使い魔の黒猫を連れて。
名前は、七竈・マリー・七瀬。
目指すは、ひとの子たちが「魔女の家」と呼ぶ、銀髪の美しい魔女二コラのカフェバー。 懸命に生きて、死んでゆくひとの子と、長い時を生きる魔女たちの出会いと別れの物語。 KADKAWA HP引用
登場人物
七竈 七瀬
赤毛の長いくせっ毛。少女といった見た目。使い魔の黒猫が相方で、心配性。港町に戻り、『バーバヤーガ』に宿泊している。
二コラ
小さな食堂、魔女たちの住処『バーバヤーガ』の主。はっきりと年を重ね、銀髪と口元の皺が美しい姿。住処に来る人や魔女に温かい料理や飲み物をふるまう。長い間港町を見守っている。『バーバヤーガ』は奇跡を求める人間をやさしく導く。
感想
この本に出てくる魔女は、見た目以上に年齢を重ねている。そして長い間、街の人々の生活を見守ってきた。
この本に出てくる街の人々は、魔女と出会っても『世界を征服したい』や『金持ちになりたい』など私利私欲のための欲望は持っていない。
ただ、“言葉を伝えたい、想いを相手に届けたい”それだけを願っている。
その想いを魔女が受け取った時、魔法で相手に想いを届けてくれる。
その魔法も決して杖を振って変身させたり、呪文を唱えることもなく、ただただ静かにやさしい眼差しで相手の幸せを願っている。
しかし、たくさんの想いを届ける手伝いをするなかで、すべてがめでたしめでたしでは終わらず、自分が力及ばなかったことや時代の流れと向き合わないといけない。
この本の中には、悪者の魔女も魔法を使って主人公を助ける魔女も出てこない。
そこにいるのは、長い月日の中でたくさんの人々を見送り、ささやかな願い叶えることが出来る魔女。
人々と一緒に喜び、哀しむ、人間以上に人間味があふれる魔女である。
だからこそ、現実の世界でもふと店に入ると、二コラが出迎えてくれるような気さえする。
『魂はきっと消えたりしないわよ。世界のどこかに溶けているだけなんだわ。魂も大好きだって想いも』
そんな言葉で、この本は別れの寂しさや儚さを温かく包んでくれる。
一人静かな夜に大切な別れをした方に、読んでほしい一冊です。
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