あんずうめ

‘99生まれ。 好きな本と音楽に囲まれて暮らしたい。

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最近の記事

優しくて素敵すぎる映画「きみの色」

とっても好きな映画に出会えました。 数ヶ月前に予告動画を見て、そのときから「これ好きかも!」ってビビッときて、それが確信に変わった幸せな鑑賞体験をしました。 山田尚子監督作品「きみの色」。 この映画のどこが好きだったか、3つに絞ってご紹介しようと思います。 1. とにかく綺麗な色彩 これは予告を見たときからずっと感じていたけれど、色づかいが本当に綺麗です。 そもそもこのお話の主人公・トツ子は、人の「色」が見えるという共感覚を持つ女の子。 トツ子の目で見える世界は、そ

    • 今を知りたくて、過去を見る

      高校のときの夏休みの宿題をふと思い出した。 高2のとき、世界史の課題として「自分の歴史を書け」とだけ出題されたのを覚えている。 様式は自由、タイトルも自分で考えてつけること。ただそう告げられて、私たちは長い休みに放り出された。今思うと世界史の宿題としては風変わりと言わざるをえない。 私も自分なりに幼少期から記憶を遡り、当時の自分に至るまでの歴史を書き上げて提出した。 たしかタイトルは、そのとき日本神話に興味を持っていたこともあって、古事記をもじった「自事記」と付けたと覚え

      • やりたいことを、全部やる夏に。

        夏という概念が好きだ。 海。 浴衣のお出かけ。 手持ち花火に、打ち上げ花火。 お祭りの屋台。アイスクリーム。 暑いねと言い合いながら歩くこと。 これは、「夏」をすべて叶えようとした私の、6月から8月にかけての記録である。 6月:夏に備えよ、梅雨を攻略せよ6月8日。 夏のはじまりは、文字通りそのまま「初夏」と書くのにふさわしい一日だった。 この日の目的地は、八景島。 水族館という場所が好きなのにこれまで八景島シーパラダイスには行ったことがなくて、ずっと行きたいと思っ

        • 穏やかに、整え、甘やかす。

          「好きなものを、きちんと見つめなおしたい。」 今年のゴールデンウィークは、こんな気持ちがモチベーションになっていた。 旅行なんかの大きなイベントはないけど、1つ1つの約束を楽しんで、自分が好きなことは些細なことであろうと大切にすること。 これが連休中の私にとってのささやかな目標だった。 なかでもここからは5月3日~5月5日を取り上げて、その日の出来事や心に浮かんだことなんかを記していこうと思う。 5月3日 連休初日の朝。 いつもより少し遅く起きた私は、リュックサックに着

          変化と刺激の2023年を振り返る

          私にとっての2023年という1年をまず一言で表すならば 「刺激的だったけれど、もう一度繰り返したくはない年」 となるだろうか。 1年の頭からあった出来事を列挙すれば、修士論文の執筆、大学院の卒業、引越し、新社会人のスタート、それから趣味でやっているオーケストラの練習と本番、さまざまな人たちとの出会い、友達との交流、恋愛面での悩み、日常的な読書…… これらの経験を通して、「大きく変わったなあ」と思うことと、「どんなに環境が変わってもこれは変わらないな」とあらためて感じること

          変化と刺激の2023年を振り返る

          オーケストラの演奏のために島根県の山村に行ってきた

          「ダメ元のお誘いなんだけど、11月の3連休空いてない?島根での演奏会があるんだけど…」 ある知り合いからこんなお誘いのLINEを受け取ったのは、10月も折り返し地点を過ぎた頃だった。 これを見た率直な感想は「なんだかよくわからないけど面白そう」で、あまりにも弾丸的で無茶な誘いに思わず笑ってしまった記憶もある。 11月3日:前日リハ そんなわけで私は11月3日にバイオリンケースを携えて西へと飛び立った。 ちなみに余談ではあるが、このとき広島空港は霧に覆われており「この

          オーケストラの演奏のために島根県の山村に行ってきた

          『君たちはどう生きるか』という名の人類讃歌

          宮崎駿監督のジブリ最新作。 この言葉だけでどこまでの期待と想像が膨らむだろう。 前情報は、映画タイトルと、どこか奇妙な鳥が大きく描かれたポスターの画像のみ。 このタイトルと同一の名前を持つ本を、高校入学の直前期に読んだことがある。 コペル君と呼ばれる少年を中心として話が展開しつつも哲学的で難解な本だったような印象があるが、そこまで記憶は鮮明ではない。 この本との関連性はあるのだろうか、そうだとしたら今回の映画はファンタジー色が薄めの教訓めいたストーリーだったりするのかし

          『君たちはどう生きるか』という名の人類讃歌

          怠惰な休日をハッピーにするために一人居酒屋をした

          目を開けると、光の差し方がなんとなくいつもと違う気がした。 寝過ごしてしまった日に特有の、たくさん眠ったスッキリ感となんともいえぬ焦燥感が入り混じった感覚が湧き上がる。 これで15時くらいだったらちょっと嫌だなぁと思って恐る恐る時計のある方に目を向ける。 針が示す時間は13時30分。 予想よりはマシだったことに対する安心感と、それでもお昼過ぎまで寝てしまったことに対する勿体なさから、しばし動きを止めた。 この時間からどこかに出かけるか。 あるいは家から一歩も出ずに徹底的

          怠惰な休日をハッピーにするために一人居酒屋をした

          本棚と青空とトリケラトプス

          4月9日。 新社会人として迎える初の日曜日。 正直にいえばこの1週間はくたくただった。 仕事量や運動量は別に多くないにも関わらず、慣れない環境への緊張のためか、頭も体も疲労困憊。 おかげで昨日は深海魚のごとく最低限の動きしかしていない、なんとも自堕落な一日を過ごしてしまった。 しかし、今日はひと味違う。 なんてったって新しい本棚がやってくるのだ。 1ヶ月ほど前に引っ越しをした私は、大方の本やマンガはすでに本棚に仕舞い終えていたのだが、それでも収まりきれずにいくつかの本

          本棚と青空とトリケラトプス

          社会人前日の最高の休日

          4月2日、日曜日。 明日月曜日は新社会人としての出勤初日である。 自由を最大限謳歌できる最後の休日をどう過ごすか決めきれないまま、今朝を迎えた。 ベッドの上で目が覚めたのち、なんとなく起き上がらないまま、うだうだとすること数分。 だいたい9時ごろに足を床につけた。 とりあえず洗濯機のボタンを押し、お湯を沸かしてコーンスープを飲みながらYoutubeを開いた。 登録しているチャンネルのうち、「オモコロチャンネル」の動画でまだ観ていなかった動画を再生する。 それが「最高の1日

          社会人前日の最高の休日

          『BLUE GIANT』:熱くて、青い、激情のJazz映画

          映画『BLUE GIANT』。 この映画を観るのは今日で2回目だった。 2回観て、2回とも泣いた。 1回目は訳も分からず、ただ圧倒された。 事前知識もほとんどなく、ただ一介の音楽好きとして予告映像に興味をひかれ、なんか良さそうだなと思って観に行っただけだった。 それがもう、ジャズの凄まじさをこれでもかと体感する2時間となった。 映画のだいたい中盤ほど、主人公の大(ダイ)、そして雪祈と玉田の3人は葛飾ジャズフェスティバルに出演する。 そのあたりから、映画に、音楽に、ずっと

          『BLUE GIANT』:熱くて、青い、激情のJazz映画

          雑記ー「すずめの戸締まり」2回目鑑賞を終えてー

          「すずめの戸締まり」2回目鑑賞。 1回目では泣かなかったのに今回はなぜか涙が出てきた。 前回にもまして「やられた」という感覚が強く残る。 震災や神話という自分の興味関心ごとが描き出され、恋愛とファンタジーが埋め込まれている。 たぶん私が自由に創作してみろと言われたら、描いてみたいと思う題材がこれでもかというほど詰め込まれた作品だ。 あの2011年3月11日の東北で、あるいは1923年9月1日の東京で何が起きたのかを継承する作品となること。 年上の男性を強く想い、深い愛を

          雑記ー「すずめの戸締まり」2回目鑑賞を終えてー

          究極の〈震災後芸術〉としての『すずめの戸締まり』

          宮城県のある映画館。 数百人規模で入る比較的大きな劇場と、その座席をほぼ埋め尽くす人々。 私はそこで『すずめの戸締まり』を観た。 あのとき一緒に観ていた人は、いったい何を想い、感じていたのだろうか。 「要石」をめぐるストーリー 新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』。 監督のネームバリューと予告映像の画の綺麗さに興味をひかれ安直に劇場に足を運んだ私は、どこかにぶつけないと破裂してしまいそうなほどの大きな感情を抱くこととなった。 ここから先はネタバレも含む内容となってし

          究極の〈震災後芸術〉としての『すずめの戸締まり』

          《祝祭》の音楽―数年ぶりのオーケストラ本番を終えて

          あの最高にひりついた感覚をなんと表現すればよいのだろう。 踊りだしたくなる感覚。 いや、私はあの瞬間たしかに踊り、熱狂し、感情の渦の中に没入していた。 私がやっていたのは音楽で、それ以上でもそれ以下でもなかった。 でもそれは確かに私がこの数年、心から待ちわびていたものに違いなかったのだ。 2020年、春の予感とともに私たちのもとにやってきたのが、あの疫病であった。 最初は多くの人が3週間ほど様子を見ればいいだろうと思っていたはずだ。 今思えば、あまりに楽観視しすぎていた。

          《祝祭》の音楽―数年ぶりのオーケストラ本番を終えて

          「#わたしを作った児童文学5冊」

          今朝、Twitterで素敵なハッシュタグを見かけた。 ここに寄せられたいろいろな人のツイートを見ていくと、小学校や地域の公民館の図書室にたくさんの本が並んでいた情景がバァっと思い起こされて一気に懐かしくなってしまった。 ということで、ここでは私の思い出の児童文学5選を紹介していきたい。 ①那須正幹『ズッコケ三人組』 小学校低学年のときに図書館で散々借りて全巻読破したシリーズ。 小柄でやんちゃなハチベエ、博識な読書家だがどこか不器用なハカセ、おおらかで心優しいモーちゃん

          「#わたしを作った児童文学5冊」

          推理小説の元祖:エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」を読む

          最近読んだ本に、エドガー・アラン・ポー『黒猫/モルグ街の殺人』がある。 19世紀アメリカを代表する作家ポーによる小説8篇が収録されたこの短編集の中で、ひときわ私が魅かれたのは「モルグ街の殺人」だった。 「モルグ街の殺人」は1841年に発表された小説だ。 そのなかで語り手の友人として登場するデュパンという男は、豊かで鋭い思考力を持った人物であり探偵役を見事に果たしていく。 光文社古典新訳文庫における解説を引用させてもらえれば、 ということだ。 あらすじとしては以下のよう

          推理小説の元祖:エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」を読む