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推薦図書『デーミアン』2回目!

『デーミアン』の話の続きです。この本を本当にこれを読んでくれている全員にすすめたいというのは実は嘘だったりします。自分のことを変わり者だと思ったり、世界に馴染めないなと思ったり、自分が借りる図書館の本は他の人が借りてないとものばかりだと思ったりする人に特におすすめ。

「幸せになりたいなぁと思うディープオタク」と自分を思ってる人、ぜひ読んでほしいです。あとこれはいつもいっしょうけんめい言うんですけど『少女革命ウテナ』が好きな人で『デーミアン』まだ読んでない人はお急ぎになってください。

さらについでですが、私のこの記事を読んで初めて『デーミアン』を読んでくれる人、またもうすでに読んでいて今思い出してる人は、ぜひ『少女革命ウテナ』を見てください。絶対損させません。私じゃなくて幾原邦彦監督が。

主人公はいったん親友のデミアンから離れて青春時代に入ります。様々なエピソードがありますが、全部言ってもあらすじの羅列になるので印象に残ったところを紹介していきますね。

学生らしく、生活がぐずぐずに崩れてしまって酒に堕落してしまった主人公が、清らかなさっぱりした少女を見かけて…彼女を心の女神にして、話しかけることもできないまま、彼女の為に、彼女にふさわしく生きようと決意するところ。「青春あるある」。

結局彼女とは声もかわせず、本当の名前も知らずに終わります。仮の名前「ベアトリーチェ」と呼んでいますが、これはダンテの『神曲』に出てくる理想女性の名前を使っている。ただ見るだけで心が清らかになるような人の存在で自分を立て直す。これ、アイドルやアニメを好きないろんな人が、自分のために若い時にやるだろうなと思います。

個人的には、「ベアトリーチェ」が髪の長い女らしい少女じゃなくて、どっちかというとボーイッシュな印象に描かれてるのが好きです。典型的に女らしくないのがかえって聖女にふさわしいという、そのヘッセのセンスがいい。

ベアトリーチェから卒業する主人公のジンクレール。そんな主人公を導く親友デミアンは非常に賢い少年ですけど、主人公の精神修行に付き合ってくれるもう1人の青年が私はとても好きです。

教会のオルガン弾きピストーリウス。今これを書こうとして涙がにじむほどやっぱり彼が好きなんです。主人公は魂を磨いてどんどん深みに成長して行きます。その途中で出会うのがピストーリウス。彼は主人公に物の考え方、宗教や哲学めいたことをいろいろ教えてくれます。

でも二人の時間には終わりが来るんです。主人公がピストーリウスを超えてしまう。主人公が言った鋭い一言がピストーリウスの少年らしい未熟さを暴き立ててしまう。

その時にピストーリウスが主人公をひきとめないのが好きです。かといって主人公についていこうとがんばらないのも好きです。自分はこの段階に、この精神の中にいる。ジンクレールが成長していくのを止めない。でも真似もしない。プライドを傷つけられることもない。「君は先に行くんだね」と見送る。ここでこうしている自分を嫌いにならない。

常に成長を心がけるのも若者の良さですが、自分らしさ…自分のいる段階をしっかり知っていて、そこで生きていく覚悟があるピストーリウスを私はすごく尊敬します。

もう一回、つづけますね。

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