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さようなら。

疲れた。
一言で言うならそれだけ。
自分と向き合い続けるのにも疲れたし、病棟の人間関係にも疲れた。
あと、毎日、テレビも机もゴミ箱もなくて、ベッドと服を収納する棚がある簡素な部屋で寝て、起きて......という生活を繰り返すのにも疲れた。

それでいて、その生活の中で希望を見出すのにも疲れた。

以前いとこに「努力は報われるのか?」と聞かれた時、「報われるかわからないけれど報われるまで努力を続けた人だけが手にするものがあるんだよ。」と答えたし、これは私の信条であった。

他人を妬む暇があれば、努力をして自分を磨いた。
可愛くなりたければメイクや服を研究し、プチ整形をした。
そうしたら「かわいい」と言われることが増えて心が満たされた。

学校で1番の人を妬みたくないから自分が1番になった。
そうすると自分のドロドロした感情と向き合わないで済む。
他人を妬まないで、純白な気持ちで他人に接することができる。

そうやって頑張ってきたけれど、私の本当に欲しいものは手に入らなかった。
妬みたくないからといってとった1番の称号は、本当は自分が望んだ場所で掴み取りたかった。
無理やり入れられた"歯学部"ではなく。

だから、内緒にしていたのだがこの春から再受験をしようと、予備校に通い勉強をしていた。

けれども、高校の勉強をするという行為は、私の人生で最悪だった時期をより克明にフラッシュバックさせる起爆剤となった。
私は睡眠中にフラッシュバックを起こして暴れたり解離をしたり、鬱で起き上がれなくなったり、勉強をすればするほど地獄にズブズブとはまっていくようだった。

そうして全てがどうでも良くなり適当に飛び降りたら、2階からのくせに重傷を負い、今日明日じゃどうにもならないような怪我をした。

それでもなんとかできることを探して、元気な時は前向きに勉強に励んだし、本当はやりたくないリハビリも嫌な顔ひとつせず取り組んだし、退院も、本当はダメだけど無理やり早めてもらって退院した。

退院して2週間くらいしたら社会復帰する予定で頑張っていたのだが、精神科の主治医の許可が降りず、何が何でも社会復帰しようと思い逃げようとしたら捕まり、そのまま強制的に入院になり、今がある。

入院して半年が経ち、自分を客観視できるようになって初めて、あのまま社会復帰をしていたらいずれ破滅していただろうな、と思った。

けれども、もう予備校は通えないし、お金もない。突きつけられた就労不可能という文字が頭の中でぐるぐると彷徨う。

どん詰まりだ。どうしようもない。

ここまできて、ようやく心が折れた。
"挫折"ってこのことなんだなって、はっきりと認識できるくらいには一気に折れた。

私が今までなんとか前を向いて頑張ってきた10年はなんだったんだろう。
勉強のためのノートを捨てた。
レジュメを切り裂こうと思ったが、私はいつだって情けないからそれをする勇気はなかった。

大切にしていたものだから、切り裂けなかった。

決して遠くにある夢ではなかった。
地元で、地元の国立大学でのんびり過ごしたかっただけだし、受験には合格していたし、だから歯学部に入っていなかったら全てが丸く収まっていたのだ。

過去を振り返って悔やんでも意味はないと頭ではわかっているが、「あの時」が人生の分かれ道だったと思う。

このまままた前を向いて努力をするかもしれないけれど、今はもう起き上がる気力がない。
死にたい。死ぬ気力もない。どうしようもない。

ゆめってかなわないんだなって、
打つといつも涙が溢れて、変換できなくなる。
叶わなかった。手に入れられなかった。恋焦がれていた。
どんなに強く想っても、環境が、体調が、お金が、許さないことがある。

本当の意味での現実を突きつけられた。
世界は「こう」なんだって。

私たちが普通に生きている世界はきっと多くの人の諦めや無念から成っていて、私は環境が良かったからそれに気がつけなかった。
多くの「無念」に触れて拾って優しく触れていたなら、きっと自分自身も救われただろうに。


これは若くて未熟な私への天罰。
さようなら、恋焦がれたもの。永遠に。
手放す勇気がようやく出たよ。
悲しいけれど、少し楽になった。努力に縛られなくていいから。
さようなら。さようなら。さようなら。
いつかまた、

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