優しくて素敵すぎる映画「きみの色」
とっても好きな映画に出会えました。
数ヶ月前に予告動画を見て、そのときから「これ好きかも!」ってビビッときて、それが確信に変わった幸せな鑑賞体験をしました。
山田尚子監督作品「きみの色」。
この映画のどこが好きだったか、3つに絞ってご紹介しようと思います。
1. とにかく綺麗な色彩
これは予告を見たときからずっと感じていたけれど、色づかいが本当に綺麗です。
そもそもこのお話の主人公・トツ子は、人の「色」が見えるという共感覚を持つ女の子。
トツ子の目で見える世界は、それぞれが個性的な色を放っていて、そのなかでも特に綺麗な色の持ち主にトツ子は心惹かれています。
そんな女の子が主人公だからか、映画で描かれる世界はすごく彩りが豊かで、鮮やかで、そして全体的に淡い光をまとったような優しい色をしています。
海と空の明るいブルー。
夜の教会の暗闇と、蝋燭がほんのりと灯すオレンジの光。
学校の中庭に咲く色とりどりの花々。
どの場面でもスクリーンに映る色がとても綺麗で、ぜひ大きな画面で感じてほしいなと思います。
2. 愛くるしい登場人物たち
主人公のトツ子の個性はもちろん「色が見える」というところにもあるけれど、それだけではない魅力がたくさんあります。
ふわふわとしていて笑顔がチャーミングな一方で、毎朝聖堂に通ってお祈りを捧げる確固たる信仰心を抱き、そして周りを明るくする求心力のようなものも持ち合わせています。
特に最初に「可愛い!」と思ったのは、トツ子がきみとルイという2人をバンドに誘うシーン。
トツ子は同級生であるきみの「青色」に魅かれていましたが、ある日突然きみが学校を辞めてしまったと聞いて、もう一度あの色を見たいと願いきみの行方を探します。
やっとのことで見つけたきみと短く会話を重ねていると、突然ルイという男子が「バンドやってるんですか?お二人」と話しかけてきました。
きみとルイの色がどちらも素敵な色を持っていることを理由に、一緒に音楽を奏でてみたいと思い、トツ子は咄嗟にバンドをやっていることに。
我に帰ったトツ子が、きみに謝罪と「嫌なら大丈夫なので!」と弁解の言葉を口に出すと、きみからは「やりたい」ときっぱりとした決意のある返事が出てきます。
その瞬間、トツ子は口を押さえて「ひゃぁ!!」というような声にならない悲鳴をあげます。
このときのトツ子がなんだか、”推し”から思わぬファンサービスを受けて歓喜と畏れ多さが入り混じった大きな感情を処理しきれなかったオタクっぽい反応で、思わず初めて見たときクスッとわらってしまいました。
トツ子のことばかり書いてしまいましたが、もちろんそのほかの人たちもとってもチャーミング。
バンド仲間のきみとルイ、そしてトツ子が通う学校のシスター・日吉子先生。
この3人は特にトツ子に与える影響も大きく、そしてそれぞれが優しさを持ち合わせていて大好きなキャラクターです。
また、登場人物たちの魅力は、小説版を読むことでもっと強く感じられました。
映画では少しぼかされていて疑問が浮かんだところも、小説だと丁寧に描かれているような感じがします。
トツ子の心の葛藤、きみが学校をやめた経緯、ルイが抱く音楽の憧れや、シスター日吉子の祈り。
各々の心の内面がより深く知ることができて、映画を観たあとに読んでみることをおすすめします。
3. 心が湧き立つ音楽
映画を2回観に行って、2回とも泣いてしまったシーンがあります。
それが、聖バレンタイン祭という文化祭のステージで、トツ子たち3人が奏でるバンド演奏のシーン。
このステージでは3つの曲を演奏するのですが、どれも雰囲気が全く違い、すごく面白いです。
1曲目の「反省文〜善きもの美しきもの真実なるもの〜」では、最初からゴリゴリのロックテイスト。
ヘヴィなギターとビートが初っ端に流れて来て、度肝を抜かれたのを覚えています。
2曲目の「あるく」はうってかわってバラード調。
きみが目を閉じて祈るように歌う姿や、ルイが奏でるテルミンの不思議な響きに、神聖さも感じられるような一曲です。
そして3曲目。
「水金地火木土天アーメン」。
この曲のイントロを聴いたとき、自分でもよくわからないまま涙が溢れてしまいました。
この曲はトツ子が「きみの色を歌にしたい」という思いで作詞作曲を手掛けたもので、作中でも何度か登場します。
一度聞いたら耳から離れないような軽やかなメロディに「水金地火木土天アーメン」という歌詞がのっかって、思わず体でリズムを感じながら口ずさみたくなるような魅力があります。
劇中でもそんな楽しさを表すように、トツ子たちの演奏中に思わずステージに駆け寄る生徒たちや、くるくる回っておどり出すシスターの姿が描かれます。
音楽によって一つになった瞬間が感じられて、大好きでたまらないシーンです。
ここまで書いてきたように、「きみの色」はとにかく綺麗で、優しくて、穏やかな光と素敵な音楽に包まれた映画です。
興味はあるけどまだ観てないなという方には、ぜひ映画館まで足を運んでいただければなと思います。
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