眠れないとき、羊を数えないほうがいい
1匹。2匹。
頭の中で羊を数える。
眠れない時にはこの方法をよく使う。
3匹。4匹。
だけど、あまり効果を実感したことがない。
いつも数えるのに飽きるか、疲れて考えなくなってから眠っている気がする。
5匹。6匹。
わたしには夢がある。
未確認生物を発見する学者になることだ。
7匹。8匹。
夢は頭の中でふわふわ浮かんでいるんだ。
私はその夢がかわいくて好きだから、なでなでしたりよしよししている。
9匹。10匹。
そうそう。さっきから数えている羊は、夢の周りに置いているんだ。
そうすれば牧場みたいでなんだか楽しい気持ちになれる。たまに友達に頭がお花畑って言われるけれど、その言葉は自分にピッタリだと思っている。
11匹。12匹。
夢。
起きているときも寝ているときも見れる。
10歳の私は、未確認生物を発見する教授になりたいと思っている。こんな夢を抱くことは珍しいらしく、周りの友達はサッカー選手やお花屋さん、お嫁さんとかが多い気がする。少なくとも、未確認生物がどうとか言っている人はいない。
そういえば7歳の頃は忍者になりたかったけど、その頃も同じ夢を語る友達はいなかった。
まあ、友達と夢の話が合わなくても別にいい。そもそも友達と話をしていて楽しいと思えない。
だって友達が話してきても、先生に駄々をこねて宿題を忘れた事実を許してもらえたという自慢にならない自慢だったり、パパやママの愚痴を延々と聞かされるだけなのだから。
忍者や未確認生物の学者。実際は現実的な夢ではないということぐらい、自覚している。しょうもない夢だと笑われることも多いけれど、私からすると大切な夢なのだ。
大切だから、大切にしなければいけないのです。
57匹。58匹。
気づけばここまで数えてたんだ。
やっぱり、なかなか眠れないなぁ。
59匹。ろく…
ん?羊たちの様子がおかしい。気分が悪いのかな。
数え終わった羊たちの様子がおかしい。
じーっと目を凝らす。羊の皮が剥がれていっている。
なんだこれ。私は動かずに成り行きをじーっと見ている。
あれ?羊がオオカミの姿になっちゃった。今まで数えてた羊って、オオカミだったの?そういえば、オオカミが変装するみたいな童話あったよね。たしか…。
昔に読んだ童話を思い出そうとしていると、オオカミが夢を食べ始めた。沢山のオオカミが、夢中になって夢に飛びついている。
あぁ…。夢が食べられている。
夢が食べられて殺される。
私の夢が、なくなる。
…
そうか、またか。
いつものように夢が食い殺された。
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